異世界転送『ミエとノヴァの出会い』
「ですので、学校側としましてはイジメの事実についてですねぇ」
職員室で、学校の教諭らしき男性が電話を手に持ち、必死に弁解を述べている。
その声を耳にしながら、私は今教頭の前に立たされ、あれこれ言われている。
学校でのいじめ。
担任だからと言って、四六時中教室にいる訳でもないし、
他の先生の授業中や休み時間の廊下の出来事やトイレの中の事なんて私が知る訳がない。
ましてはスマホで生徒たちが色々やり取りをしている事など、どうやって私が知る事ができるって言うの?
そこまで担任は知らないといけないとか言うんだったら、学校の中は全て防犯カメラで撮影するとか、インターネットへの接続はすべて学校で見ることができるようにするとか、ちゃんと対策をしてほしい。
何も対策なしで、生徒から何も相談されず、私は何も知らないままイジメの責任をどうのこうの言われている。
学校での出来事はすべて、担任である私の責任なの?
イジメをする人間を育てた親の責任はないの?
学校は教育をする場で、その人の人格を育てるのは親の役目じゃないの?
なんで、私がイジメをおこなうように育った生徒の責任まで取らないといけないの?
不満をあげたらきりがない。
「自分の子がそんな事をするはずがない」と、はっきり言う保護者たち。
でも実際、あなたの子供が他の子供をいじめていたんです。
その事を伝えると、それは学校側の問題で「私たちには責任はない」「責任転嫁だ」「学校の横暴だ」と平気な顔でいう。
疲れた・・・
私は、こんな生活に。私はこんな環境に疲れていた。
教頭の話が終わり、教頭とともに校長室に行き、イジメの経緯やその後の対応について話を聞く。
私が話す事もなにもかもを教頭が決める。
私はただ、校長や教頭が考えた文章を読み、責任を取るだけの存在だ。
私はイジメによりトカゲの尻尾切りにあうだけの存在だ。
一人暮らしのアパートに帰り、スマホをテーブルの上においてベッドの上に横になる。
もう何も食べる気がしない。
もうこのまま死んでもいいぐらいだ。
早く楽になりたい。
・・・
目をあけて時計を見ると、夜中の2時を回っていた。
学校から帰ってすぐにベッドに横になって・・・私はそのまま寝てしまっていた。
ベッドの上で身体を起こし、ぼぉっとする。
スマホの画面には学校や保護者からの着信履歴が20件以上を表示されていた。
もうどうでもいい。
悪いのはすべて私でいいから、静かにしてほしい。
ほかっておいてほしい。
立ち上がり、スマホを手にとって電源ボタンを長押しして電源を切る。
電源を切ったスマホをベッドに投げ捨て、床に座り込む。
なんでこうなったんだろう。
なにがいけなかったんだろう。
なんで私が・・・
・・・はぁぁあっ
テーブルに額をつけ大きくため息をつく。
「ずいぶんお疲れのようですが、大丈夫ですか?」
私は大きく目を見開き声のした方向を向くと、白銀の甲冑を着た金髪の男性が立っている。
私、部屋に鍵をかけるのを忘れてた?
泥棒?強姦魔?
叫ぼうしたけど声がでない。
「驚かせてしまったようですいません。
私はあなたが心配されているような者ではありません」
男性は低い声で丁寧に話してくれるが、女性の一人暮らしのアパートに忍び込むような男なんて信用できない。
金髪で誰がどう見ても外国人のような顔立ち、そしてあまりにも不自然な格好。
私には不安しかない。
そんな私の不安に気づいたのか、男性は一歩距離を取り、ゆっくりと膝をつく。
私と視線が合うと、男性は優しそうな笑みを浮かべる。
私は目をつむり、ゆっくり深呼吸をしてこの後のことを考える。
この後、両手を縛られて、無理やり犯されるかもしれない。
通帳や印鑑も奪われて、私は殺されるかもしれない。
なんで私ばっかりこんな目にあうんだろう。
どうやったら、私は逃げる事ができるんだろう。
・・・
さっきまで死にたい。
死んで楽になりたい。
そう思っていたはずなのに、
目の前に見知らぬ人がいて殺されるかもしれないと思うと
急にどうやったら生きられるかを必死に考えている。
今のこの現状を考えると不謹慎なのだろうが、
そんな自分がおかしく思える。
「どうかしましたか?」
頭の中で色々と妄想を膨らましていた私に男から声がかけられる。
私は1度咳払いをして、頭を下げる。
この男はいったいなんなんだろう。
なぜ何もしてこないのだろう?
チラッと男の顔を確認すると、視線があって男が笑みを浮かべる。
目があう度に笑みを浮かべる男性。
もしかして、私にストーカー?
こんな人が?
・・・
ゆっくりと顔を上げ、男の顔を見る。
顔は・・・結構イケメンで、正直好みだ。
格好は、かなり問題ありだけど・・・というかなんで甲冑?
膝をつき、ずっと姿勢を変えない男。
その顔立ちといい、その姿といい、騎士のような振る舞いだ。
だけど、不法侵入者であり、私をこれからどうするかわからない危険人物。
「あっ、あのぉ」
「はい、どうかしましたか?」
声が出た事、そしてその声に優しくゆっくり返事をしてくれる男性にほんの少しだけ胸の高鳴りを感じる。
「あのぉ、女性の一人暮らしのアパートにいきなり・・・
なっ、なんなんですかあなたは?
私をどうしようと言うんですか?
私そんなにお金持ってる訳じゃないし、
身体にだって自身ないし・・・」
・・・って私何言ってるの?ちょっと私落ち着きなさいよ。
「そうですね。
女性が一人で住んでいる場所に、
いきなり訪れた比例はお詫びいたします。
私たちには、このように接触をするしかないものですので」
「そんなお詫びとか、接触とか・・・
あなたはいったいなんなの?」
なかば発狂したように男に聞く。
「このままお話を続けても説明をしても良いのですが、
実際に私の力を見ていただいて、
お話をさせていただいても構いませんか?」
「みっ、見せるって何を?」
「私たちの世界の精霊の力をです」
男性が精霊の力と言った旬から、男性の身体から無数の光の粒が飛び回り始める。
明かりのついた部屋の中で、白く輝く無数の光。
「これが、私の持つ精霊たちです」
なにがなんだか、さっぱりわからない。
この光の粒は精霊?
なんでこんな物が?
いったい何がおこってるの?
「私は、この世界とは別の世界。
この世界の人たちが異世界と呼ぶ場所からやってきた。
エルフ族の騎士、ノヴァと申します」
光の粒に宙に舞い散らせながら、男が自己紹介をする。
男の話を聞き、驚きのあまり開いた口がふさがらない。
宙を舞う光の粒を目で追いながら、
男の話す事が、嘘ではないのかもしれないと半分信じながら。
ノヴァは丁寧に異世界の事を説明してくれる。
私が楽な姿勢になっても構わないって話をしても、
ノヴァは姿勢を崩さず、膝をつきながらもまっすぐに背筋を伸ばして話してくれる。
騎士の鏡。この人かっこいい。異世界にはこんな人たちがたくさんいるのかな?
「この世界でも同じかと思いますが、
私たちの住む世界でも、他の世界でも、
多くの言語と多くの文字があります。
あなたにはまず私たちと同じ言語である、
エルフ族の使う言語を・・・」
えっ、この人エルフ族?
エルフ族ってあれよね、耳とかピンとして挑発で弓とか使ってかっこいい・・・
でも、この人耳は普通だし甲冑とか着てて、私たちに近いような。
ノヴァの説明を聞きながら、頭の中ではいろいろな妄想を膨らましていた。
異世界、魔法の世界、エルフ、嘘みたいな本当の話。
この先、私にはどんな未来が待っているんだろう。
女性はエルフの騎士であるノヴァの話を聞き、異世界への期待を大きく膨らませていた。
この後、仕事の謹慎期間を利用してエルフの使う言葉を覚え、エルフの使う文字を覚え、賢者の弟子と同じ日に異世界への扉をくぐった。




