異世界2日目ラボ(3)『白いロボット』
無機質な壁に覆われた非常に大きな空間には、
人が小さく見えてしまうぐらいの大きな人型のロボットが置かれていた。
扉の中に入り、まわりを見渡すと、宇宙戦艦のドッグのような形状だ。
ありえない。こんな物が実際にあるなんて・・・
宇宙でもないのに、宙を浮きながら作業をする作業員。
その作業員たちがなにかやっているのが、まさに憧れのロボットだ。
目本の男の子なら誰でも知っていると言っていい。
まさに男の子なら誰もそのロボットを操縦する事を夢見ただろう。
「いや、これ作っちゃうなんて、
エルフ族って何考えてんだよ。
ここに来るまでに、
いくつか自分たちの世界の物を改良?
デザインを真似た物があったけど、
さすがにアニメの中の物まで作るかよ」
驚きのあまり、エルフの賢者がいる事を忘れて独り言のようにつぶやく。
「ちょっ、エルフの技術はんぱねぇ。
なんなんだよこれ?
エルフの技術力って、こんな物まで作れるのかよ。
だけどさ、これぶっちゃけエルフ族には必要ないもんだろ・・・
どうせ、賢者が俺らの世界で見てこっちの世界で作ったんだろう」
魔法文明の栄えたこの世界で、
機械ロボットなどなんの役に立つだ。
世界を破壊する事も可能な賢者相手に、
このロボットで何ができる?
・・・はぁぁぁ
賢者の弟子は、思わずため息をついた。
「あれぇ。君は喜ばないのかなぁ?」
「いや、すっごい喜んでるよ。
ただ、そのままってダメでしょ!
いくらなんでもひねりも何もなくそのまま作っちゃうとか」
「私が作ったんじゃないからねぇ」
「えっ?!」
賢者は笑顔を浮かべて、宙に浮いてロボットの整備か何かをやっている小さな人を指さす。
「エルフの王子だよぉ」
「エルフの王子?!あのちっちゃい人が?」
「身体はドワーフでぇ、特性はエルフかなぁ」
「何、その男としてはちょっと残念な仕様!」
遠目で見ても、回りで働いている人の半分ぐらいのサイズしかない。
もしかしたら、小人の賢者のようにモテるのかもしれないが、
ちょっと残念な仕様だ。
しかし、まさかエルフの王子がこんな物を作るとは。
この世界、本当に大丈夫なんだろうか?
自分たちの世界より、この世界の将来の方が心配になってくる。
でも、やっぱり目の前にロボットがあると嬉しくなるなぁ。
なんつぅか、これぞ男のロマン!
まさか生きてる間に実物を見る事ができるとは。
・・・運転してぇ・・・
「賢者様、これってもう動かせるのか?」
このロボットがもう動かせるのか、どうしても気になる。
そして、動かせるのなら、ほんの少しでいいから動かしてみたい。
男なら、誰だって同じ事を思うはずだ。
「気になるのぉ?」
「ああ、むっちゃ気になる」
「それじゃぁ、もう少し近くまで行ってみようかぁ?」
エルフの賢者の後をついて、白いロボットに近づいていく。
そして、白いロボットのさらに奥を見ると、赤いロボットがある。
ーーあっ・・・いや、これ絶対あかんよ。
エルフの賢者に気づいたエルフの王子がこちらに手を振っている。
身体を変えて、容姿を変更したっていうのに王子は賢者がわかるんだな。
なんか、ちょっと嫉妬する。
賢者の弟子は、手を振る王子を見て、思わず唇をかんだ。
「嫉妬しなくてもいいよぉ。
王子にこのラボをまかせているからねぇ。
この身体を作った時、王子も一緒にいたからぁ、
王子は当然知ってるのよぉ。
それにしてもぉ
私はこれを見せたらぁ
君がもっと喜ぶと思ってたんだけどぉ」
・・・いや、目の前にもっと驚きの人物がいるし...
今日だけでも驚きの連発でかなり寿命も縮んでんから...
賢者がこちらを見て笑みを浮かべる。
その笑みを見て、顔が赤くなるのがわかる。
ーー観世に魔女だなぁ、もう賢者って肩書きより魔女の方がよっぽどお似合いだよ。。。
手を振っていたエルフの王子がこちらに飛んでくる。
なんか、無重力の宇宙で整備してるアニメのシーンそのまんまだ。
思わず、飛んでくる王子を見て笑ってしまう。
「何を笑ってるのぉ?」
「アニメのワンシーンをものの見事に再現できてたからさ。
俺らの世界ではこんなの再現できないよ」
この世界の住人にしてみれば、空を飛ぶ事なんかはあたり前なのかもしれないが、自分にとってはそれはありえない事。
自分にとっては、ちょっと驚きのワンシーンも、賢者にとっては整備士がただ飛んでいるだけの光景で面白みも何もないのだろう。
「はじめまして、エルフの賢者の弟子くん。
僕がこのエルフの賢者のラボの責任者のエルフの王子です。
これからよろしくお願いしますね」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
エルフの王子から差し出された右手を、自分も右手でぐっと掴む。
なんだかんだ文句をつけているが、目の前の白いロボットをみて興奮してる。
「どうだい、このロボット。
エルフの賢者様が
君達の世界から持って帰ってきた資料を元に作成したんだ」
「いや、マジ凄いんですけど、
自分たちの世界では著作権ってのがあって、
これ完全なアウトな奴ですよ」
「君たちの世界の著作権というは、
この世界でも有効なのかな?」
「それは、ちょっとわかんないですけど。
まず違う世界があるってのも、
自分たちの世界の人たちは知りませんし」
確かに言われて見ればそうだ。
よくテレビでアニメとかみると、最初に著作権についての文章が出る。
あれは、異世界でも有効なのだろうか。
こればっかりは弁護士に聞かないとわからないだろうが、
弁護士に聞いたら、きっと頭のおかしな人と思われる。
「そんなに考え込まなくてもいいよ。
ダメだったらダメで破棄すればいいし。
もしかしたら、権利協力できるかもしれない」
破棄、それはもったいない。
いや、これは絶対にダメな奴だから仕方がないのか?
こっそりエルフの屋敷に持って帰って・・・って俺は何考えてんだ!
「このロボットってぇ、
もう動かせるのぉ?」
「いや、まだ資料が足りてなくて、
人が乗る場所の設計がうまく進んでないんだ」
エルフの賢者の質問に苦笑いを浮かべて答えるエルフの王子。
外観がドワーフ族なので、
かなり愛くるしいのだが、
俺視点でいうと、今は完全にエルフの賢者の方がかわいい。
「資料が足りないって、コックピットの?」
「ああ、エルフの賢者様が持って帰ってきた資料には
そこの部分が少なくてね。
設計が難航している状態だよ」
「へぇ〜。資料があれば、作れちゃうの?」
「もちろん、資料さえあれば作る事ができるよ。
それさえあれば、このロボットも動かす事ができる」
「どんな資料が必要なんだよ?
今度、元の世界に帰った時に必要な資料を買ってくるからさ」
「きみぃ。
さっきまでこのロボットの事ぉ
否定的じゃなかったぁ?」
エルフの賢者のツッコミに、下唇を咬む。
これは絶対にダメな奴だと思う。
例え異世界でもこれはやっちゃダメな。
でも、動かしてみたい。
動かせるなら動かしてみたい。
くそっ、なんてものを作ってくれるんだ。
「エルフの賢者様、あまりいじめてはかわいそうですよ。
協力をしていただけるのでしたら、協力をお願いします。
私たちには1人でも多くの協力者が必要ですので」
「はい。ぜひとも協力させてください」
エルフの王子の言葉につられて協力を約束する。
資料と言ってもいろいろあるだろうし、元の世界に彼らが必要とする資料があるのかどうかもわからないが、このロボットが完成して動く所を見てみたい。
「いや、それにしてもエルフの技術って超凄いですね。
こんなのまで作れちゃうなんて」
「資料さえあれば、だいたいの物は作る事ができるよ」
エルフの王子の横顔をチラッとみたら、嘘を言っているようには見えない。
多分、人間が想像する程度の物は本当に作れてしまうのだろう。
目の前には、男の子の夢のロボット。
その開発に関われるかもしれない喜び。
異世界に来て本当によかったぁ。
これは・・・マジ感動だわぁ。
エルフの王子グッジョブ!
元の世界に帰ったら、絶対に色々な本を買ってこの世界に持ってこよう。
そして、エルフの王子に作ってもらう。
おおおっ、なんか想像しただけでやる気出てきたぁ!
こいつを作った後は、何がいいかな?
もしかして、変身ベルトとかも作れたりするのか?
もしそんなものまで作れるとやべぇよこの技術力!
「きみぃ。頭の中で変な事考えすぎぃ。
それに君が資料を持ってきても、みんなその資料を読んだりできないからねぇ。
君はその資料の翻訳をまずしないとぉ」
「やります。やります。翻訳やります。賢者様の元で翻訳やります」
「きみぃ、意外と現金なところがあるねぇ」
エルフの賢者の表情が一気に曇っていくが、賢者の弟子はどうじない。
目の前には、男の夢、いや男のロマンがある。
もうこれはやるしかない。
「ところで、このロボットって何で動くんですか?」
「魔力だよ」
「えっ?ロボットが魔力?」
エルフの王子の返事に、頭の中が真っ白になる。
ロボットの動力がまさかの魔力。
自分が一切持っていない魔力。
自分の中でいろいろな夢や希望が崩れ去って行く音が聞こえる。
・・・なんでロボットの動力が魔力なんだよ!
どう考えたっておかしいだろっ!
力なく肩を落とす賢者の弟子。
賢者の弟子の顔は絶望のどんぞこに落ちた感じだ。
それを見たエルフの賢者とエルフの王子は小声で話す。
「魔力ってぇ、魔力パック使う予定よねぇ?」
「はい。そうなんですけど・・・」
『何で動くのか』と聞かれて、素直に『魔力です』と答えたエルフの王子。
この返事は間違っていないのだけど、言葉が足らない。
『魔力』と『です』の間に『パック』が入っていれば、賢者の弟子は落ち込まなくてすんだのに...
「ったくぅ。仕方がないわねぇ。
ちゃんと教えてあげてぇ」
エルフの賢者は、手をかかげてエルフの王子に指示をだす。
「あの、魔力と言っても、
このロボットは魔力パックを利用しますので、
動かす人の魔力は必要ないんですよ」
「えっ・・・ほんとっ?」
「はい。本当です。
この大きさの物を動かすとなると、
賢者様ぐらい魔力がないと無理ですからね」
「俺でもちゃんと動かせるの?」
「はい。ちゃんと動かせるように設計しています」
このエルフの王子様。
マジ天使。
俺にとってこの人マジ天使なんですけど。
「イテッ」
後ろから、エルフの賢者の蹴りが賢者の弟子に入る。
「ちょっと、賢者なんだからいい加減すぐに暴力ふるうのやめろよ」
「君は私の物よぉ。エルフの王子の物じゃないんだからねぇ」
「ふんっ・・・あっかんべー」
「子供みたいな事しないのぉ」
エルフの賢者は頭に手を当てて、首を振る。
そんなエルフの賢者を見て、してやったりの顔を浮かべる賢者の弟子。
「ちなみに、剣と銃?
こっちで銃って言ってわかるかな?
あの光りの光線がビューンっと出る奴なんですけど、
それなんかも作れちゃったりしてるんですか?」
「もちろんです。
あの光りは、光の魔方陣を利用して再現できますよ」
このエルフの王子、俺にとって神だ。
異世界で本物の神降臨。
ちっちゃなエルフの王子が輝いて見える。
「もうなんでも言ってください。
なんでも手伝います..¥!”#$%&’()=」
エルフの賢者の蹴りが、賢者の弟子に炸裂する。
興味がある物を見つけると回りが見えなくなる賢者の弟子。
それをもっとも簡単に止める方法をエルフの賢者は実行した。
苦笑いを浮かべて賢者の弟子にかけよるエルフの王子。
苦痛に顔を浮かべる賢者の弟子。
「わたしぃ、君とあってから何回も言ってるわよねぇ」
エルフの賢者の顔に青筋が見える。
肌が白いので、青筋もより鮮明にみえる。
「すいません」
賢者の弟子は、苦痛に顔を浮かべながらあやまる。
悪いのは自分だと、わかっているから。
「それじゃぁ、次に行くわよぉ」
エルフの賢者は賢者の弟子の手を掴み、引きずってラボの通路を進んでいく。
エルフの王子は、そんな2人を見つめロボットの設計変更を決めた。
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エルフの賢者のラボの一室。
部屋の中央に置かれたベッドの上には、エルフの賢者の元の身体が置かれている。
白衣を着た2人の男が話をする。
「主任、賢者様の元の身体って本当に破棄しちゃうんですか?」
困惑した表情を浮かべた1人がもう1人の男に尋ねる。
「馬鹿な事いうなよ。破棄する訳がないだろ。
俺たちが作った身体より、
この賢者様の身体の方が数段優れているんだから」
「ですよね」
「エルフの王もやってくれるよ。
賢者様に身体を変えさせる事で、
賢者様を力を封印させちまうんだから。
賢者様もそれがわかっててそれを了承しちまうんだから」
白衣の男は深くため息をつく。
「俺たちが作った身体じゃ、
強度も半分以下ですし、
賢者様が力を使ったら、身体の方が壊れちゃいますもんね」
「もしもの時にそなえて、この身体はバレないように保管しておけ」
賢者の元の身体は透明なカプセルに移され、ラボの奥へと運ばれる。




