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異世界2日目精神世界(3)

小さな女の子が来てくれるまでどれくらいの時間があったのだろう。

足の感覚はもう完全になくなり、動かすこともできない。

可愛い女の子に後ろに抱えられて、この真っ白な世界から出て行く。

この真っ白で何もない世界はいったいなんなんだろう。


真っ白な世界から出ると、今度は真っ暗な世界が待っていた。

そこには何人も人がいた。

助けに来てくれた可愛い女の子と、

後からやってきたかわいらしい少女を合わせると、

あれ?なんて数えたっけ?・・・


黒い髪の毛の青年、

ちっちゃな男の子、

髪の長い綺麗な女性、

体の大きな男性、

茶色の髪の女の子、

短髪で干髪の毛が明るい男の子。


「君は今記憶がない状態だからね」


ちっちゃな男の子が自分のズボンの裾を掴んで話しかけてきた。

この男の子も誰なんだろう。


「ここでの事は、後で思い出す事もないから今はあまり考えない方がいいよ」


黒い髪の毛の青年が自分に話しかけてくる。

ここでの事は...と言われても・・・

自分が誰なのかもわからないし、

自分がどこからきたのかもわかんないんだけど。

そして、ここからどこに行くのかも全然わからない。


「余計な話しをしても、この子を混乱させるだけだから、

 エルフの賢者と話しを進めましょ。


 ごめんなさい。君はちょっと座ってまっててね」


髪の長い綺麗な女性が自分に頭を下げてくる。

彼女に頭を下げられて、つられて頭を下げ、地面に腰を落とす。


「エルフの賢者、

 君がこの子を本気で賢者の弟子と考えているのであれば、

 僕らは創造主と盟約に従って、この子と直接契約をしよう。

 どうかな?」


黒い髪の毛の青年が真剣な眼差しで、

可愛い女の子に話しかけている。


なんか、もの凄いお似合いのカップルのように見えて、

ちょっとだけ胸がむかむかする。


「直接契約って事はぁ、

 もう変なちょっかいは出さないって事で良いのよねぇ?」


可愛い女の子は、

黒い髪の毛の青年に対してではなく、

真っ白な世界に後からきた少女に話しかけている。


この人たちはいったい誰なんだろう。

これはなんの話をしているんだろう。

2人はどんな関係なのだろう。


「それでいいわ」


少女は可愛い女の子にそう告げると自分の方にやってきた。

そして、いきなり手を握ってきて、となりに座る。

可愛い女の子の方をみると、もの凄い形相でこちらを睨んでいる。

少女の顔をみると、可愛い女の子に対して笑みを浮かべている。


黒い髪の毛の青年とちっちゃな男の子は苦笑いを浮かべ、

髪の長い綺麗な女性は笑みを浮かべている。


体の大きな男性は、もの凄い目でこちらを見ている。

茶色の髪の女の子と男の子はこちらの話に興味がないのか2人で何か話しをしているみたいだ。


「それじゃぁ、直接契約を受け入れるわぁ」


可愛い女の子の顔は黒い髪の青年の方を向いているが、目は完全にこちらをむいているし、目が笑っていない。

この少女と仲が悪いのだろうか。


「じゃあ、この子と僕たちは直接契約をさせてもらうよ」


黒い髪の毛の青年が、こちらに振り返り手をぱっとかざす。



・・・


・・・


・・・


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


壁も空もない真っ白の世界。

小さな子供と男が立っている。

床には大きさの違う沢山の額が並べられている。


「大精霊との直接契約おめでとう」


小さな子供は、笑みをこぼして男に言う。

男は困惑の表情を浮かべている。


「今の君は、記憶を持っていないから僕の言っている意味はわからないかな?」


小さな子供は視線を落とし、寂しそうな表情を浮かべる。


「すいません」


小さな子供の顔を見て、男はなんだか罪悪感を感じ頭を下げる。


「記憶がなくても、人格は変わらない...か、

 ・・・

 それじゃあ、大精霊との直接契約を祝して、

 僕から君へプレゼントを贈ろう」


小さな子供は笑みをこぼし、

両手の手の平を合わせて腕を上に伸ばす。

手の平の上が一瞬光輝き、小さな木箱が現れる。


「この箱の中には、

 この世界でたった1人しか利用できない固有魔法が入ってるんだ。

 君にはこの固有魔法を贈るよ」


小さな子供は、木箱を男にむかって差し出している。


「自分に?

 本当に受け取っていい物なんですかね?」


「大精霊と契約したんだ。

 君には、その資格があるって事だよぉ」


「それじゃあ、なんか申し訳ないですけど、いただきます」


男は小さな子供に頭を下げて、木箱を受け取る。


「固有魔法は世界を変える可能性を秘めた、

 危険な代物だからね。

 

 利用する時は契約した大精霊の許可が必要だからね」


小さな子供は、ニッコリと微笑んで男に言う。


・・・世界を変える...危険な代物...


「あのー」


「なんだい?」

 

「これ、今なら返品ってできますか?」


「えっ???」


小さな子供は目を丸くして驚いている。


「いや、なんていうか、危険な代物なんですよね?

 自分には、そういうのはちょっと...

 

 なんていうか、多分向いてないっていうか...

 なんだろう。うまく説明できないんですけど、

 自分がこれをもらうより、

 他の人にあげた方がきっと良いと思うんですよ」


小さな子供は男の言葉を聞き、ため息をつく。


「君に見せたい物があるんだけどいいかな?」


小さな子供は男に向かってそう告げると、

床に並んでいる額の1つを手にする。

その額には、パズルのピースのような物が詰まっている。

真っ白なピースもあれば、人の顔や、動物の顔、物や植物まで色々な物が描かれている。

ただ、1ピース分穴が空いてしまっている。


「このパズルはね。君そのものなんだよ。

 どんな生物だって、1人では生きてはいけない。

 沢山の命と出会って、その命の影響を受けて、

 人格を作り成長をしていくんだ」


「はぁ...」


「この額のパズルのピースは、

 今まで君が関係を持った人や物だよ。

 真っ白なピースはこれから君と出会い、

 関係を持つ人や物の分だ。


 今の君は記憶がないからわからないかもしれないけど、

 この人達は、みんな君が知っている人たちばかりなんだ。


 そして、この人たちの額には君のピースがあるんだよ。

 互いの記憶に残る関係の人だけが、この額のピースになるんだ。

 

 お互いに影響を与えているピースなんだ」


小さな子供は、そう告げると額を床に置き、男に笑みをこぼす。


「それじゃあ、次は君が生きていく為につながった人たちのパズルを見せるね。

 君の記憶には存在しないかもしれないし、

 君の人格には影響は与えていないかもしれない、

 でも君とつながっている人たちのパズルだよ」


小さな子供は手を上に上げて、一気に振り下ろす。

空から、とても大きな額が下りてくる。

その額はとても大きく、高さも横幅もいったいどこまであるのかわからない。


あまりにも大きな額に圧倒されて、男は息をのむ。

もの凄い大きさの額には、とても小さなピースがはまっている。

そして、男の位置から見えるピースは、ほとんど人の顔が印刷されていて、白のピースはほとんどない。


「もの凄い大きさでしょ。

 君が生きていく為に、つながりを持った人や物のパズルだよ」


小さな子供は、その大きな額にはまっている1ピースを指さしていう。


「この人は、もしかしたら君が昨日食べた物の生産者かもしれないね」


小さな子供は笑みをこぼす。


「君が今日まで生きてこられたのは、

 この人たちがいてくれたからなんだよ。

 この人たちとつながって、

 君は今日ここに来たんだ」


「こんなにたくさん・・・」


「ああ、君はこれだけたくさんの人のおかげで、

 今も存在していられるんだ」


男は胸が熱くなって、唇をぐっと噛みしめる。

なぜ胸が熱くなるのかも、なぜこんな感情になるのかもわからない。

でも、確かな事はたくさんの人とつながりを持てている事を、

嬉しいと感じている事だ。


小さな子供は、そんな男を見て尋ねる。


「君の命はこれだけ多くの人が支えてくれていうのに、

 自分を否定するのかい?」


男は気づかないうちに涙が出ていた。

涙が止まらなくて返事ができない。

記憶がなく、自分が誰かもわからない。


このピースに描かれた人たちが自分の命をつないでくれている事がただただ嬉しくて。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




目を開けると真っ白な天井が見える。

右手には誰かが握っている感触がする。

エルフの賢者だろうか、ゆっくりと握られている手の方向を見ると、

赤い髪の人が手を握ったまま眠っている。


・・・うわぁ、なんかデジャブ?つか前と一緒...今度は違う人?


なんで、自分はこんな所に寝ているんだろう。

何か気を失うような事あっただろうか...


イツツッ、なんか思い出そうとすると頭が痛い。


・・・この世界に来てからひどい事がありすぎて思い出そうとすると頭が痛くなるな。


賢者の手をそっと離し起き上がろうとする。


「どこにいくのぉ?」


「うわっ・・・」


どうやら、賢者は起きていたらしい。


「ちょっと、トイレにでも...って

 起きてたんなら、もっと早く教えてくださいよ。

 賢者様と一緒にいると、心臓に悪くて仕方ないよ」


勢いよく賢者に抱きつかれ、そのままベッドの反対側に転げ落ちる。

後頭部を床にたたきつけるが、床は衝撃を吸収してくれて痛くはない。

ただ、起きてすぐにこんな攻撃。

賢者様の胸の膨らみや体温が伝わる。

顔が熱くなり、耳もすぐに熱くなる。

心臓の鼓動が早くなり、呼吸がくるしくなる。


「賢者様、お願いだから離れてください。

 もうマジでお願いします。

 それがしたいんだったら、せめて前の体に戻して!」


賢者様の顔が見えていないだけ、助かっているが、

マジでこのダメ賢者の抱きつき攻撃はやめてほしい。


ーー魔女っ!魔女っ!魔女っ!


もうなんだろう。この魔女は、なぜこう何かあるとすぐに抱きつくんだ

本当にやめてくれ。


エルフの賢者の抱擁からやっと解放された賢者の弟子は、

心臓の鼓動を整える為に目をつむって瞑想をする。


その様子を見ているエルフの賢者は薄笑いを浮かべ、


「そんな事しなくて、もう大丈夫なのにぃ。

 また君は目をつむってるねぇ」


その言葉にドキッとして、目を開ける。

そう、ついさっきこの場所で、自分の初めてを奪われた。


唇の感触を思い出した賢者の弟子は顔も耳も真っ赤にして、うろたえている。

エルフの賢者はそんな賢者の弟子を見て、笑みをこぼす。


2人の様子を別室のモニターで見ている小人の賢者とエクレア。

2人は目を合わせて笑みをこぼす。


エルフの賢者は、顔を真っ赤にした賢者の弟子の手を掴み部屋をでる。


「それじゃあ、家に帰りますかぁ?」


エルフの賢者の問いかけに、耳まで真っ赤にした状態でうなづく。

手を引かれ、子供のように彼女の後ろについて歩く。

その2人の後ろを小人の賢者が駆けてくる。


「2人とも急いでぇ」


2人が振り返って、小人の賢者を見ると後ろからエクレアがついてきている。

エクレアは、足の遅い小人の賢者に余裕で追いつく。


「・・・あの王女に巻き込まれると厄介ねっ」


エルフの賢者はため息をつき、ほんの少し歩行速度をあげた。

手をひっぱられ、自分も少し速度をあげる。

エルフの賢者は、すぐそばの扉を開け賢者の弟子とともに部屋に入る。


「いいのか?」


「チビにもエクレアにも扉を開ける権限はないわぁ。

 今のうちに街をでましょぉ」


エルフの賢者はポケットの中から魔方陣の書かれたカードを出して、

そのカードに書かれている魔方陣の外周を指でなぞる。


魔方陣は、光の粒をもの凄い勢いで出し始めてエルフの賢者と賢者の弟子を包みこむ。

賢者の弟子は、その光の粒を見て触ろうとするが、エルフの賢者にすぐに制止された。


「この光の粒から外にでたらぁ

 君、真っ二つになるわよぉ。

 死にたくないならぁ、動かないでぇ」


賢者の弟子はその言葉を聞いて息をのむ。


急に身体を浮いているような感覚が襲う。


「えっ?!・・・」


光の粒が一瞬で消える。

賢者の弟子の目に映るのは、真っ青な空。

あっという間に景色がひっくり返り、空が地面に変わり空気の壁が襲いかかる。

耳には轟音が襲いかかり、空気が身体を襲う。


呼吸ができない。息が...


ちょっ俺、また落ちてんのかよ!いったい何回同じ思いしてんだ!!!


さっきまでつないでいたエルフの賢者の手は、今はつながってない。

空を飛べない自分は、ただ一直線に地面に落下している。


いや、マジ怖いっていうか、やばい!

この状況はとってもやばい!

空を飛べる連中なら、空にいきなり放り出されても大丈夫かもしれないけど、

俺は空なんか飛べないっつぅの!


エルフの賢者を確認したくても、

空気がもの凄い勢いで顔に当たって目がほんの少ししか開けられない。

声を出したくても、口を開ければ一気に空気が口の中に入ってきて無理!


ーーちょいマジ助けて。マジやばい、これ本当にやばい奴!!!


...あのクソ魔女の馬鹿!!!


もの凄い勢いで襲う空気の中、うっすらと目を開くと賢者の顔が見える。

笑顔を浮かべる賢者の顔。


ーーおまえ、この状況で何で笑ってられんだよ!!!


なんとか賢者に捕まろうと、必死に賢者に手を伸ばす。

空気が腕をもの凄い勢いで襲う。

空気の壁で腕が重い。

ぬぉぉぉぉ、頑張れ俺!なんとかしてあの魔女を掴め!


目をうっすら開けるとエルフの賢者の顔がなくなっている。


ーーどこ行った?...もうマジ勘弁してくれ...


指先になにかが触れた感触がする。

その感触に反応して、それを掴もうとするが掴めない。


今度は手の平になにかが触れた感触がする。

すぐさまそれを掴もうとするが、掴めない。


ああ、くそっ!!!


肘の内側に何かが触れた感触がする。

今度こそと、全力で手を開き、一気にそれを掴もうとする。

手にはしっかりと何かを掴んだ感触がする。

掴んだ物を必死に離さないように歯を食いしばり一気に引き寄せる。

身体が何かに触れた。

もうすぐ近くそれがある。

もう1度歯を喰いしばって、空いている片腕で一気にそれを抱き寄せる。

胸の辺りからおなかの辺りまで何かがしっかり密着している感触がする。

両腕で密着している物を抱きしめた。


「やっとぉ。

 君から抱きついてくれたぁ」


頭の中で賢者の声が聞こえたのと同時に頬に何かが当たる感触がした。


目を開ければ、目の前にエルフの賢者の顔が見える。

そして、身動きのとれない自分の頬にエルフの賢者はそっと...


・・・


・・・


・・・


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