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行列のできるなんとか相談所は不吉 前編

「たのもぉぉぉぉぉぉぉぅ……っ!!!」


 リュートの部屋にいつものドアを蹴破るけたたましい音が響いた。


「うわっはっはっはっ!またもや来てやったぞ!リュートよ!」


「いや、相変わらず呼んでないんだけど……」


「げっ!?何しに来たのよ……?リュート、私帰るわ……」


「ティンク!ちょっと待ってよ!それじゃあ話進まないから……っ!ちょっとだけ待って!!すぐ場面切り替わるから!!」


「しょうがないわね……ちょっとだけよ……?」


「何をコソコソ話している!授業中の私語は()()()だぞ!いや違う、厳禁だぞ!!なんちゃって!わっはっはっはっ……!!」


「――やっぱ帰るわ……しょーもな」


「待ってってばぁ~!」


 リュートの部屋の入口を占領するがりべんの背中から、一人の男が顔をのぞかせた。


「おーい。リュートいるかぁ?」


 がりべんの奇行のお陰で風通しの良くなった部屋に男の声はよく通った。男はまるで暖簾を手でそっとめくるようにがりべんの胴に手を置いた。


「――ちょっとすみませんね……。リュート、相談があるんだけど今平気かな?」


「ふっ……今から私達は合同の戦闘(授業)についての打ち合わせが――」


「あーっ!平気平気っ!!入って入って!!」


「またリュートだけに戦わせて自分は授業する気なのね……」


 男は靴を脱いでリュートの前に膝を突くなり、前のめりで口を動かし始めた。


「リュート聞いてくれよー。俺の上の階のやつがさー」


「上の階?ああ、吟遊詩人の配信やってる江戸さんでしょ?」


「そう。そいつが夜な夜な練習だかなんだか知らないけど、歌を歌うんだよ!お陰であまり眠れなくてさ~」


 がりべんも続けて靴を脱いだ。


「次の戦闘(授業)では、戦っているリュートがクイズに挑戦するスタイルにしたいと思って相談に来たのだが……しばし待つか」


「地獄の脳トレかよ!?はぁ……今日はチョッケルはいないのね」


「ああ、リュートのところへ打ち合わせにいくと言ったら――『素直に遊びに行くって言うてや……あーかまへんかまへん行ってくればええ』などと抜かしていた。戦闘(授業)を舐めているのか!?」


「そもそも戦闘を授業って読むあんたに言う資格はないわね……」


 リュートはしばらく男の話に相槌を打った。そして男が席を外すタイミングで確かめるように言葉を繰り返した。


「うん……じゃあ今度僕からもそれとなく江戸には言っておくよ。管理人さんに言うなら()()()()()ね」


「わかったよ、リュート。ありがとなっ!よろしく……。邪魔したようでわるかったね」


 男は満足した様子で、がりべんにも目配せしてから部屋を出ていった。


「さぁ、ようやく話ができるようだ……リュート!!私達に必要なのは、チームワークだっ!!」


「あんたとは最も縁遠い言葉に感じるのは気のせいかしら……」


「一回目の戦闘でリュートの実力を試す!それから私の授業を受けてもらう!そして二回目の戦闘で再度リュートにクイズを出題するのだ!!そうすると、あら不思議っ!!成績がこんなにもアップ!!これは学校に行くしかない!!どうだ!!これが私達の友情コンボだぁっ!!」


 先程男が出ていった部屋の入口の端からは、誰かがこちらを覗いていた。頭を半分ほど出してリュートに視線を送っている。


「……リュートぉ……」


「あれ?したかげさん?どうしたんですか?」


「あの……あの……ご相談がありまして……」


「――そこでどういった系統のクイズを出せばいいか相談なんだが、物理の問題にするか、歴史の問題にするか……リュートが戦闘中でも答えやすい教科はどれなんだ!?数学などは全て暗算になってしまうから難しいだろうから、やはり暗記問題を出すのがいいのだろうか!?」


「ちょっと!うるさいっ!!」


 リュートはその女を部屋の真ん中まで案内すると、真剣に話を聞き始めた。女は顔を赤くしながら声を漏らした。


「先日付き合い始めた彼氏のことについてなんですけど……」


「えっ!じゃあ告白オーケーしたんだね!?」


「は、はい……。色々考えて、真面目な人なのでいいかな……と」


 がりべんはティンクに耳打ちした。


「――今度は誰だ?」


「――同じ駆け出しなろうチューバーのしたかげアルケミーさんよ。アイテム士なの」


「おめでとう!そっかぁ……。あいつも喜んでるだろうなぁ……」


「はい。とても喜んでました。それで今度彼の誕生日なんです……私男の人になんて贈り物をしたことがなくて……」


「ほうほう……」


 リュートはしきりに女の話に相槌を打った。そして幾つかプレゼントの候補を挙げてから言った。


「でも僕だったら、どんなプレゼントを貰っても嬉しいよ!きっと大丈夫!自信を持って!」


「はい!ありがとうございます。なんだか頑張れそうな気がします」


 女は満足した足取りで、がりべんにもお辞儀をしてから部屋を出ていった。


「……リュートのもとへは、よくこうして相談が寄せられるのか?」


「そうなんだよ。なんだかみんな僕には話しやすいみたいで、よく話をしにくるんだ。大したアドバイスはしてないんだけどなぁ……」


「そう、なのか……」


 そこへ今度はたどたどしい脚付きの老婆が入り口に現れた。老婆は杖を片手にもう一方の手を壁につきながら言った。


「リュート坊やはおるかねぇ……?」


「あっ!隣のばあちゃん!!どうしたの?」


「ああ、そこにおったんか……やれ家の電球が切れてしまってねぇ……」


「ええっ……!?またぁ?」


「今度はトイレの電球じゃ」


「しょうがないなぁー。がりべん、ちょっと悪いけど待っててくれる?すぐ済むからさ」


「なんだったら帰ってもいいんじゃなーい?」


「ふんっ!このまま手ぶらで帰れるものかっ!?……よし、パチンコでも打ってくるか……」


「ここ勉強じゃないんかいっ!?ガリ勉キャラなんだから、自習して待ちなさいよ!!??」



「リュートよ……相談所を開こう……!」


「相談所……?」


 老婆の家から戻ってきたリュートをがりべんはそう言って出迎えた。


「なろうチューバーによる、なろうチューバーのための相談所……いやこの際、なろうチューバーだけじゃなくていい。視聴者や一般の人からの相談事を広く受け付ける……!」


「まぁたそんな配信と関係ないことやろうとして……僕達はなろうチューバーなんだよ?魔族と戦わなきゃだめじゃないか!!」


「ふっふっふっ……わからないか?やはり学校へ行かないやつにはわからないだろう」


「いやお前も行ってねぇし!むしろ僕は大学卒業してるし!!」


「ふっふっふっ……強がらなくてもいい。なろうチューバーの相談事が魔族と全くの無関係だと思うか?」


「えっ……?」


「最初の相談事……騒音がうるさくて熟睡できない――つまり熟睡できなくて寝不足。魔族を倒すのに支障を来しているということだろう……?」


「そ、そうだったかも……」


「二番目の相談事……彼氏へのプレゼントのことで頭が一杯で、何をするにも集中できない――つまり魔族を倒すためのアイテム作りに支障を来しているということ……!」


「あっ……!」


「やっと気付いたか……そうだ。なろうチューバーの相談事を解決するということは、つまり魔族を倒すのに一役買っているのだ!」


「なろうチューバーの相談事は、魔族と無関係じゃない……!なら、解決動画をアップしてもBANされない!」


「ああ。それに視聴者や一般の人からの相談事の中にも、魔族絡みでBANされない内容のものがあるはずだ。それを選別して相談に乗っていけば……」


「相談を解決するだけじゃなくて、動画作りにもなって配信できる!そして配信を見た視聴者が、また相談に来る!」


「そうやって徐々に相談所が話題になれば……!」


「再生回数鰻登りで!最強のなろうチューバーにっ!!」


「私の授業の評判も上がり、皆が学校に行くっ!!」


「あははっ……!!」


「ふふふ……!!」


「あーっはっはっはっはっはっ!!!」


「わーっはっはっはっはっはっ!!!」


「……そんなにうまくいくかしら?」


 ティンクの眉間の皺を尻目に、リュートとがりべんは勢いよく寮を飛び出した。

ご愛読ありがとうございます!

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評価ポイントとして入るようです!!


そして評価ポイントが高いほどランキングに入って

皆様に読んでいただけるということで――


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