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力の解読(1)『記憶の残る死』

エルフの賢者と、小人の賢者、海の賢者、空の賢者、4人の賢者が1つのテーブルを囲むように座り顔をあわせる。

赤く輝くような長い髪に可愛い顔をしたエルフの賢者は真剣な表情で何かを考えている。

金色の髪に可愛らしい顔立ちの男の子の小人の賢者はそんなエルフの賢者の顔を何度もチラチラと確認してはその度にため息をつき、青色の長い髪で丸く大きな目をした海の大精霊は、困ったような表情を浮かべて自分の髪を指でくるくると回している。

光をあびてより一層金色に輝く長い髪、空の賢者はその長く尖った鋭い目つきエルフの賢者を睨んでいる。


「ずいぶん遅いわね。

 山の賢者と暴火の賢者と氷結の賢者は何をしてるのかしら?」


空の賢者は、机に肘を置き他の3人に尋ねる。


「山の賢者は、この前の僕らの後始末で他の世界を回ってるしぃ、

 暴火の賢者と氷結の賢者は、今回のことは静観を決め込んでるからねぇ。

 賢者の弟子のことでは呼び出しに応じてはくれないかもぉ」


小人の賢者は困ったような顔をして、3人の賢者がまだ来ていない理由について話す。


「あの3人は、私より大精霊よりの考えですもの。

 大精霊さまから何か連絡を受け取ってるかもね」


海の賢者が3人の賢者のとっている行動を不機嫌そうに話す。

空の賢者と海の賢者の間に座る小人の賢者は両方の賢者の顔を見て、小さな体をさらに小さくする。


「とにかく私がはっきりとわかっている事だけ、

 みんなには伝えておくわ」


エルフの賢者は3人が来ないものとして話を始めた。


「今の私の物は、

 力に目覚めたことによって、ちょっと変わった状態になっているわ。


 記憶の削除ができなかったから調べてみたんだけど、

 今のあの身体に入っている精神体が

 まったく別人の精神体になっているわ。


 身体の記憶の削除には成功していた。

 精神体に記憶を保持する機能はない。

 でも、記憶は保持している。

 しかし、私との契約は生きているから、

 あの子の精神体は、世界のどこかに存在しているはずなの」


エルフの賢者の話を聞いて、海の賢者の眉間にしわがよる。


「気に入らないわね。その力。

 それって私の力があの子には通用しないって事でしょ?」


海の賢者がエルフの賢者をにらみつけると、エルフの賢者はゆっくりとうなずいた。


「ええ、私の固有魔法である記憶の変更も

 今のあの子には使えないわ。

 あの子の精神体がどこにあるかわからないし、

 あの子は方舟の影響を受けない状態になっているみたいなの」


「それは実際に方舟にアクセスして確認したの?」


エルフの賢者の説明に一切間をとらずに空の賢者が質問をする。


「もちろんしたわよ。

 あの子の精神体がどこにあるか調べるために、

 最初に方舟にアクセスしたわ」


「方舟に記録が残ってないのだとしたら、

 私たちの知っている世界に存在しないか、

 それとも方舟に記録を残さない事が力なのか。


 力の影響がいったいどこまでなのか、

 私たちも精査する必要があるわね」


空の賢者はエルフの賢者に対していたって冷静に話をする。


「方舟には全ての記憶が詰まってる。

 そこに記憶が残らないのに、

 君との契約は生きてるってのは、

 矛盾してるんじゃないのかなぁ?」


小人の賢者はピョンっと椅子から飛び降りて身振り手振りを入れて話す。


「ええ、そうなのよ。

 私とのやりとりも全て方舟に記録されるはずなのに、

 私が話した内容しか記録されていなかったのよ。

 でも、私との契約が生きているから、

 世界のどこかにあの子は必ずいる」


「方舟が干渉できないのに、

 契約が届く場所なんて、

 この世界にあるの?」


海の賢者のこの質問に一同沈黙となる。


エルフの賢者にもそのような場所は知らない。

もし、契約も切れているという事であれば、

すべてを遮断する命の大精霊の結界の中という事も考えられるのだが、

契約は生きており、実際に精神での会話が可能だ。


・・・方舟の監視外の場所・・・あの子はそこにいる・・・


「どちらにしても、方舟の影響を受けないってことはぁ

 僕の固有魔法も今の彼には効かないって事だよねぇ」


小人の賢者は苦笑いを浮かべて話す。


「あなたはもちろん、あの子の精神体の場所がわからない以上、

 私たち全員の固有魔法が効かない状態と言っていいわ」


空の賢者は真っ青な空を見上げてつぶやく。


「ろくに魔法も使えない人間にずいぶんな力を与えた物だわね」


「ねぇ、エルちゃん、

 今のあの身体に入ってる精神体、

 壊しちゃったらどうなるのかな?


 エルちゃん、まだ試してないでしょ?」


・・・


・・・



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


『ピーッ、ピーッ、ピーッ、

 仮想世界との接続を解除完了、意識を覚醒します』


今までは何度も聞いただろう仮想世界の終了の音声が聞こえる。


・・・なんで俺、仮想世界でこんなに殺されなくちゃならんのだ...


記憶の削除ができなくなってから、仮想世界での出来事もはっきりと覚えている。

迫りくる水から逃げ回り、大精霊に殺され、賢者に殺され、自分は一体何度死ねばいいんだろうか。


あの死を覚悟した瞬間から、意識が途切れるまでの感覚。

あれは何度経験しても気持ちが悪い。

手足がどんどん遠く離れていき、視界が徐々に暗くなっていき、背筋が凍るように寒くなっていく。

仮想空間の中とはいえ、あんなのを何回も体験すると正直、気が変になりそうだ。


記憶が削除できなくなった事への弊害とでも言うべきか、何度も繰り返される死に賢者の弟子は頭がおかしくなりそうだった。


だいたいおかしいんだよ。

あれ、絶対に助かる可能性ないとこからスタートしてないか?

ゲームとかなら、クリア不可の所からコンティニューを繰り返してる感じだぞ。

もう少し手前からリスタートとかできないのかよ。


頭につけられたヘッドギアが外され、目の前が明るくなる。


「デッシー大丈夫かい?」


ヘッドギアを手に持ったタイラが自分を気遣うように言う。


「もう最低な気分ですよ。

 何回あいつらに殺されないといけないんすか」


隣の部屋から自分のことを見ている賢者たちをチラッとみて言う。


これも訓練だって言われてるけど、何かおかしいだろ?

あいつら俺を使って何をやろうとしてんだ?


「次は賢者さまたちも仮想空間に入るらしいから、

 聞いてみたら?」


「・・・聞いたって、どうせあいつらは答えてくれねぇよ」


記憶が削除されていた頃、これを永遠とやっていたと考えると正直ぞっとする。

強くなる為になぜあんな無茶な事をして、死ななきゃならない。

魔法が使えるこの世界だったら、もっと簡単に強くなる方法でもあっていいだろ。






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


水の大精霊は血だらけになった通路を水の力で綺麗にする。

土の大精霊は、床に転がっているいくつもの身体を土に戻す。

中には、頭のみとなった身体もあれば、頭のみがなくなっている身体もある。


「あの子達って、なんでこんなに汚すのかしら?

 もっと良い方法があるとは思わない?」


水の大精霊は、通路の床や壁に付着している黒い物を、手の平から水を出して落とす。


「仕方がない。

 生死の狭間に追い込まなくては、

 彼の本体へたどり着けないからな」


土の大精霊は、身体を宙に浮かして一カ所に集める。

集められた身体は、徐々に砂へと変わっていく。


「だからって、ラボ中汚しちゃって」


水の大精霊は、土の大精霊によって、

土に変わる身体を悲しい目で見つめ、ため息をこぼす。


「我々があの子の力をちゃんと理解できるまでの辛抱だ」


土の大精霊はそう言って、水の大精霊をなだめる。


いくつもの賢者の弟子の身体を土に戻しながら...


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