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基礎から始める魔法研修(8)『責任を取るのは』

配管の下からじっと見ていた女の子が立ち上がって猫にゆっくり近づく。


「あのぉ、小人の賢者様。

 さっきの光は?」


吹き飛んだエレベーターホール、そして遠くに見えていた山は大きな丸い穴を開け、その丸い穴を埋めようと山崩れがおきている。


「今のは彼が光の精霊の力を使って、

 光魔法の一種だねぇ。


 ちょっと力のコントロールができてなくて、

 凄い事になっちゃったけどぉ」


「んっ?

 今のって光魔法なの?」


猫が後ろ足だけで立ち上がって説明すると、男は自分が何をしたのかわかっておらず聞き返した。


「そうだよぉ。

 指先に光が集まったでしょ?

 

 あれは光の精霊たちが力が集まってできた、

 光の集合体さ」


「光の集合体...ねっ。

 それでこれから俺は

 一体どうしたら良いんでしょうか?」


男は自分が何をしてしまったのかある程度自覚はある。だが、あまりにも凄すぎる事で受け止めきれないままだった。男の放った光魔法と、その後の衝撃波で街にどれくらいの被害が出たか、いったいどれくらいの人を巻き込んだのか、男はその光景を目にして頭で理解していても気持ちがついてこない、気持ちがそれを認められないでいた。


「今のままだと君は警察に捕まって、

 どこかの施設に入れられて、

 きっと全身くまなく

 調べられちゃうんじゃないかなぁ」


「・・・」


「あのぉ、だったらとりあえず逃げちゃいません」


・・・えっ?


「あの光がどこから出たのかは、

 見てた人には病院の屋上からだって、

 わかっちゃうとは思うんですけど、

 誰がやったのかは、

 私たちとそこにいる黒い服を着た人たちしか

 わからないと思うんですよ。


 だからその人たちがやった事にして、

 私たちは逃げちゃいましょ」


「そうだねぇ。

 彼らはきっと真実は話せないだろうし、

 僕らは逃げちゃおっかぁ」


「・・・」


「ここでじっとしてると誰か来ちゃいますし、

 どこかに移動しましょ」


「なぁ、なんで驚かないの?


 銃で撃たれたり、

 あんな光線まで出したって言うのに、

 普通はもっと驚くだろ?」


男は女の子が平然としている事を不思議に思い尋ねる。女の子は首を傾げて、


「だって小人の賢者様から、

 あなたが特別な身体、

 確か機械人間。

 ・・・

 じゃなくて人形だって、

 以前から話してもらってましたもん。


 それに何度か精霊を見せてもらってましたし」


「えっ、知ってたの?」


男は女の子の返事を聞いて驚く。


「はい。少し前に聞いちゃいました。

 以前と少し違うから、

 あの人も異世界に行ってるんじゃないかって」


男は頭をかいて、空を見上げる。


「知らないのは自分だけだったって事かぁ」


「知らないって言う言い方はちょっと違うかなぁ

 君の場合は覚えてないって言う方が

 正しいと思うよぉ」


「覚えてないって、

 さっきの話のエルフの賢者様に」


「早く移動しましょうよ」


女の子に話を遮られ、病院の屋上から移動する男と女の子と1匹の猫。

屋上には小人の賢者によって自由を奪われた黒服たちが横たわっていた。






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





ーーそう。それで私になんのようなの?


ーー君の精霊が色々と壊しちゃったから、記憶を修正して隠蔽してほしいんだけどぉ


ーーだから、なんで私の子がチビと一緒に行動して、そんな事になってんのよ?

私の子はあなたに巻き込まれた立場でしょ?


ーー僕が巻き込んだ訳じゃないよぉ。


ーーチビ、そんな事言ってもバレバレなのよ。

私の子とチビの弟子の妹が接点持ってる時点で、確実に巻き込んでるじゃない。


ーー君の弟子と、僕の弟子の妹さんは僕らよりずっと前から知り合いだったんだから、そこは必然だって考えて欲しいなぁ。


ーー黒服の連中とのいざこざに巻き込まれないように記憶を封印しておいたのに、チビのせいで無駄になったわ。


ーー君が記憶を封印した事で、力の使い方がわからなくて、大きな問題を起こしちゃったんだけどねぇ。

それに戦闘用機械人形はやっぱり強すぎだよぉ。


ーーあら、私にも責任があるって言うの?

こっちでチビの弟子の面倒まで見てる私に。


ーーそれについてはありがとぉ。

おかげでこっちの世界の問題に間に合ったよぉ。


ただ、君の子の問題は別。

黒服の連中だけじゃなくて、

もしかしたら別の一般人を相手に

使ってたかもしれないんだから。


ーー一般人を相手にするなら、精霊なんか使わなくてもあの身体だけで十分でしょ?


ーーその精霊を無意識に使っちゃってるから問題がおきたんだよぉ


ーー精霊であるあの子が動けば、

他の精霊が手を貸すのは当たり前でしょ?


「なぁ、賢者様。

 さっきからぼぉっとしてどうしたんだ?」


草原で腰を降ろして、寝転がっていた賢者の弟子がエルフの賢者に話しかけた。


「どうやら問題が起きたみたいで、

 チビから報告を、受けてたの」


「何?またあいつがどっかで悪さしたのかよ?」


「チビの責任なんだけど、

 やらかしたのはあ・な・た。


 だから私に力を貸せって」


エルフの賢者はしゃがみ込み、賢者の鼻先を指で突いて話す。


「なんで俺なんだよ?

 俺がやった事って、

 みんなから逃げ回って、

 動物小屋盾にしたぐらいだろ?


 ・・・


 もしかして、

 動物を盾にしたのがそんなに問題に?」


賢者の弟子は、エルフの賢者の腕をどけ、必死に否定した後、動物の小屋を盾にした事を悪い事をしたのだと自覚していた事を自ら露呈した。


「小人の賢者様が、何かされたのですか?」


近くで魔法の練習をしていた小人の弟子がエルフの賢者に駆け寄りながら話す。


「ちょっ、おまえ盗み...ぐわっ」


賢者の弟子が何かを言い切る前に小人の弟子は風魔法を賢者の弟子の口の中に放り込み黙らせる。


「お前、口の中に魔法突っ込むとか

 反則もいいとこだろ!」


「ちょっとうるさいから黙ってて!」


小人の弟子は賢者の弟子を睨みつけると、賢者の弟子は1歩後退りして、小人の弟子から視線をそらした。


「あなたたちのもとの世界で、

 あなたの妹が襲われそうになったみたいなの」


「えっ、妹が?」


小人の弟子の表情が賢者の弟子を睨みつけていた時とうってかわり、眉を細めて心配そうな表情に変わった。


「そいつらは、

 私の物とチビで撃退したみたいなんだけど、

 どうやらやりすぎちゃったみたいで」


・・・やりすぎた。ああ、やっぱ小人の賢者がやらかしたんだなぁ


「妹は大丈夫なんですか?」


「あなたの妹さんは、傷1つついてないわよ。

 だから、あなたは安心しなさい」


エルフの賢者が小人の弟子をなだめる。

それを見る賢者の弟子は「なんで他の奴にはそんなに優しくて、弟子の俺にはいつも厳しいんだよ」と心の中で愚痴を吐く。


「問題を起こしたのが、

 あなただからに決まってるでしょ」


「いや、そんな事言われても

 俺ずっとここに居たし!

 元の世界で留守番中の俺が

 いったい何したっていうんだよ?」


「そうね。

 2人なら見せてあげても良いわね」


エルフの賢者が賢者弟子を見て、チラッと笑う。


ああ、この笑み、とっても悪い事考えてる時の笑みだ...


エルフの賢者の賢者は両手を広げ、呪文を唱える。


エルフの賢者の頭上に光の精霊らしきものが光り輝き、一枚のスクリーンのようになる。


「すっ、すげぇ」


「ちょっと大きく作りすぎちゃったわね」


エルフの賢者がそう呟くと、光の粒が散り始め、1番最初に作られた物の10分の1ぐらいのサイズになった。


「賢者様、

 それ俺を喜ばせようと思って

 わざとやったでしょ?」


賢者の弟子は速攻でエルフの賢者にツッコミを入れるとエルフの賢者は「ウフフッ」と可愛く笑った。


ああ、もうこの人は、なんでこういう時にそんな可愛い笑い方すっかなぁ。


賢者の弟子は地面を人蹴りして悔しがった。


「今からチビが観ている物を、

 そのままここに写すからちゃんと観てね」


「はい!」


小人の弟子が歯切れの良い返事を返し、賢者の弟子は返事をするタイミングを失った。


・・・あれ?あそこって山があった...?!なんであんな燃えてんだ?...って病院の屋上ぐちゃぐちゃじゃん!


ーーこれみんなあなたがやった事よ。


えっ、俺が?

んな訳ないじゃん。

俺のどこにこんな事する力があると思ってんだよ。

こんな事ができるなら。風魔法の的役なんてやらねぇよ!


「賢者様、これはいったい?」


小人の弟子がすがりつくような目で賢者に質問をしている。


「私の物が元の世界で

 光の精霊を使ってやったらしいわ」


賢者の説明を聞き、小人の弟子は賢者の弟子を睨みつける。


「えっ、俺?俺ずっとここに居たよな?

 俺じゃないっ」


小人の弟子の右手が賢者の弟子の顔目掛けて振り切られた。

『パチーン』という良い音を立て、すぐに芝生に尻餅をつく賢者の弟子。


「本当に最低ね」


右手を振り抜いたまま小人の弟子は賢者の弟子をじっと睨み続けていた。


ちょっ、俺今回は間違いなく何もしてないよな?

確かに俺の留守番がやった事かもしれないけど、

ちょっと理不尽すぎじゃね?

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