異世界2日目エルフの城(2)『地下』
「やっぱり、落ちましたね」
ノヴァは苦笑いを浮かべ、となりを歩くエルフの賢者に言う。
「簡単に予想できた事よぉ」
ノヴァは短く鼻で笑う。
別の世界から来た人間は、賢者の弟子でなくても、このお城の広間に来ると興奮して勝手に行動を始める。お城の中という事で、安心してしまうのだろうか。お城の中だからこそ侵入者に対する罠が沢山仕掛けてあるというのに。
なので、賢者の弟子の前に、多くの人間がこのお城の中の罠に引っかかっており、今では罠にかかっても死なないように工夫が施されていた。
「助けに行かれますか?それとも出口で待たれますか?」
「助けに行ってくるわぁ」
賢者はノヴァにそう告げると、
持ち上げていた小人の賢者を地面に下ろす。
「あなたたちはノヴァちゃんと一緒に出口で待っててねぇ」
賢者は振り返り金髪の少女と銀髪の少女の2人に指示をだすと、2人は「かしこまりました」と頭を少し下げて歩き始める。
「僕もいくよぉ」
下ろされた小人の賢者は、エルフの賢者より先に罠の張ってある魔方陣に駆け込み姿を消す。
「それでは、出口でお待ちしております」
ノヴァはエルフの賢者にそう告げると、ミエを抱えたままで一礼する。
エルフの賢者はゆっくりとした足取りで賢者の弟子と小人の賢者の後を追った。
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暗闇の中、前にむかって手を伸ばして足を進める。
もうマジで勘弁してほしい。
なんで、自分はこう真っ暗な所にいないといけないんだ。
頭の中で、暗闇の恐怖に負けないように楽しかった事を思い出そうとするが、
楽しかった思い出というのが思い出せない。
携帯があれば、マッチがあれば、ライターがあれば・・・
もうやだ、この世界。
少しずつ前に進んでいくと足の指先が何かに触れる感触がした。
段差?階段?
暗闇の中、1歩の歩幅はかなり狭い。
段差なのか階段なのかわからない。
足を高く上げて、その当たった物を軽く踏みつける。
「#$%&’()=◎〜|」
言葉ではない、高い音の声。
腰を抜かして後ろに倒れて尻餅をつく。
こんな所にいる生き物と言ったら、もう危険な生物しか想像できない。
ここにきた生き物を食べて暮らしている獣。
頭の中に蛇や爬虫類系の生き物がめぐる。
腰が抜けて動けない。
マジでやばい。
このままだと、ここで喰われて自分の人生終了だ。
叫びたいけど、声がでない。
・・・
「あんた何?私の事踏んでおいて、何固まってんのよ?」
暗闇の中、聞こえてくるのは高い女の声。
・・・はい?なに、この世界は化け物とかも普通にしゃべるの?
言葉を返したいが声もでなければ、腰も抜けて動く事もできない。
・・・
「ちょっと何かしゃべりなさいよ」
明らかに女の声は怒っている。
声が出るなら、すぐにでも謝りたい。
でも、声がでなくて謝れない。
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暗闇の中、自分の物を探すエルフの賢者。
この場所はエルフ族の城の地下。
一切光の届かない闇の地下空間だ。
弟子が入った場所と同じ魔方陣から入った賢者は、暗闇の中で、耳の機能を強化する。
機能を強化すると言っても、身体を強化できる訳でない。
風魔法を利用して、空気の振動を増幅、わずかな震動もエルフの耳の近くでは大きな震動に変わる。
耳に入る鼓動の音は全部で4つ。
1つは自身の鼓動、もう1つは小人の賢者、そしてもう1つは自分の物、もう1つは。
エルフの賢者はもう1つの鼓動の音を確認する為に、足を前に進める。
少し進むと小人の賢者が立っている。そしてそのもう少し先に2つの鼓動があるのがわかる。
エルフの賢者は、小人の賢者が立ち止まっている事が気になりそこで足をいったん止める。
「なんでぇ、そんな所でたち止まってるのかなぁ?」
賢者は、2つの鼓動に聞こえないように精神体で小人の賢者に問いかける。
「僕が来た時には、もうこの状態だったんだ。
何があったのかわからなくて、出るタイミングを失っちゃってねぇ」
エルフの賢者は、空気の振動で2つの鼓動の状況を確認する。
小さなスカートをはいた物体の前で、
賢者の弟子が尻餅をついたまま固まっている。
エルフの賢者は深くため息をつく。
ため息に気がついた小人の賢者が申し訳なさそうに言う。
「ごめんね。うちの子が・・・」




