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異世界2日目らボ(4)『職場』

壁も空もない真っ白の世界。

地面にたくさんの額がならんでおり、小さな男がその間を歩いている。


小さな子供が横を通ると額にはめらたパズルのピースが光輝く。

小さな子供はある額の前に座ると、その額にはめられた真っ白のピースが光り輝く。

たった1つのピースが周りのものを一切見えなくするほどの輝きを放つ。


「この子、今回はちょっと危ないかも」


あまりにも強く輝く1ピース。


その1ピースの輝きが、全てのピースを見えなくしていく。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


無機質な金属のような壁で覆われた廊下を賢者に腕を引っ張られて進んでいく。

その壁には、廊下を照らす為のバー状のライトがついており、自分たちが歩くの合わせるかのように、光は白から緑に変わる。


「なぁ、賢者様、今度はどこに向かってるんですか?」


身をよじり進行方向に身体を向けて賢者に尋ねた。


「これからの君の職場よぉ。

 私のために翻訳をしてもらう場所ぉ」


「俺の職場?

 ってことは、これから毎日このラボに通うのか?」


「そうねぇ

 そのつもりだったんだけどぉ

 さっきのを見て、

 私の屋敷で仕事してもらおうかと思っちゃったぁ」


「さっきはすいません」


すぐに賢者に頭を下げる。

ここだったら、毎日通ってもいい。

いや、毎日通いたい。


「いいのよぉ

 君みたいな子は沢山いるからぁ

 

 魔法に科学、それに色々な種族や文化

 ここには君たちが興味を引く物が沢山あるものねぇ」


「ほんと、ごめん。あれは俺が悪かった」


賢者の弟子の顔を横目で確認して、エルフの賢者は手を強く握る。

エルフの賢者は、賢者の弟子の手を離さない。

この世界は、人間たちが興味を引く物が沢山ある。

興味を引くだけならば、何も問題はない。

ただ、その力を悪い事に利用したら。。。


エルフの賢者は、通路の途中にある扉の前で足を止める。


「ここよぉ。

 この通路はみんな同じ壁と扉だからすぐには覚えられないと思うわぁ。


 だから、しばらくは私と一緒にくるのよぉ」


「了解。お姫様抱っこじゃなければオッケーだ」


賢者が扉に触れると、扉の中央に緑色の魔法陣が描かれる、扉がほんの少し下に開くと、何かが挟まったかのように扉が止まった。

扉の向こう側では「やばい!賢者様が帰ってきた。早く片付けろ!」という大きな声が聞こえる。


・・・


「ねぇ

 君みたいな子が沢山いるでしょ」


笑みを浮かべるが、顔に浮かぶ青筋で完全に怒っているのがわかる。


「早く扉を開けるか?

 扉を壊されて入られるか、

 どちらか選びなさい」


賢者が扉の向こうに向かって話すと、「賢者様、今すぐ開けますので少しお待ちください!」と大きな声で返事が返ってきた。


賢者が肩でため息をつく。

そんな賢者を見て、賢者様も苦労してんだなっとほんの少し同情してしまった。


少しすると、扉が下へと動き出す。

開いた扉の向こう側には、何人かの人間がいるのが見えた。

みんな息を切らして肩で息をしている。


いったいこの数分の間で何をやってたんだろう・・・


「おかえりなさいませ。賢者様」


エルフの賢者と賢者の弟子が入ると、すぐに白衣を着た男性が駆け寄ってきた。

エルフの賢者はその男に軽く会釈をすると、部屋の奥へと進んでいく。


「こちらが、賢者様の弟子ですね。

 これからよろしく」


「よろしくお願いします」


白衣の男が手を差し出してきたので、挨拶をして握手する。

白衣の男は、自分より5センチぐらい背が高く、

優しい顔をしている。


「僕も君と同じだよ」


白衣の男は、賢者の弟子に顔を近づけ小声でつぶやく。

その言葉に反応して白衣の男の顔を見ると、

白衣の男は笑みを浮かべる。


この人、何が同じだって言いたいんだ?

自分と同じって何が、ロボットが好きな事?

女に耐性がない事?

元いた世界でぼっちだった事?

もう何をさして同じと言っているのかが、わからない。


「さ〜、中に入ってくれ」


白衣の男に背中を押されて、部屋の奥へと入っていく。

人が座って作業ができそうな机が6つある。


これは、今6人いるか、自分の机がもう用意されて5人いるかのどちらかだ。


「違うわよぉ」


部屋の奥にいたエルフの賢者が振り返った。

エルフの賢者は眉間にしわを鋭い眼光でこちらを見ている。

どうやら、かなりのお怒りモードに入っているようだ。


・・・前の身体の時はものすげぇ、怖かったけど・・・なんか今の身体だと・・・これはこれでかわいい・・・


「賢者様」


白衣の男がすぐに賢者の近くに駆け寄る。


「何があったんだよ?

 そんないきなり怒らないでくれよ」


・・・


「今、この翻訳室は賢者様を合わせても4人。

 今日君が来て5人になるんだよ」


扉が開いと時に見えた白衣の男が賢者と自分の間に割って入って話しをした。


「そうよぉ。君を合わせてもたった5人しかいないわぁ」


エルフの賢者はあきらかに不機嫌だ。

もうこれは何かがあって、この人数だとしか思えない。


「・・・すいません。

 その先の事はまた今度で、

 それを今聞くと、あの人がもっと怒りそうなので...」


これまでの経験上、こういう事は聞いてはダメだ。

だから、聞かない。


「はっはぁ。そういって貰えるとこちらも助かるね。

 君、なかなか良い子じゃないか。

 賢者様も良いのをみつけたね」


一番奥にいた白衣の男がそう言うと、自分に歩みより手を差し出す。


「僕が、ここの責任者。

 って言っても、主任なんだけどね。

 これからよろしく頼むよ」


「あっ、はい。よろしくお願いします」


右手を差し出し、主任と握手する。

主任の手のでかさ、自分の手が子供の手のように見える。

身長もかなり高く、自分より頭1つ出ている。

そして、かなり顔が長い...

こういう人の事を馬顔って言うのだろうか・・・


「それじゃぁ、挨拶も済んだし、仕事の説明をしようか」


主任はそう言い終えるとなんとも不気味な笑みを浮かべた。


「えっ、みなさんの紹介は?」


「この世界では名前はNGだろ?

 だから自己紹介とかはなしっ!


 うっかりして名前を言っちゃう人もいるからねぇ」


「・・・ああ、たしかに、それ自分もやばそうだ」



主任は、両手でパンッと音を鳴らす。


「まずは、この部屋について説明しよう。

 この部屋は、君がきた世界。

 元の世界から持ってきた書物を翻訳する部屋だ。

 他にはDVDを翻訳する部屋や音楽なんかを翻訳する部屋もある。


 この部屋については書物。

 そして、君のする仕事も書物の翻訳という事だ。

 ここまでは理解できたかな?」


主任の目が笑っていない。

もの凄く真剣な眼差しだ。

なんとなく、祖父や父の目を思い出す。


「はい。自分は本を訳すのが仕事って事で。

 しかし、DVDとか音楽を訳す部屋もあるんですね?」


本を訳す仕事という事は、この世界に来る前に聞いていた。

しかし、DVDとか音楽まで訳すなんて、この世界には電気とかもあるという事か...


「ああ、僕らの使う機械が音声認識でね。

 音の出るDVDや音楽は別の部屋でやる事にしている。

 そこの机の上に置かれている機械が

 君の仕事のパートナーの自動翻訳筆者機だ」


主任が机の上に置かれている機械を指さす。


自分には、卓上糸鋸の歯の部分にペンがついているようにしか見えない。

これが、どうやって翻訳をするんだろうか?

主任を見るが、真剣なおもむきで嘘を言っているように思えない。


「これが?」


「君は、その機械に向かって、本を声に出して読むだけでいい。

 その機械はその声を翻訳してこの世界の文字で書いてくれるからね。


 誰にでもできる簡単な作業だろ?」


「声に出して読むだけでいいんですか?」


「ああ、ここにある自動翻訳筆者機がすべてやってくれる。

 この機械はかなり優秀だよ。

 この機械のおかげで僕らもこの世界の文字を覚える事ができたしね。

 いわば、君が文字を覚える為の作業と言ってもいい。

 自分で声に出した言葉が、この世界の文字になるんだ。

 この意味はわかるだろう」


「要するに、自分は本を読み、

 ここに書かれる文字をみて文字を覚えるって事で良いですか?」


「まあ、それでいいだろう。

 賢者様もそれで良いですか?」


主任は、振り返ってエルフの賢者に確認をとる。


「ここでの作業は君に任せるよぉ」


エルフの賢者にも笑みはない。

この2人の間にあるこの緊張感はいったいなんだろう。


「それでは次の勤務時間から仕事をやってもらうとしよう。君の席はそこだ」


主任は、エルフの賢者いる場所のすぐとなりを指さす。


「次の勤務時間からは無理かなぁ。1度元の世界に返すからぁ」


は?もう元の世界に?


エルフの賢者の言葉を聞き、主任はエルフの賢者に視線をむける。


「返すのですか?」


「私が用意したサプライズをダメだしされたのよぉ。

 だからぁ、元の世界に行って説明をしてもらう予定よぉ」


は〜?俺そんな事一言も聞いてないんですけど。

何そのいきなりの予定。


「わかりました。と、

 いう事は賢者様も来られないという事で?」


「もちろんそうよぉ」


エルフの賢者がこちらに視線を送って微笑む。

この笑みはもう決定したという笑みだ。


ーーわかりました。


「それではこれで勤務時間を終了という事でよろしいですか?」


「いいわよぉ」


主任は両手でパンッと音を鳴らすと、肩をがくっと落として振り返る。


「いや、驚かしちゃってごめんよ。

 この世界には夜が来ないからね。

 

 こうやって、仕事をする時間と休憩時間で自分でスイッチを切り替えて、

 自己管理しないと本当に一生仕事し続けちゃうからね」


「えっ、今ものすごい事言いませんでした?

 何、夜がこないって?

 ねぇ、夜がこないって何?」


主任は片手で頭を掻きながら、エルフの賢者に視線を送っている。

その視線を受けたエルフの賢者はすぐに顔を壁に向けた。


「まだ賢者様から聞かされてないんだね。

 この世界には夜は一切やってこない。

 ずっと昼間なんだよ」


「そうそう。だからみんな時間の感覚がくるっちゃうんですよね」


もう1人の白衣の男が会話に参加してきた。


「いや、それマジで初耳ですよ。

 そっかそれで、ずっと外は明るいままだったのか。

 てっきり日が長いだけだって思ってた」


2人は苦笑いを浮かべて、エルフの賢者に視線を送る。


「賢者様のいつもの癖だと思えばいい。

 あの方は、この世界の事を僕らにあまり教えたがらないから」


「ちょっと、それひどすぎじゃないですかね。

 人を強制的に連れてきておいて」


エルフの賢者に視線を送ると、エルフの賢者はこちらに振り返り、


「君とはちゃんと契約したわよねぇ」


エルフの賢者の殺気のこもった視線が賢者の弟子を襲う。

賢者の弟子はその視線を受けてドキッとしたが、

すぐに頭を下げるポーズをとる。

賢者のかわいい顔を見ないで済むように...


なんで、俺だけそうなるの?

差別反対!

パワハラ?であってるかどうかはわからないけど、

他の人と同じに扱って!


「その2人は私と契約してる訳じゃないからぁ

 あまり強く言う訳にはいかないのぉ。


ーーううっ、それあんまり嬉しくない特別扱いですから。


頭を下げるのをやめて、今度はお祈りのポーズで賢者に懇願する。

その姿を見て、エルフの賢者はクスッと笑みをこぼし背を向け椅子に座る。

そんな2人のやり取りをみて、主任と白衣を着た男笑みをこぼす。


白衣を着た優しい顔の男は賢者の弟子の耳元でそっとつぶやく。


「賢者様とうまく言ってるみたいだね」


はぁ〜?これのどこがうまく言ってるの?どう見たっておかしいで


「イッ・・・」


何かが頭に当たった。もう犯人はあの人しかいない。


エルフの賢者をチラッとみるが、背を向けたままだ。


ーー白々しい。わかってんだよ。この魔女が・・・


苦笑いを浮かべる主任と白衣を着た男。


エルフの賢者に向かってあっかんべーをする。


「これでもまだ、うまく言ってるように見えますか?」


白衣を着た優しい顔の男に小声で問いかける。


「もちろん、そう見えるよ」


「もうそれ感性が絶対おかしいから」


主任と白衣を着た男は笑っているが、

何がおかしいのかわからない。

思いっきり、嫌な方の特別扱い受けてんですけど...


「それにしても、主任さんキャラ代わりすぎじゃないですか?」


「これぐらいやらないと、この世界では生きていくの難しいぞ。

 時間って概念がそもそも違うからな。

 あっちの世界だと朝が来て、夜がくるってちゃんと1日があるだろう。


 この世界には、それがないんだよ。

 体力なんかも精霊の力で回復しちゃうから、

 永遠に1日の終わりがやってこない。

 

 明日がやってこないんだから、実際に暮らしてみると結構堪えるぞ」


・・・それって世にいう完全にブラック企業では?

この事で突っ込みを入れると跡が怖いから黙っておくか・・・


「この世界、あっちの世界って事は、主任さんも異世界人?」


「僕もこいつも異世界人だ」


「主任、こいつってひどいなぁ。

 タイラだって言ってるじゃないですか」


「このラボの連中はほとんどが異世界人だよ」


「そうなんですか。

 ならもしかして同じ国の出身かもですね」


「はぁ?君何言ってるの?」


タイラが目を丸くして驚いている。


「えっ?普通に言葉通じてますし」


主任は手で頭を掻きながらエルフの賢者に視線を送る。


「これもまだ話してないんすか?」


「まだよぉ」


エルフの賢者は背を向けたままだ。


2人の顔を見ると、困り顔といった感じだ。


「どうします?賢者様」


エルフの賢者は深いため息をつく。


「話しちゃっていいわよぉ。

 いつかは話さないといけない事だしぃ」


なに?なんの話?ものすごく緊張するんですけど。


主任が自分の顔をじっと見ている。

目が笑っていない。これは真剣な話だ。



最後までお読みいただきありがとうございました。

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