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異世界2日目精神世界(1)

弟子に翻訳魔法の説明をしている最中、

エルフの賢者は何者かがラボに侵入した事に気づいた。

このラボのセキュリティを簡単に破って侵入してくる物、

それは賢者よりも上位の存在である大精霊でしかありえない。


エルフの賢者は急ぎ、侵入を許した場所に向かう。

特殊な素材に土の精霊の力で強度をました壁に大きく開いた穴。

その穴の周辺を見ると、熱で溶かされたような跡がある。


「このタイミングで光の大精霊がくるなんてっ」


・・・!?


エルフの賢者は通路を駆け抜ける。

その顔はあきらかに焦りと動揺が見える。


自分と自分の物とつなぐ契約の印。

その印が突然消えたのだ。


契約の印が消えたという事は、

自分の物が契約を破棄したか、

自分の物の存在が消えたかのどちらかだ。

賢者と種族の代表に弟子を一時的とは認められ、

自分の弟子を襲う物はいないはずだった。


そう、大精霊の中でも始まりの2人以外は。。。


扉を開けて、部屋に入る。

部屋の中には主任とタイラが立ちすくんでいる。

地面には自分の物が倒れている。

自分の物にかけより、その身体を確認するが魂が入っていない。

身体から魂がはがれ、契約の印が消えた。

エルフの賢者が導き出した答えはたった1つだった。


「誰がやったのぉ?」


低くうなりをあげるような声が部屋の中を響きわたる。

主任とタイラは固まってしまって、返事をしない。

エルフの賢者には、穴の後から誰がやったのか検討はついていた。


エルフの賢者はすぐに精神世界への扉を開こうとする。


「待ちなよ」


振り返ると、そこには小人の賢者がたっている。


「その子なら、無事だよ。

 命の大精霊さまが匿ってくれているから」


「どこぉ?」


エルフの賢者は小人の賢者に駆けより、自分の顔と同じ高さまで持ちあげる。


「この持ち上げられ方は結構痛いんだけど」


「痛くない思いをしたくないならぁ、すぐに話しなさい」


エルフの賢者の目が赤く輝く。

そんなエルフの賢者の目に気づき、小人の賢者は目をつむる。


「今は、命の大精霊様の結界の中だよ。

 あの方の結界の中は、誰も入れないのは知ってるでしょ?」


「大精霊様のぉ」


エルフの賢者は安堵して、崩れ落ちる。

命の大精霊様の結界の中、この世界の中でもっとも安全な場所。

賢者はもちろん大精霊も入る事ができない唯一の場所。

そこに私の物がいる。まだ存在している。

目にうっすらと涙が浮かべ、自分の物の身体にそっとふれる。


「光の大精霊が目を光らせてるから、

 しばらくは命の大精霊様の所に預けておいた方がいいと思うよ」


「そう。やっぱり光の大精霊がぁ、ここにきたのねぇ」


エルフの賢者の目に光りがともり、全身から殺気が放たれる。

光の大精霊、この世界の頂点に立ち、この世界の始まりの存在。

傲慢で、強欲で、怠惰で嫉妬深き大精霊。

この世界から夜を奪った諸悪の根源ともいえる大精霊。


小人の賢者は両手で口を塞ぐ。

今のは言ってはいけない一言だったと気づいた。


「それでぇ、光の大精霊様はどこに行ったのかしらぁ?」


「君、光の大精霊とやり合うつもりだよねぇ?」


「あたり前でしょぉ?私の物に手を出したのよぉ」


エルフの賢者は薄笑いを浮かべる。

しかし、こめかみには青い筋がくっきり見える。


「光の大精霊も君の事を心配しての行動だと思うんだけどぉ」


「関係ないわぁ」


小人の賢者はため息をつく。

エルフ族の性格はよくわかっている。

高慢で、激情で、貪欲で羨望を許さないこのエルフの特性。


エルフの賢者は小人の賢者を持ち上げて、通路を進む。

目に赤い光りを輝かせたままで。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


目を開けると、真っ白な空が見える。

右を向いても左を向いても何もない。ただただ真っ白だ。

もし、これがアニメの世界だったら、間違いなくこのシーンを担当した人は線一本いれる事なくギャラをもらえる美味しい場面だ。


そんなくだらない事を考え、軽くため息をつく。


ゆっくりと立ち上がり、周りを見渡す。

立ち上がっても見える光景に変化はない。

360度、どこを見ても真っ白だ。


もう、これ完全に放送事故の世界だよ。

こんなとこでどうすりゃいいんだよ。

マジ泣きたいんだけど。

出口らしい物も一切ない。

ただただひたすら真っ白な空間。

この真っ白な世界はかなり精神的にきつい。


肩でため息をつく。


何もない。真っ白な世界。

どうすれば良いのかまったくわからない。


地面に座り考える。

ここに来る前に自分は何をしていた。

なぜ、自分はこんな所にいる。


・・・


そもそも自分は誰なんだ。


・・・


わかんね〜。


なんなんだここ?

誰なんだ俺?

ここを出て、俺はどこに行こうとしてるんだ?


何もわからない。どうなってるんだ。

どこ見ても、白い景色が永遠に続いてるし、

もうどうなってんだよ!!!


地面に寝転び、何もない真っ白な空を見る。

本当にここには何もない。


寝転んだままため息をつく。


・・・


・・・


・・・


どれくらい時間がたっただろうか。


何も起こらず、何も変化しない真っ白な空をずっと見ている。

何もないから、何もする事がない。


自分が誰かもわからないし、自分がここにきた理由もわからない。

自分がここからどこに行きたいのかもわからない。

何もわからず、ただ真っ白な空をずっと見ている。


「暇だ〜」


「暇だ。暇だ。暇だ。暇だ」


「誰かいないのかよ」


「なんなんだよこの世界。俺はいったいなんなんだよ!」


「誰でもいいから教えてくれよ!」


「俺はなんでここにいる。俺はいったい誰なんだよ!」


「誰でもいい。誰でもいいから、俺を助けてくれ!」


目に涙を浮かべて、男は叫び続ける。

しかし、その声に返事は返ってこない。


下唇を噛みしめ、両手で顔を覆う。

涙がこぼれ落ちる。

誰もいない。何もないこの空間。

自分が誰なのかもわからない。


「くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!」


「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」


・・・


・・・


・・・


男の顔には涙を流した痕がくっきりと残っている。

涙を出し続け、叫び続けた男は、もう声もでないし、涙もでない。


真っ白な空間で、誰もいない、何もないこの空間で、涙を流した理由も今はもうわからない。


・・・


・・・


真っ白な球体の空間を真っ暗な暗闇の中でずっと見ている大精霊。


この世界に男を転送した命の大精霊。

この世界に男を転送するきっかけを作った光の大精霊。

この世界に男が来てからずっと見ていた水の大精霊。

この世界に男が来てから水の大精霊と行動を共にした土の大精霊。

この世界に男が来たことを不満に思っていた風の大精霊

この世界に男が来たことに無関心だった火の大精霊。


大精霊は、この男が賢者の弟子になるべき存在なのかを選定していた。


「あの子には、賢者の弟子は無理よ」


光りの大精霊は、真っ白な空間でずっと寝転んでいる男をゴミをみるような目で見ている。


「あの子は人間だよ。精神体となっているあの状態では記憶がないんだよ」


命の大精霊が光の大精霊に男の事をかばう。


「記憶がないと言っても、人格までは変わるとは思えないんだけどね」


光の大精霊は、吐き捨てるように男の事をいう。


「あの子は、この世界に来て変わったよ。

 あの子は元の世界では本当に闇の中にいたんだから。

 もう少し様子を見てあげましょ。

 あの子にはまだ成長する可能性があるわ」


水の大精霊は、優しい表情で真っ白な空間の中の男を見つめている。


「変な方向に成長して、過去と同じ事にならなきゃいいんだけどね。

 もう2度あんな思いをするのはやだなぁ。

 私達の作った物が、一瞬ですべてなくなっちゃったんだもん」


風の大精霊は、悲しそうな表情を浮かべ、じっと真っ白な空間の中の男をみている。


「そうならないように、僕らもこうして集まってるんでしょ」


火の大精霊は、風の精霊をじっと見つめ、優しい微笑みを浮かべる。


「なら解決方法は簡単。

 あの子を殺して、エルフの賢者に今後一切弟子を持たせなければいい。

 それで解決じゃん」


光の大精霊は、白い歯を見せ周りの大精霊の顔をのぞき込む。


「光の大精霊よ。おまえはいつもそうやって全てを壊そうとする。

 破壊からは何も生まれない。それがわからぬ訳でもないだろう」


土の大精霊が光の大精霊を軽蔑の眼差しを向けて一喝する。


「土の大精霊は、本当になんでもかんでも堅いよね」


光の大精霊は土の大精霊にかみつくが、

土の大精霊は光の大精霊に軽蔑の眼差しを向け続ける。


光の大精霊は闇の精霊をかばい続ける土の大精霊を敵視している。

土の大精霊は光の大精霊の光りが届かない空洞を世界の各地に作り上げ、闇の精霊をかくまっている。


土の大精霊は、光の大精霊の闇の精霊に対する傲慢な態度が許せない。

闇の精霊を攻撃し、闇の精霊をこの世界から消滅させようとする光の大精霊。

光と闇はどちらも世界には必要な存在である事を土の大精霊はこの中で一番知っている。


「光の大精霊も土の大精霊もやめなよ。喧嘩する為に集まったんじゃないんでしょ」


火の大精霊が2人をなだめる。

命の大精霊と水の大精霊は2人のやり取りを聞いて頭を横にふる。


たった7種しかないにも関わらず話がまとまらない。

その事に悲しい表情を浮かべる水の大精霊。

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