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星に願いを☆彡←これの意味がわからない人一定数いる問題

 リュートが正面を向くと、そこには数十――もしかしたら、三桁を超える人がこちらをしげしげと見つめていた。それを背景に小さな男の子が不安そうにリュートを見上げていた。


「……や、YAMIKINさんに、お願いがあって来ました!」


「みっきぃ……いや、YAMIKINさんは今お留守でね。お兄ちゃんが代わりに聞くよ」


 中腰になってそう言ったリュートに、戸惑いの声が注がれた。


「えっ……?でも僕、YAMIKINさんに……」


「あ、あ~、必ずYAMIKINさんには後で伝えるからっ!ね?どんなお願いなのかな?」


 距離は離れているものの、無数の人々の口からは容赦ない言葉が放たれた。それらは全部ではないにしても、少なからずリュートの耳にまで届いた。


「誰だ?あいつ?」


「スタッフかしら?流石にすぐYAMIKINさんに会える訳じゃないのね……」


「まさかYAMIKINさんじゃなくて、あいつが解決するんじゃないか?」


「大丈夫なのか?あまりしっかりしてなさそうだぞ……?」


 リュートはそんな声に負けじと、いつもの空元気を発動させた。口ごもる男の子に向けて言い放つ。


「僕はリュート!流されない男、リュートだ!どんな願いも、僕にお任せあれ!!」


「うん……じゃあ言うよ……?僕のお願いは……」


「うんうん……」


「今晩お星さまがたくさん見えるように、晴れにしてください!」


「……」


 リュートは一気に押し黙って空を見上げた。そこには雨こそないにしても、どんよりと重たい雲が見渡す限りの空という空にかかっていた。


「……ど、どうして晴れにしてほしいのかな?」


「僕のお母さん、お腹がすごく痛くて……今病院にいるんだけど……明日……明日、しゅ()()()するんだ……!」


 男の子の目から大粒の涙が溢れ出した。


「うぐ……それで、それでね……お星さまにお願いしたら、きっとしゅ()()()が上手くいくから……えぐ……ぼく……僕……先週から、ずっとお願いしてるんだ……でも……でも、今日は雲がかかってるから……」


「……あー……いままでいっぱいお願いしたんだね……そうかぁ……ならきっと、今日はお願いなくても……」


「――ダメなのっ!今日が一番大事なお願いなのっ!!だって、明日がしゅ()()()で……ぐすっ……じゃないと……じゃないと……お母さんが……お母さんがぁ……うぁぁぁんっ……!」


「ちょっと待っててね……」


 リュートは笑顔でそう言うと、踵を返した。玄関のドアをゆっくり開けると、急いで中へ飛び込む。


「無理無理無理無理っ!!無理だよぉぉぉぉっ~!!どぉすんだよこれぇぇぇっ!!謝って済む問題じゃないよぉぉぉっ!!!」


「おおおおおお落ち着け、リュートっ!こんな時こそ元素記号を端から言っていくんだ!!すいへえりーべー……」


「一番トチ狂ってんのお前なぁぁぁっ!!??リュート、もうあの子と一緒に病院まで行って親御さんに謝りましょう!?それしかないわよ……」


「なら、親御さん用の勧誘資料が必要ですね……っ!あっ……勿論、親子で入信オッケーです!」


「こんな時にも勧誘で頭がいっぱいなのなぁぁっ!?!?怖いよ!!サイコパスかよっ!!!ドヤ顔違うからねぇぇぇっっ!?!?」


 部屋の中からでもわかるほど、外が一段と騒がしくなった。


「どうしたんだっ!!子供が待ってるぞっ!!」


「YAMIKINさんはいないのぉっ!?その子はYAMIKINさんにお願いにきたんでしょ!?」


「YAMIKINを出せぇ~!!」


「YAMIKIN!YAMIKIN!YAMIKIN!YAMIKIN!――」


「うわうわうわうわうわ……もう終わりだぁ……」


 その時である。庭先で轟音が鳴った。それはあたかも落雷のようであった。その場にいる全ての者は、それまでの自身の挙動を止めてその音の方に向き直った。


「皆様、遅くなりまして大変申し訳ありません」


 集まった群衆から歓声が上がる。その熱狂は声の主が登場する時の轟音に、負けず劣らずの勢いと音量を持ってその場を制した。声の主は熱狂に向かって尚も真摯に訴えかける。


「こちらの相談所は、私YAMIKINと一切関係のない相談所です。同名のチャンネルにも、私は一切関与しておりません。騒ぎを聞きつけて、やっとこの場に私は立っている。そんな状況です」


 その凛とした佇まいから発せられる声が、群衆の隅々にまで行き渡る。不思議とその落ち着いた声は大小様々な喧騒を上書きして、皆の耳まで届いた。


「ですが私とは一切関係のない施設・チャンネルだとしても、私の名前により皆様に誤解を与えてしまい騒動を起こしてしまったことにお詫びを申し上げます。今後同様の事象が起きぬように、スタッフ一同監視の目を強化してまいります」


 YAMIKINは深々とお辞儀をした。しばらくして顔を上げたYAMIKINは、静まり返る群衆に向けてさも当然のように言ってのけた。


「そしてせっかく集まってくださった皆様に手ぶらで帰ってくれというのも、(いち)インフルエンサーとして活動させていただいている私としては本意ではありません。そこで今回に限り、この男の子の願いを叶えるショーをご覧に入れましょう。ぜひともご静観のほど、よろしくお願いします!」


 群衆に向けられていたYAMIKINの顔が、今度は男の子の目に向けられる。YAMIKINは長身を小さく畳んで、目の高さを男の子に合わせた。


「坊主、名前は?」


「がっち!」


「がっちは俺の動画を見てくれてるか!?」


「うんっ!!YAMIKINが大きな怪獣をやっつけるところ!いつも見てるよっ!!」


「そうかっ!いつも応援してくれて、ありがとなっ!今日はそのお返しだ。頑張るから、見ていてくれ!」


 YAMIKINはそう言うと、がっちから少し離れたところへ駆けた。そして立ち止まったところを中心にして、地面に複雑な魔法陣が出現する。それは回転しながら、徐々に大掛かりなものへと規模を増していく。そして一帯を飲み込むほどの大きさになると、皆に周囲が暗くなったと錯覚させるほどのまばゆい光を放ち始めた。


「来いっ!!ばつひこっ!ごわみっ!」


 YAMIKINの周囲がキラキラと光り始めた。そしてYAMIKINの両隣の空間に切れ込みが入る。その裂け目からはリュートとティンクが天空マンションで見た姿より、一回りも二回りも巨大に膨らんだ〝ばつひこ〟と〝ごわみ〟が現れた。まるで祭りで練り歩く山車のような二頭は、物々しい牙を口に隠して大人しく伏せの姿勢を取った。

 続いてYAMIKINは天に向かって腕を振り上げた。手の先からは砂のような煌めきが周囲に拡散する。すると雲まで光の柱が伸びていった。その柱を軸として、幾つもの魔法陣がエレベーターのように昇っていく。雲まで到達した魔法陣はそこで一気に広がって、雲を外側へ押し出していった。

 雲が晴れた場所から光が降り注ぐ。それと同時にYAMIKINの周りに幾つもの光る玉が現れた。それらはYAMIKINの頭上で一つの大きな玉になると、これまた空に打ち上がる。ぐんぐんと上昇する大きな玉は、上空で無数の小さな玉に分かれて、放射状に様々な方角に飛んでいった。雲の中で小さな玉はピカッと光る。

 YAMIKINは、ばつひことごわみの額に手を当てて指示を出した。


「町の外でわんさか雨を降らせるんだ。そして雨雲をなくす……方角は風上!!行けっ!!」


 それを聞いた二頭は体躯を翻すと、全身のバネを活かして跳躍した。大きな肉球がついた足は、地面ではなく空を蹴る。二頭はどんどんと上空へと――町の周囲を囲む高い壁の向こう側へ向けて、透明な空間を走っていった。

 そうこうしている内に、高い壁の向こう側では雷鳴轟く大嵐が巻き起こった。打って変わって壁のこちら側は、うっすらと橙に染まった空が気持ちいい。壁のあちらとこちらで明暗のコントラストが綺麗に分かれていた。

 先程よりも人数を増やした群衆は、YAMIKINが魔法を発動させる度に歓声を、応援を、感嘆の言葉を送った。今も壁のこちら側で陽の光に浮かび上がる幾つもの虹を眺めながら、YAMIKINに喝采を浴びせている。


「俺の魔法でも百パーセント晴れにできるかどうかはわからない……」


 いつの間にかがっちに寄り添っていたYAMIKINが静かに声をかける。


「YAMIKINでも……だめなの?」


「ああ……。でもな、がっち。そんな時は俺に祈れ!」


 がっちの小さな肩を大きな手が掴む。大きな手からは熱気が伝わった。


「えっ……!?」


 YAMIKINは自分に向けて親指を突き立てた。


「俺ががっちの星になるっ!いいなっ!?」


「はぁ……うんっ!!」


 男の子はYAMIKINの表情に同調するかのように、口角を大きく上げた。満面の笑みは涙を忘れさせた。



「お ま え ら ぁ ぁ ~」


「ごめんなさぁぁぁぁぁぁいっっっっ!!!!」


「リュート相談所じゃなったのかぁっ!?勝手に人の名前使いやがって!!スポンサーからの連絡で飛び起きだぞ!?」


 リュート達は全員土下座で謝った。YAMIKINからの説教は長くはなかったが、それでも正座を強いられた皆の足は痺れて動きを鈍くした。

 すぐさま「YAMIKIN相談所」の看板は撤去されて手を加えられた。YAMIKINは一時とても怒ってはいたものの、相談所の設立自体は大目に見てくれたようだ。


「なんか凄い物騒な相談所ですね……」


「これでよかったのかしら……?」


 翌日「YAMIKIN」が黒く塗りつぶされて、白いペンキで「闇金」と書かれた看板が玄関の表に設置された。これにて目出度く闇金相談所が開所された。

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