異世界2日目ラボ(2)『赤毛の少女』
目を開けると真っ白な天井が見える。
右手は誰かに握られている。
エルフの賢者だろうか、ゆっくりと握られている手の方向を見ると、
赤い髪の人が手を握ったまま眠っている。
ここからだと、顔も見えず、男か女かもわからない。
・・・誰っ?マジでだれ?
この世界に来て、こんな赤い髪の人と知り合いになった記憶なんて・・・ない。ないはず。きっとない。こんな目立つ赤い髪の人だったらきっと覚えてるはず。
でも、なんでこの人は自分の手を握っているんだろう?
この握られた手をほどいても問題ないだろうか...?
うぅむ...困った。こういった場合ってどうすればいいんだ?
目が覚めたら、知らない人が手を握ってくれていました。なんて、どう対応すればいい?
誰か知っている人がいないかと、部屋の中を見るが誰もいない。
無機質な金属のような壁の中にあるのはこのベッドだけだ。
もしかしたら、ベッドの下に小人の賢者が隠れているかもしれないが、この状態では確認もできない。
とりあえず、この手を離しても大丈夫なのかなぁ?
意を決し、ゆっくりと、そっと、指を一本ずつ手から外していく。
握られた手を解き、両手が自由になった。
よし、これで動ける。
ベッドからゆっくりと降りて、ベッドの下を除きこむ。
もちろん小人の賢者が隠れていないかを確認する為だ。
ベッドの下には何もなく、自分の取り越し苦労だった。
少し移動してドアだろう扉の前に立つ。扉の前に立ってみたけど扉が開かない。
まぁ、当たり前か・・・
横目でチラッと赤い髪の人をみたら、結構赤い髪は長く女性だとわかりそっとしておく。
さて、どうした物か、扉にはドアノブはもちろん、指先を引っ掛けるような場所もボタンもない。
やっぱり、この赤い髪の人を起こさないとこの扉を開けるのは無理なのか...
・・・
・・・
こういう場合って、どうやって起こせばいい・・・?
初めてあう人が目の前に寝ている。
それを起こす方法。
肩を揺らす?耳元で声をかける?頭を軽くはたく?
・・・
壁にもたれて、どうすればいいのかを考える。
この部屋を出る方法もわからない。
誰かを呼ぶ方法ももちろんわからない。
今この部屋の中で、次に進もうと思った場合は、
どうあがいてもこの赤い髪の人を起こさないといけないのだろう。
うぅん。どうやって起こす?
・・・ぬぉぉぉぉぉぉ・・・
頭を抱えて悩み出す賢者の弟子。
「君は、相変わらず心はとってもおしゃべりさんなんだねぇ。」
・・・えっ・・・
声がした方を見ると、赤い髪の人が起きている。
赤い髪の人は、視線があうと、にっこりと微笑む。
「君は見た目でなんでも判断しすぎかなぁ?」
「もっ、もしかして、エルフの賢者様だったり...する?」
固まった表情のまま、赤い髪の人に質問をする。
赤い髪の人は、笑みを浮かべてうなづく。
なにそれ?なんなの?
いきなりイメチェンとかいうレベルじゃないぞ。
顔まで変わってるし、こんないきなり容姿変更?
完全に別キャラになってんじゃん。
そんなの漫画でもアニメでも見たことないぞ!
ラノベでだってないわ!
ってか、そんなのありなの?
こんなのアニメだったら、次の日にクレームの嵐になるか、ネットじゃ大炎上だ。
それにみんな番組間違えたとか言ってチャンネル変えるぞ。
「うるさいなぁ。
ちょっと身体を入れ替えただけよぉ」
「いや、入れ替えたって、
そんなもん俺たちの世界の常識では考えられないって!」
「知ってるわよぉ。
ちゃんと調査済みだしぃ」
「いや、調査済みって、
俺が言いたいのはそういう事じゃなくて」
「この身体いやなのぉ?
君の心の中にある理想の女の子を作ったつもりだけどぉ」
「いや、そうじゃなくて。・・・もうっ」
いや、こんなのってありなのか?
身体を入れ替えるって・・・異世界はなんでもありかよ。
エルフ族ってみんなそんな事できちゃうの?
「みんな可能かなぁ」
「可能なのかよ!」
「エルフ族は、みんな魂に記憶も入ってるしぃ。
君もできるよぉ」
「はっ?俺もできるの?」
「だってぇ、この世界に来てもらった時にやったじゃなぁい」
・・・
・・・そういえば、脳に入っている記憶を転送して...
元の世界には自分の身体がそのまま残ってるんだ。
「はぁ〜?なんで俺の身体はそのままなの?
俺にも顔とか体格とか選ばせてくれよ」
「時間がなかったからねぇ」
「そんな理由?
もしかして、ここにきてる人間って
みんな実際の顔とか身体とか違うとか?」
「違う人もいると思うよぉ。
せっかく異世界に来たんだし、
まったく違う自分になりたいって言う人も多いからねぇ
身元を隠す為とかいろいろな事情で変えてる人もいるかもねぇ」
新しい身体、新しい顔で笑顔を浮かべるダメ賢者。
自分は時間の都合で、元の世界もこっちの世界も同じ顔、同じような身体つきとかマジなんなの?もう少しサービスしてくれてもいいんじゃない?
「きみぃ。良いこと1つ教えてあげよっかぁ?」
「今更なんだよ...」
エルフの賢者は身体を寄せてきて、耳元でつぶやく。
「今回のこの身体は生殖器もつけてもらったわよぉ」
自分の顔が真っ赤になるのがわかる。
もう耳まで熱くなっている。
あかん。あかん。あかん。あかん。女の子がそんな事を言っちゃダメ。
うわぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーー
「壊れちゃったぁ。
テヘッ」
「いやぁぁぁぁぁぁ。返してぇ。もうこんな世界いやぁぁ」
賢者は前は美人で可愛かったのに、
今は完全に可愛い方面に極振り全開の顔に変わっている。
賢者は目が合うと、笑みをこぼす。
その笑みを見ると、思わず自分の鼻の下が伸びるのがわかる。
「もうお願い、そんな顔しないで!」
ドア叩いて、叫ぶが誰も助けはやってこない。
エルフの賢者は賢者の弟子に後ろから抱きつく。
賢者の弟子は背中にはっきりエルフの賢者の2つの大きな膨らみが当たるのがわかる。
「ここも前より少し大きくしてもらったんだよぉ」
もう耐えられない。もう無理。お願い放して。
「ならぁ、こっちを向いてくれるかなぁ」
賢者は賢者の弟子の耳のすぐ近くでつぶやく。
賢者の弟子には、もうこの賢者にあがなう力は残っていない。
賢者の弟子はゆっくりと振り返る。
「きみぃ。ほんっとに見た目だけで人を判断するのはダメだからねぇ」
頬を膨らませ、自分のおでこを指でツンツンと、つつきながら話しをする賢者。
いや、本当に可愛すぎるから距離とって・・・
「しばらくはぁ。無理なのかなぁ・・・」
目をつむり、何も見ないようにする賢者の弟子のすぐ目の前で、
寂しそうな表情を浮かべるエルフの賢者。
「目を開けないとぉ
いけない事しちゃうよぉ」
エルフの賢者は指先でそっと賢者の弟子の唇に触れる。
「*+◇※▲∴÷;¥!」
突然の唇への感触に声にならない悲鳴を上げて、座りこむ賢者の弟子。
賢者の弟子は、唇を自分の指でぬぐって、
何回も自分の指先とエルフの賢者の唇を見ている。
そんな賢者の弟子を姿をのぞき込み、笑みを浮かべるエルフの賢者。
「ねぇ。目を開けてないと何されるかわからないよぉ」
・・・
「それじゃぁ。ラボにいこっかぁ?」
エルフの賢者は賢者の弟子の手を取り、ドアに触れる。
ドアは自動的に開き、通路へと道が開いた。
エルフの賢者は賢者の弟子の手を引っ張って通路を歩く。
「きみぃ。
もしかしてお姫様抱っこされたいのかなぁ?」
「いっ、いや、そんな事考えてません」
顔を赤くして答える賢者の弟子。
質問と返答に若干のずれ。
エルフの賢者は笑みをこぼして、賢者の弟子の手をひっぱる。
「君がとっても喜ぶ物がこの先にあるからねぇ」
エルフの賢者に手を引かれて、エルフの城の中にあるラボの通路を歩く。
手に汗をかいているのがわかる。
心臓の鼓動が激しい。
きっと体温も高いだろう。
がらりと容姿を変えた賢者。
もう正直、話してみないとわからない状態だ。
身長も高くなっている。
なぜ、こんな容姿を変更する必要があった。
ただの気まぐれか...これもありえるよな...
もしかしてよく容姿を変えてるのか...
でも、容姿をそんな何度も変えていたら、街の人は挨拶できないだろう。
なぜ・・・
「ついたわよぉ。
ここには君がずぇったいに喜ぶ物があるからねぇ」
賢者は満面の笑みを浮かべる。
その賢者の笑みをみると、どうしても・・・かわいい・・・と思ってしまう。
「今夜のマッサージは楽しみだねぇ」
「;¥!”#$%&’(」
想像すると意識が飛びそうになる。
そうだ。そんな約束してた...
「それでは、扉を開けるねぇ」
賢者が扉に手を触れると、扉が自動で開く。
扉が開いた瞬間、自分はここが夢の中だと思った。
異世界のエルフの技術...これ絶対ダメな奴だろ。




