基礎から始める魔法研修(7)『基礎を忘れた精霊の一撃』
やりすぎるなって言われたけど、腕を振ったらなんか出ちゃうし、意外と難しいんだよなぁ。
この腕にまとわりついて風の精霊?これってどうやって制御すればいいんだ?
「なぁ、この力ってどうやって抑えるんだ?」
「練習かなぁ?」
「はぁ〜っ」
猫の返事を聞いて、ため息をつく。
黒服たちは男から距離を取り焦っているように見える。
そりゃ銃を撃っても効かないんだから焦るよなぁ。
こいつら、こんな病院の屋上でサイレンサーみたいなのつけてるとはいえ、銃ぶっぱなすなんて常識なさすぎだろ?
この風がまとわりついてから、身体も妙に軽いし。
男はぴょんと足首だけの力で飛び上がると、自分と同じ背丈ほどの高さまで飛び上がった。
えっ・・・たかっ!
屋上で飛び上がる下が見えなくなり、病院の駐車場が見えた。
それが一層高いところまで飛んでしまったと勘違いしてしまい、恐怖を感じて背筋に悪寒が走った。
地面に着地すると、思わず足がすくむ。
こえぇ。なんだあの高さ。
飛ぶのはなしだな、変に勢いよく飛んで柵飛び越えて駐車場にダイブとかしたら、しゃれになんねぇ。
「おい。おまえ、何者だ?」
黒服の一人が銃口を向けて話かけてくる。
「何者って言われてもなぁ。
俺にもよくわからないんだわ」
黒服の連中が驚き、銃口を下げる。
「君、今の状況っで、
それを言っちゃうなんて、
間違いなくあの子の記憶の影響を受けてるねぇ」
背後から猫の声が聞こえた。
あの子って言われても、あの子ってどの子だよ。
まぁ、とにかく今は早いとここいつをなんとかして、女の子を助けるか。
「うしっ、とりあえずお前らやっぱ死刑。
銃なんか使いやがって、
おまえらこの平和な目本でなんて事してくれてんだ!
俺は目立たず、こっそり暮らしたいんだよ」
男は黒服たちを指差し威圧的に話す。
黒服の男の1人はすぐにエレベーターへ繋がるドアを開けて逃亡しようとするが、その行動を読んでいたかのように、猫の姿の小人の賢者が爪を尖らせ黒服の男の顔を攻撃した。
猫に顔を攻撃された男はすぐに銃を撃って応戦したが、猫は猫パンチで撃たれた球を地面に弾く。
その猫の行動を見て黒い服の男はもちろん、男も固まった。
・・・おまえがそんな事できるなら、俺必要ないんじゃねぇ?
機械人形と謎の猫に挟まれ、黒服たちは銃口をふらふらさせる。
男は、腕を振ると風が吹き飛ばしてしまう為、正拳突きのように一直線に腕を前に突いた。
男にもはっきりと見えた空気の渦。
その空気の渦は黒服の男を直撃し、おもいきり吹き飛ばす。
・・・ちょっ、またかよって、あれはやばい!
吹き飛び屋上の柵を越えようとする黒服を猫がバレーボールのスパイクのように屋上の地面に叩きつける。
「うっ・・・」
男の攻撃か、猫のスパイクか、地面に叩きつけられたことか、どれが要因かはわからないが、男は完全に意識を失っていた。
「ナイス!猫!」
「もっと手加減しないとだめだよぉ」
きれいな着地を決めた猫が男に向かって注意をするが、男は手加減と言われもっとすぐに困り顔になった。
「なぁ、これ俺がやるより、
おまえがやった方がいいんじゃねぇ?」
猫はすぐに首を横に振って、ため息をつく。
猫のくせにため息つくのかよ。
ああ、もう手加減しろって言われても、
難しいんだっつぅの。
いきなり手にいれてしまった無敵に近い身体と、使い方がよくわからないこの強い力。男は手に余していた。
今の自分には圧倒的な攻撃力と防御力がある。
黒服たちの持っている銃では、自分は痛みすら感じない。
これ以上、服に穴が開くのも正直嫌だし、
やりすぎるなって言われても、ぶっちゃけ無理。
だから、ここはやっぱり暴力による解決じゃなくて、
話し合いによる解決だよな。
なにより、俺はまだ人殺しにはなりたくない!
「なぁ、はっきりいう。
俺はこの力の使い方がよくわからない。
だから、おまえが変に暴れると、
ものすっごい大怪我をさせる可能性がある。
だから、素直に俺に捕まるか、
そこの猫の言うことを聞いてくれ」
男の言葉、黒服たちは後ずさり、背後にいる猫と目を合わす。
猫の言うこと聞けって・・・
普通に考えたら頭おかしい人の発言じゃね?
「その猫、さっきから聞こえてると思うけど、
人の言葉しゃべるからな!
俺の頭がおかしいとか、そんなんじゃないからな!」
黒服たちを指差して必死に弁明。
なんか俺今超カッコ悪い?
「君という子は、
本当に後先考えずにしゃべる子だねぇ」
・・・
「うっさいわ!
おまえいきなりこんな力を手に入れてみ、
誰だって手に余るし、びっくりして混乱するわ」
「・・・本当に君、そっくりになってきてるよ」
誰にそっくりなんだよって突っ込むのはもうやめた。
以前、女の子にも言われたし、自分でも少し自覚がある。
自分が自分でないこと。
自分は誰かの代わりのような存在だという事。
でも、いきなり自分は賢者の契約精霊とか言われても、
受け入れられる訳ないじゃん。
しかも銃で打たれてもへっちゃらで、腕から風がバイ〜ンとかでるとか。
はっきり言って無理!
「あの黒い服の人たちが持ってる物と
同じものを想像して、彼らに撃ってみなよぉ。
どうせ、君のことだから『ふっとばす』とか
考えて腕ふっちゃってたでしょ」
・・・うっ・・・なんか当たってるし、
「そんなんで力のコントロールとかできるのかよ。
さっき、練習しないと無理っぽい事言ってたらじゃん」
「だから、この人たちを練習台にして、
やればいいんじゃないかなぁ?
あの子を襲った連中だよぉ。
2度と同じようなことを考えないように、
ちゃんと恐怖を身体に覚えさせないとぉ」
「おまえ、猫の格好で超かわいいくせに、
とんでもないこというよなぁ」
男は黒服たちを指差し、親指を立て自らの手を彼らが持っている拳銃に見立てる。
「悪いけど、おまえら俺の練習台になってくれ。
できる限り痛くないようにするから・・・」
この格好アニメに出てくる霊○ンにそっくりだけど、まぁいいか。
指先に集中して・・・
「いっけぇーーー」
男は指先か発射するイメージを持ち声をあげると、指先に大きな光の球体ができあがり発射される。
「まずい!」
猫は声をあげて黒服たちを背後から蹴り飛ばしその光の球体の軌道からそらす。
光の球体は男の指先から一直線に光の線を伸ばし、エレベーターがあった場所はもちろん、霞みがかった遠くの山まで吹き飛ばした。
・・・
・・・
山が吹き飛んでから数秒後に、物凄い轟音と風が男達を襲う。
・・・
・・・
想像していた物よりはるかに凄い物がでてきてしまって、固まる男。
黒服の男たちも同様に光の球を目の前で見て気を失うか固まってしまっていた。
「きみ、なにか違う物想像して撃ったでしょ」
猫の姿の小人の賢者は苦笑いを浮かべて、吹き飛んでしまった山を見る。
「これは、
エルフの賢者か山の賢者に
お願いしないと無理かなぁ・・・」
「あはっ、あはははははっ・・・
山が消えた・・・」
吹き飛んだ山と、その衝撃波で破壊された街を見て、男は放心状態になっていた。
小さい時に力を望んだ事もあった。
健康な肉体にテレビに出てくるようなヒーローの力。
きっとみんなあの力に憧れ、みんなそれを望んだと思う。
しかし、手にした力がチートすぎて使いきれない。
「なぁ、これ俺が練習してる間に世界が崩壊しちまうとか、
そんな危険はないよな?」
男は苦笑いを浮かべながら猫に聞く。
猫は腕を組んで、
「それは君次第かなぁ?」
と男に返した。




