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力の解読(3)『強襲』

賢者の弟子は人間世界が異世界で犯罪をした者たちの牢獄のような物だとわかってショックを受けた。

人間の中には、心優しい人もたくさんいる。

しかし、その人たちもまた、過去に犯罪を犯した者で、その為に記憶を削除されてしまった事。


「以前、人間世界で黒服の連中が襲ってきたでしょ。

 あいつらは消されるはずの記憶が、

 なぜか消されてなくて、徒党を組んだ連中なの。


 この世界の記憶を、

 人間世界に持ち出せないようにしているのは、

 ああいった連中から、あなた達を守る為でもあるのよ」


エルフの賢者はうつむきながら話をしてくれる。


「なぁ、もし人間世界でなにも悪い事をしなかったら、

 この世界に戻れるのか?」


「それはわからないわ。

 それを決めるのは、私たちでも大精霊でもない。

 この世界を作った創造主たちですもの」


「・・・創造主・・・ねっ

 要するに、この世界より上の世界があるって事か?」


「上の世界かはわからないけど、

 何かがあるって事は、必ずそれを作った者がいる。

 それだけは確かな事だよ」


小人の賢者がベッドから立ち上がって話す。


「作った者か、、、

 もしかして、俺の力とか賢者様の力ってのも、

 その創造主からもらった物なのか?」


「残念だけど、それは違うね。

 我々は創造主ではなく、世界の管理者からだよ。

 君に力を与えたのも、

 創造主ではなく、管理者だろう」


「創造主、管理者、

 そいつらがこの世界も、

 俺たち人間世界もすべて統治してるって事で

 いいのか?」


「まぁ、あの人たちは何もしてくれないけどねぇ。

 多分それでいいんじゃないかなぁ」


「何もしないって・・・」


「あの方々はこの世界はもちろん、

 君がいた人間世界にも決して干渉はしない。

 すべてはその世界に住む者たちにまかされている」


・・・作るだけ作って、あとは丸投げってか、

俺の力ももしかして、そんな感じで与えられたのか?


「とりあえず、

 その神様たちの話はわかったよ。

 

 その神様たちが、人間世界をなんの為に作ったのかも、

 だいたい想像ついた。


 んで、俺の力の話に戻すんだけど、

 自分では本当にまったくわからん。


 今自分が力を利用してるって言われても、

 自分ではまったくわからないし、

 なにがどういう力なのかも」


賢者の弟子は、開き直りの境地に達したかのように、

賢者達に向かって話す。


「それをわかるようにする為に、

 仮想世界を利用してるんでしょ」


小人の賢者が腕を組んで、賢者の弟子に話すがそれでは納得できない。

なんどもなんども苦しい思いをして、殺されて。

それで何か1つでも成果が出ているなら納得もできるけど、今のところ何も成果があがっていない。

賢者たちの力がある程度わかってきた事ぐらいだ。


「なにか1つでいい。

 仮想世界で、俺の力についてわかった事。


 賢者様も隠してないで、

 俺の力について、本当の事を教えてほしい」


賢者の弟子は、本音を漏らす。

賢者たちはあきらかに何かを隠している。


自分がそれを疑っている事がわかっていて、

隠し事をしている自覚があるから、

エルフの賢者は口数が少ない。


「なぁ、俺は本当の事が知りたいんだ」


賢者の弟子は、エルフの賢者をじっと見つめて話す。

エルフの賢者は、すぐに顔をそらした。


「僕らも好きで話していない訳じゃないんだぁ。

 君は大精霊たちとも契約をしている。

 だから、君が知った情報は

 すべて大精霊たちに盗み見られてしまう。


 力をうまく使えないのに、

 知識だけを手にするってのは危険な事なんだ」


小人の賢者が悲しそうな表情で、

賢者の弟子の膝を掴んで話す。


大精霊との契約、

自分の全く知らないところで、

全く知らない間におこなわれた契約。

しかも、契約したからといって、

力を使わせてくれる訳ではないという、

自分にはなんのメリットもない契約だ。


「わかったよ。

 おまえはそんな顔すんな」


・・・


賢者の弟子は、部屋の中の空気の悪さに耐えられずに部屋をあとにする。

自分が何を考えているか、すべてをわかっているはずなのに、なにも言ってくれないエルフの賢者への苛立ち。


ラボの壁を思い切りけると、つま先にもの凄い痛みが走り、痛みでその場にしゃがみこむ。


「あぁ、今の俺って超かっこわりぃ・・・」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


賢者の弟子は金髪の少女に抱えられ、エルフの賢者の屋敷へと向かう。

エルフの賢者はまだラボでやる事があるとのことで、金髪の少女と2人での帰路だ。


「ふんっ、

 今まではただのゴミだと思っていたけど、

 どうやらゴミ以下に成り下がったようね。


 リサイクルに出せるなら、

 このままリサイクル場にもっていきたいところよ」


「・・・おまえって、俺が落ち込んでても、

 本当にぶれないよなぁ」


「ゴミが落ち込む?

 ゴミはできないのが当たり前なんだから、

 落ち込む必要なんてあるの?

 あなた、何様のつもり?」


「はははっ、相変わらずきっついなぁ・・・」


金髪の少女の言葉に以前はひどく傷ついていたが、

今はなんとも思えない。

むしろ励ましのようにも思える。


『できない事があたり前』か、賢者様たちにも聞かせてほしいぜ。


・・・


エルフの賢者の館について、すぐに自室に向かう。

この世界では夜が来ないから、屋敷に帰ったらご飯を食べるとか習慣はない。

エルフの賢者に用意された自分の部屋の扉をあけて、一直線にベッドに向かう。

水の精霊によって、精神も安定され、体力も回復するけど、頭の中での悩み事は全くと言って解決されない。


何度も味わった死の恐怖。

以前はあんなに死にたがっていたのに、

今は死ぬのが物凄く怖い。

それなのに、何度も殺され、何度も死の恐怖を味わった。

これも、以前の自分が犯した罪への罰なのだろうか。


罪を犯したから、人間になる。


人間である自分は、この世界の罪人。


エルフの王が、自分を賢者の弟子にするのが嫌だったのは、自分が人間であり、この世界の罪人だったからではないだろうか?


自分はいったいこの世界で何をして罪人になったのだろう。


賢者様は、なぜ罪人である人間を自らの弟子に選んだのだろう。


なぜ・・・





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


夜の来る事がないエルフの世界。

そのエルフの世界に隣接するエルフの賢者の世界にも夜はやってこない。しかし、エルフの賢者の世界にその日は夜が訪れた。


部屋の中は暗く、すべての精霊が活動を停止する。


賢者の弟子はベッドで寝息を立てて、夜が来た事にも気付かずにいた。

金髪の少女は屋敷の中の廊下で倒れ、銀髪の少女は応接室で倒れている。


エルフの賢者の館の前に、ブロンドの長い髪、白い肌に青く輝く目を持った小さな少女が立っている。

少女が館の扉にふれると、扉は光を放ち大きな穴をあける。

少女が一歩足を踏み入れ、絨毯に足を乗せると絨毯は焼き焦げ、足のあとがくっきりと残る。

ゆっくりと一歩ずつ歩を進めると、エルフの賢者の館の罠が作動するが、すべて少女に当たる前に焼けおち灰になる。


「この部屋かちらぁ」


少女は賢者の弟子の部屋の前にたち扉に手をふれる。

扉にはすぐに大きな丸い穴があき、ベッドの上で横になっている賢者の弟子が見える。


「ちょうどいいわぁ。

 このまま、あの子の中にはいっちゃお」


賢者の弟子の部屋に入り、ブロンドの長い髪をパッと宙に舞わせ少女は姿を消す。






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー






真っ暗な暗闇の中で、男が一人で立っている。

暗闇の中なのに、男の姿ははっきりと見える。

ブロンドの髪を輝かせた少女が男の前に突然あらわれた。


「・・・おまえは?ってかここどこ?」


「殺ちゃれたあいちぇの顔をわちゅれるなんて、

 頭は大丈夫でちゅか?」


「・・・いや、もう何度も殺されてるし、

 殺されすぎて過去のことはもう忘れたよ」


少女はため息をつく。


「私は光の大精霊、

 ちょちて、ここはちみの魂の外殻の中。

 今わたちは、ちみの中にいるって事になるわね」


光の大精霊・・・


「魂の外殻の中ってのは、どういう事なんだよ?」


「わたちが、

 ちみにちょこまでちぇつめいちゅると思う?」


賢者の弟子は光の大精霊の返事を聞いて、思わず苦笑いをうかべる。


ああ、そういえばこういう奴だった・・・


「ちみはちからをてにいれたせいで、

 前にあったときより、

 より傲慢になっちぇるわね」


「・・・」


「他の連中を待ってやるほど、

 わたちはおちとよちじゃないの。


 だからきみにおちえてあげる」


「なっ、なにをだよ?」


光の大精霊が指先を賢者の弟子に向けると、光の大精霊の指先からまっすぐに光の線が引かれ、賢者の弟子の胸のあたりにあたる。


「これはわたちとちみとの契約のちゅながり。


 わたちたち大精霊とちみとの契約は、

 魂の外殻に陣を書いてしちぇあるの。


 だからほんとなら、

 この光の線はちみじゃなく、

 この魂の外殻の壁のどこかにある陣に

 むくはずにゃのよ」


・・・


賢者の弟子は、光の大精霊の説明を聞き、唾をゴクンと飲み込む。


「ちみでもわかるわよねぇ。

 この光の線が君に向かって伸びてるのはおかちいって」


光の大精霊は賢者の弟子にむかって、ニコッと微笑む。

その笑みを見て、賢者の弟子は背筋が凍りつくような感覚に襲われた。


「わたちの契約者はいったいどこにいるのかなぁ?

 そして、ちみはいったい誰なのかなぁ?」


光の大精霊が、ぱっと距離をつめ賢者の弟子のすぐ目の前に立つ。


・・・


「私から出てる光の線をみて、

 君のここ、ここにつながってるんだよぉ」


光の大精霊は、指先で賢者の弟子の胸をつつく。


・・・


「ほんと、おかしな話だよねぇ。

 精神体の君の中に、

 私と契約したはずの人がいるなんてぇ」


・・・


「ねぇ、私と契約した賢者の弟子がどこにいるのか、

 教えてくれないかなぁ?

 別に私は君を殺そうなんてことは思ってないの。


 私は契約者がどこにいるか、知りたいだけなのよ」


言葉が出て来ない。

自分はいったい誰なのか。

目の前にいる光の大精霊がはっきりと自分が自分でない事を告げている。


・・・もしかして、エルフの賢者様が自分に冷たいのも・・・


自分は賢者の弟子ではない。

賢者の弟子は、他のところに・・・自分の中にいる?

だから、エルフの賢者様は自分に冷たい態度をとる。。。


「本当にわかってなかったのかな?

 自分が賢者の弟子のつもりだった誰かだって事?


 君は私と契約をした賢者の弟子じゃなくて、

 賢者の弟子に利用されてるただの精神体。

 

 だからね。

 私に教えてほしいの。

 

 君を利用してる、その悪い悪い賢者の弟子の居場所を」


・・・


息苦しい。なんなんだ。この光の大精霊は何を言っているんだ?

自分は・・・賢者の弟子・・・のはずだ。

人間世界での事も、この世界での事もしっかりと覚えている。

なのに、なぜ・・・


「君の中を少し見せてね」


ブロンドの少女は、そう告げるとパッと右手を賢者の弟子の中に入れる。

賢者の弟子の身体の中に、なんの抵抗もなく、すっと入る。

痛みも触られた感触もない。


目の前のブロンドの少女の表情が一瞬で変わる。

なにかに怒った表情をして、すぐに振り返って賢者の弟子に背中をみせる。


「そう、そういう事。


 やっぱりあいつが、あいつが、あいつが・・・

 


 許さない。


 絶対に許さない」


誰に怒っているんだ。

背中からただならぬ殺気を感じる。

声をかける事も、近づく事もできない。


「ちみはちみのままでいなちゃい。

 ちょれが、ちみの為よ」


ブロンドの少女はそう言葉を残して、消えていった。


・・・自分の中に本当の賢者の弟子がいるのか?


賢者の弟子は、自身の胸を触れ、自分自身に問いかける。

返事は何も返ってはこない。






目を開けると、見慣れた天井が目に入る。

ここは自分の、エルフの賢者の屋敷の自分の部屋だ。

すぐにエルフの賢者の顔がその光景を遮るように割り込んで来た。


「君、大丈夫だった?なんともない?」


エルフの賢者はえらく慌てた様子で聞いて来る。

賢者の弟子はすぐに頷き、エルフの賢者を両手で遠ざけようとしたが、

エルフの賢者の力が強すぎて、動かせない。


「ついさっきまでは大丈夫だったんですが、

 今とってもやばい状況です。


 だから、もう少し離れてください」


エルフの賢者はホッとしたのか口元を緩めて顔を遠ざける。


賢者の弟子は天井を見上げたまま、


「賢者様、教えてください。



 俺はいったい誰なんですか?



 賢者の弟子はいったいどこにいるんですか?」


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