力の覚醒(5)『嘘と偽』
真っ暗な暗闇の中、大精霊たちが集う。
命の大精霊の収集に応じた大精霊は、命の大精霊から賢者の弟子が手に入れた力について、命の大精霊から説明を受けていた。
「僕がわかっていることはここまで。
もうしばらく様子をみて、
彼の力がどんな物なのか僕らはちゃんと知っておく必要があるね」
「それって、今は何もわかってないのと同じなんじゃない?」
風の大精霊が不機嫌そうに命の大精霊に言う。
「いや、何もわかっていないという事だけわかっただけでも、
我々にとっては重要である」
土の大精霊は、風の大精霊の肩を掴んで掴んで話す。
「1つだけ重要なのは、
私たちの力を必要としないっていう力って事なのよね」
「その通りだ」
水の大精霊の発言に命の大精霊が頷きながら認める。
「私たちと契約して手に入れた力なのに、
私たちの力を必要としないって、
創造主さまもいったい何を考えてるのよぉ」
水の大精霊は大げさに腕を振って話す。
「今のところ、確認が取れた複製体は1体だけなんでちょ。
ちょれなら私がちゅれをちまちゅちて」
「光の大精霊、
君はなんでも破壊すれば解決すると思ってるみたいだけど、
今回のはそうはいかないよ。
今は1体だけかもしれないけど、
増殖する可能性だってある。
ウィルスのように、
どんどん増えていったり、
我々の精神体を乗っ取るっていう可能性だってある。
全ての可能性を吟味して対応しないと、
この世界を終わらせる事になってしまうかもしれないんだ」
命の大精霊は、光の大精霊を咎めるように話す。
「力をちゅかってるやちゅの本体を殺ちちゃえば終わるわよ」
「それで本当に終わるのであれば、
我々がこうやって集められる必要はないのではないかな?」
「命の大精霊はあの子の本当の精神体がどこにあるかわかってるの?」
「僕にもわからない。
あの複製体が、
本当の精神体とつながっているとも思えないしね」
「当面の間、あの複製体には誰かがついていた方がよいだろう。
事が起きてしまってからでは遅いだろうしな」
「彼のえた力は、賢者たちに与えられたような力ではなく、
絶えず発動しているようなタイプのものだ。
くれぐれも注意を頼むよ」
命の大精霊は、真実の中にいくつかの嘘を混ぜ大精霊たちに説明をした。
彼の精神体が結界の中にある事。
また、彼の精神体は複数に増殖するタイプではなく、
結界を越えて、他の精神体に干渉する機能を持ち合わせている事。
命の大精霊も力のすべてをわかっている訳ではないが、
我々大精霊にとって、不利と思える力については刺激をさけるためにふせた。
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目の前が明るくなる。
真っ白な天井が目に入り、起き上がって周りをみる。
すぐ近くにはタイラがいて、エルフの賢者の姿をした女性が2人と、ブロンドヘアーの女性がヘッドギアをつけて横になっている。
・・・
「タイラさん、俺・・・」
仮想空間の中の出来事は、
現実と混同しないために、記憶を削除するのがルールだ。
なのに、今ははっきりと仮想空間内の出来事をはっきりと思い出せる。
「どうしたんだい?」
タイラが首を傾げて、賢者の弟子に聞く。
「いや、ちょっと・・・なんでもないです」
賢者の弟子は、首を振ってタイラに答える。
おかしい。なんで俺はこんなにはっきりと覚えてるんだ。
となりのベッドで寝ているブロンドヘアーの女性。
俺はこいつに右腕をスパッとぶった切られた。
空の賢者の姿をしているけど、
中身は命の大精霊だった。
そして、エルフの賢者さまと、賢者さまにぴったりだった海の大精霊。
・・・
なんなんだ?なんで記憶があるんだ。
いつもとの違いに戸惑う賢者の弟子。
その賢者の弟子の戸惑いに反応するように、
エルフの賢者は意思を覚ました。
ーーそう。君はすべてを覚えているのね。
・・・賢者さま!?
ーー他の人にばれないように心の中だけ話すわ。
この仮想空間での記憶の削除は、人間向けに作られてて、
あなたの身体の脳に保存された記憶を、
物質的に削除しているのに過ぎないわ。
今、あなたが記憶を持っているのだとしたら、
力の影響で、脳ではなく精神体に記憶を保存する事が
可能になっただと私は思うの。
エルフ族やドワーフ族といった、他の種族と同じようにね。
・・・エルフ族やドワーフ族と同じ?
仮装空間の中で、命の大精霊は俺は長生きできるようになったとか言ってたけど、それも原因の1つなんですか?
ーーそことの繋がりは私でもわからないわ。
ベッドに横になりなさい。
あなたの記憶を見せてちょうだい。
・・・はっ、はい。
賢者の弟子は一瞬ためらいながらも、ベッドで横になっているエルフの賢者を見て、うなずきベッドに横になる。
ーーちなみに今みてた方は海の賢者よ
「なっ!」
・・・もう身体まったく同じとか本当にやめてくれませんか?
ーー私がしたんじゃなくて、海の賢者が勝手にやったことよ。
早く見た目じゃなくて、中身で区別できるようになりなさい。
賢者の弟子は眉間にしわをよせ目を瞑る。
エルフの賢者に記憶を見られると言っても、
自分では何をされているかもわからない。
ただじっと瞑想しているだけだ。
・・・
・・・
・・・賢者さま、まだですか?
精神世界に入ったエルフの賢者はすぐに弟子の精神体に行き、驚き、考えていた。
エルフの賢者が見た、賢者の弟子の精神体はまぎれもなく別物だった。
本当の賢者の弟子の精神体ではない。
魂の外殻の中には、記憶を保存しておくようにもなってはいない。
人間の精神体のままだった。
主任やタイラがミスをした可能性は限りなく低い。
あの身体に結びついている精神体は記憶を保持することはできない。
状況から考えると、どこかに行ってしまった精神体と、この精神体が結びつき、その精神体から記憶や情報が送られているとしか考えられない。
では、あの子の精神体はいったいどこへ?
エルフの賢者はこの時、一つの可能性を考えた。
私たちと同じように、特別な世界が与えられ、賢者の弟子の精神体はそこにあるのではと。
自らの身体に別の精神体を結びつけ、遠隔操作する力。
エルフの賢者が導き出した賢者の弟子の力の内容。
この力は危ないかもしれない。
もし、本体の精神体を破壊されたら、どうなるのだろう?
安全な場所にあれば良いが、もしそうでないとしたら・・・
エルフの賢者はすぐに精神世界から身体へと戻る。
一刻も早く、賢者の弟子の本当の精神体を探さねばならない。
ーー待たせたわね。もう起き上がっていいわ。
・・・賢者さま?
エルフの賢者はヘッドギアを外し、ベッドから起き上がり自身の物を見る。
目の前にいるのは、私の物なのに、中身が変わってしまっている。
遠いどこかからつながっているのかもしれないが、
まったくの別人。
エルフの賢者は唇を噛み、賢者の弟子を睨みつける。
この中身は偽物。私の物ではない。




