基礎から始める魔法研修(5)『2人の弟子』
小人の弟子は、賢者の弟子をずっと睨みつけていた。
こんな奴のおかげで妹の病気を治された事。
もう絶対にお礼なんか言わない。
この男は人間として腐ってる。
かわいい動物を盾にするような、こんな最低な男が、
なぜ異世界なんかに来る事が許されたのか理解できない。
なぜもっとまともな人間を選ばなかったのか、謎で仕方がない。
小人の弟子のいらだちはおさまらない。
振り返り、空に浮かぶエルフの賢者を見つめ、
「エルフの賢者様は、なぜあんな男を弟子にしたんですか?」
どうしても納得がいかない。
自分と同じ賢者の弟子。
その男があんな男だなんて。
「あなたは、不満みたいね」
エルフの賢者は笑みを浮かべて答える。
「はい。
あんな動物を盾にするような男が賢者の弟子だなんて、
魔法も使えずただ逃げるだけの、
あんな卑怯な男が、賢者様の弟子になるなんて、
間違っていると思います」
エルフの賢者は目をまっすぐに見て、小人の弟子の話を聞く。
「あなたは優秀な子なのね。
だから、あの子の事を理解できない。
あなたとあの子では努力してきた物が違うの」
優秀?理解できない?
何言ってるの?
小人の賢者といい、エルフの賢者といい、
この世界の賢者ってみんなこんな風なの?
「賢者様。オーガが呼んでますよ」
賢者の弟子が、エルフの賢者に声をかける。
エルフの賢者は笑みをこぼし、地上に降りてきて私の顔を近づける。
「君もきっとあの子の魅力がわかるわ」
「えっ?」
エルフの賢者は背を向けて歩いて行く、
その途中で賢者の弟子に抱きつくと、
賢者の弟子が来ていた土の鎧はもろくも崩れ、
賢者の弟子が顔を真っ赤にして、芝生に倒れた。
なに、あの無様な姿。
女の人一人支えられないような男に魅力なんてあるの?
小人の弟子は振り返り、研修生が集まっている場所に足を進める。
両手をぐっと握りしめ、『今度こそ、あの男が無能だと証明してみせる』と固く心に誓った。
建物の前に研修参加者が全員そろう。
ハルとオレンジの2人はまだ魔力切れで歩くのも辛そうだ。
「魔力切れって体力的にも辛くなるんだな」
2人を見て賢者の弟子が小声でつぶやく。
オーガは2人の保護者とエルフの賢者と話をしている。
時々、賢者様が横目でチラッとこっちを見てくる。
あの目、絶対に悪い事を考えてる目なんだよなぁ。
もうあの目が完全に俺の不幸フラグになってんなぁ。
水の精霊のおかげで疲れはない。
もし、これが元の世界だったら絶対にもう立ち上がる事も無理だろうけし、
全身筋肉痛というか、さっきの風魔法の訓練で死んでるな。
そして...
「さっきからなんで、そんな目で俺の事見てんの?
すっごい気になるってか、
正直辛いんですけど!」
小人の弟子の視線がマジで痛い。
さっきのは俺が悪かったと思うけど、
ああでもしないと、おまえら絶対風魔法止めなかっただろ?
あれは、おまえを止める為に、仕方なくやった事なんだから、
そんな目でじっと睨むのはやめてほしいなぁ
「さっきの事、絶対に妹に話すから」
小人の弟子の言葉がもう槍か何かに刺されたように身体に刺さる。
「いや、話すって言っても、
こっちの世界の出来事は元の世界に帰ったら忘れちゃうからな。
だから話せないから。
おまえその事ちゃんとわかってる?」
「お・ま・え・?」
小人の弟子は眉間にしわをよせ、目力を強くして賢者の弟子を睨む。
「いや、おまえじゃなくて小人の弟子さん。
だいたい何か絶対勘違いしてないか?
俺、君の妹に何もしてないからね。
ほとんどしゃべった事もないんだからな」
賢者の弟子は小人の弟子の気迫に押され弁明に走ると、
小人の弟子は賢者の弟子に顔を寄せ、
「どの口でそんな事を言うの?
あなた自分が何をしたかわかってるの?」
うっ・・・俺いったい何したの?
俺そんな記憶一切ないんだけど。
もしかして、元の世界に残してある俺の身体が何か問題行動したの?
それで怒ってるの?
完全に身に覚えがないんだけど。。。
「すまん。本当にわからんのだが。
俺がいったい何したっていうの?
最近は、元の世界に戻ってないし。
妹さんに俺の身体が何かしたっていうなら、
俺がした訳じゃないけど、とりあえず謝るよ。
今度向こうに戻ったら、必ず妹さんにも謝りに行くから」
小人の弟子の視線が痛い。
マジで痛い。
女の子って誰でも目から光線出るもんなのか?
お願いだから、やめてくれ。
「妹の前には2度と顔を出さないで!」
小人の弟子は、眉間にしわをくっきりと浮かべている。
完全に激おこモードだ。
「わかった。もう2度と...
病院に行くからもしかしたら合っちゃうかもだけど、
自分からは合いに行ったりしない。
本当にしない。神様に、いや賢者様に誓ってもいい」
小人の弟子は、顔を近づけてくる。
いかん、その距離はやめてくれ。
その距離は本当にダメ。
顔がどんどん熱くなるのがわかる。
「なんでこんな男が」
小人の弟子は、そう言うと自分に背を向けて少し離れた所まで歩いて行く。
やべー。マジでびびった。
殺されるかと思った。
女こえーよ。マジこえーよ。
エルフの賢者に目を向けると、クスクスと笑っている。
この馬鹿賢者!今の聞いて楽しんでやがったな。
少しは助け船だせよ!
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オーガさんは2人のエルフ族の人とエルフの賢者と話をしている。
この研修場は水の精霊の加護のおかげで疲れないって説明されたけど、本当にすごい。あれだけ動いたのにお腹も減ってないし、身体も全然疲れてない。
賢者の弟子は相変わらず、エルフの賢者の事をチラチラみて挙動不審な態度をとっている。
妹の恩人があんな男だなんて、許せない。
やっぱり許せない。
「さっきからなんで、そんな目で俺の事見てんの?
すっごい気になるってか、
正直辛いんですけど!」
こいつのさっきの行動。
こいつだけは私の妹に近づけちゃだめ。
「さっきの事、絶対に妹に話すから」
「いや、話すって言っても、
こっちの世界の出来事は元の世界に帰ったら忘れちゃうからな。
だから話せないから。
おまえその事ちゃんとわかってる?」
「お・ま・え・?」
なにこいつ、人のことを『おまえ』呼ばわり?
さっき勝ったからって調子に乗ってんの?
小人の弟子は眉間にしわをよせ、目力を強くして賢者の弟子を睨む。
「いや、おまえじゃなくて小人の弟子さん。
だいたい何か絶対勘違いしてないか?
俺、君の妹に何もしてないからね。
ほとんどしゃべった事もないんだからな」
こいつ、何言ってるの?妹を助けたのはあなたなのよ。
自分のした事わかってないの?
本当に腹が立つ。何とぼけた態度とってるの?
「どの口でそんな事を言うの?
あなた自分が何をしたかわかってるの?」
本当にこの男はなんなの?
私から話してほしいの?
私の妹助けてくれてありがとうって私の口から言わせたいの?
「すまん。本当にわからんのだが。
俺がいったい何したっていうの?
最近は、元の世界に戻ってないし。
妹さんに俺の身体が何かしたっていうなら、
俺がした訳じゃないけど、とりあえず謝るよ。
今度向こうに戻ったら、必ず妹さんにも謝りに行くから」
何言ってるのこいつ。本当に頭にくる。
自分が何をしたかもわからず、
今妹がどんな気持ちで向こうの世界にいるかも知らなくて!
「妹の前には2度と顔を出さないで!」
怒りのあまり、賢者の弟子の顔をにらみつける。
「わかった。もう2度と...
病院に行くからもしかしたら合っちゃうかもだけど、
自分からは合いに行ったりしない。
本当にしない。神様に、いや賢者様に誓ってもいい」
小人の弟子は、賢者の弟子に顔を近づけじっと賢者の弟子を見る。
私がこの男に負けた。
こんな男が妹の病気を治した。
こんな男に妹が感謝してる。
・・・悔しい。
「なんでこんな男が」
なんでこんな男に私が負けたの...




