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異世界2日目精神世界(2)

ラボの中、エルフの賢者のみが扉を開ける事が可能な一室。

その部屋の床には数多くの転送魔法陣が描かれており、

エルフの賢者はこの魔法陣を利用して、いろいろな世界に出入り可能にしていた。


エルフの賢者の目は赤い輝きを放つ。

小人の賢者はその目を見る度にため息をつく。


「ねぇ、本当に行くのぉ?」


小人の賢者は、エルフの賢者に聞く。


「今更なに言ってるの?

 私の物にちょっかいを出したやつがいるのよ」


「今の君には何を言っても無駄みたいだね」


小人の賢者は深いため息をつき、自身の右腕に描かれている魔法陣に触れると緑色の光の粒が小人の賢者を中心に舞い始める。


「叱られるのは僕なんだからねっ」


命の大精霊が作った結界は、命の大精霊の許可なしでは入れない。

エルフの賢者が一人で精神世界に入ったとしても、命の大精霊の元へ行く事は不可能だった。

ドワーフ族である小人の賢者は産まれながらにして、

命の大精霊と契約しており、命の大精霊との直接のやりとりが可能だった。






命の大精霊が作った結界の中に入ったエルフの賢者はすぐに暗闇の中の白い輝きに気づく。


間違いなく、あの中に...


白い輝きに駆け寄ろうとしたエルフの賢者を小人の賢者が制止する。


「大精霊のみんなが集まってるみたいだから」


エルフの賢者の膝を掴み、大精霊の存在を知らせる。

エルフの賢者は、小人の賢者を膝に抱えたまま足を進める。


目を赤く染めたエルフの賢者の姿を見つけた光の大精霊は薄笑いを浮かべて待つ。


それ顔を見た命の大精霊は小声でつぶやく。


「この結界内で何かおこしたら、

 例え君らでもこの結界から2度と出る事を許さないよ」


これはいわば命の大精霊からの脅しである。

命の大精霊の作った結界からは、

同じ大精霊といえども、

命の大精霊の許可なくして、

出る事も外から干渉する事もできない。


だが、許可さえあれば、

物質世界からも精神世界からもどこからでも出入りできる。

物質と精神の狭間の空間。


命の大精霊のみが利用可能な固有魔法の1つ。


大精霊の天敵は大精霊の中にいる。


「それはあっちに言って」


光の大精霊はエルフの賢者を指さしていう。


エルフの賢者が近づいてくるのは、2つの赤い輝きですぐわかる。


「エルフの賢者様ももう少し冷静になれないのかな?」


命の大精霊が水の大精霊にこっそりとつぶやく。


「大切な子供を奪われて、怒らない親はいませんよ」


水の大精霊はほんの少し笑みをこぼして命の大精霊に言葉を返す。

命の大精霊は、水の大精霊の言葉を聞き苦笑いを浮かべ真っ白な空間に目を向ける。


男は地面に仰向けに寝転がったままだ。


親と子の関係か、水の大精霊には2人の関係はそう見えるというのも面白い。

子供を奪われて、親が必死の形相で迎えにきた。そんな所か。。。



「私の物を返してもらいきたわよぉ」


エルフの賢者は命の大精霊に詰め寄る。


一番最初に、光の大精霊の所に行かず、命の大精霊の所に詰め寄る姿を見て、水の大精霊と土の大精霊は笑みをこぼす。

エルフの賢者の足下でずっと引きずられた状態だった小人の賢者は立ち上がり、風の大精霊とハイタッチ、続いて火の大精霊ともハイタッチ。

光の大精霊は、命の大精霊に駆け寄ったエルフの賢者をじっと見つめていた。


「この子がそんなに大切かい?」


命の大精霊は優しい笑みを浮かべて真っ白な空間への道を開く。

エルフの賢者は命の大精霊の質問に返答をせず、真っ白な空間へ入っていく。


「君はあいかわらず言葉が足らないなぁ」


エルフの賢者もわかっている。

もしこの真っ白な空間に入った状態で命の大精霊が出る道をふさいだら、この空間から外にでられなくなる。

すべてを理解した状態で、ためらいもなく真っ白な空間に入っていく。

言葉ではなく、態度で命の大精霊への返事を返した。


命の大精霊は手を上に向けて笑みを浮かべる。


「光の大精霊。君に1つ質問をしたい。


 もし、君の大切な物を僕の空間に閉じ込めたとしてら、同じ行動ができたかい?」


命の大精霊は、光の大精霊の顔を見つめ回答をまつ。


「わからないわ。

 私にはそんなに大切な物なんてないしね」


光の大精霊らしい答えだ。

土の大精霊がため息をつき、水の大精霊はクスクスと笑う。


「エルフの賢者にも良い変化が見られるし、

 もう少し様子を見てみるってのはダメかな?」


光の大精霊は不服そうな表情を浮かべ、じっと目をつむる。


「それにそこまで気になるなら、

 賢者の弟子と認めて盟約にしたがって、

 直接契約をしてしまった方がいいと思うんだけど」


命の大精霊の言う、大精霊との直接契約は精霊の力を貸し与える物ではなく、一方的に遮断する契約を意味する。

知識を身につけ、精霊の力を悪い事に利用した場合に一方的に精霊の力を遮断する契約であり、契約の破棄は大精霊側からしかおこなえない。簡単に言えば一方的な縛りだ。


小人の賢者は頭の後ろで両手を組み、真っ白な空間の中の2人をのぞき込む。


「それであの子の命の保証がされるなら、

 エルフの賢者は喜んで契約させるさ」


命の大精霊の顔を見てニッコリと笑みをこぼす小人の賢者。


真っ白な空間の中では、男は正座をしており、その前にエルフの賢者が立っているのが見える。


「あの子が記憶がないって事は」


水の大精霊が命の大精霊に質問をする。


「そんなの知らない訳がないだろう。


 それでもしないと気が済まないんじゃないかな」


大精霊の顔が笑みにそまる。

魂の状態では記憶を保持できない人間。

ここでの出来事は、身体に戻ると全てを忘れてしまう。

この場でいくら説教をしても意味のない事だ。


「記憶がない状態でも、

 あの子は結局エルフの賢者に説教されるんだよね。

 そういう星の下に生まれたのかな?


 これ、ほかっておくとかなり長いよぉ」


いつもエルフの賢者に説教をされている小人の賢者は笑みを浮かべて言う。


「誰が助けに行くのが良いんだろうね?」


命の大精霊は光の大精霊に視線をチラチラと送りながら言う。

その命の大精霊の行動を見て、水の大精霊はクスクスと笑いをこぼす。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー






真っ白な世界の中、

突然目の前にあらわれたもの凄く可愛い女の子に、なぜかいきなり叱られている。


自分が誰なのかもわからないし、この子がだれなのかもわからない。


なのに、いきなり変な座り方を強要され、ずっと怒られている。


自分がいったい何をしたのかわからないし、何が起きているのかもわからない。


ただ、この真っ白で何もない世界に現れたこの可愛い女の子は、きっと助けにきてくれたのだろうと勝手に思っている。


何もないこの世界、自分が誰かも思い出せない記憶喪失者、迎えに来たのはもの凄く可愛い女の子。


この先、きっと何か良いことが起こるに違いない。


この真っ白な世界から外に出たら、きっと...

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