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異世界2日目エルフの街(1)『同族嫌悪』

「それじゃあ、お城までいくわよぉ」


「はぁい」


エルフの街の壁の小屋の前で小人の賢者が愛くるしい返事を返す。

ここまでくる間にエルフの女性陣たちに囲まれ、そのたびに銀髪の少女と金髪の少女が間に入って、自分たちを先に通した。

小人の賢者の笑顔に倒れるエルフの女性陣。

この賢者、狙いすぎだし、この笑顔を振りまいていけばみんな倒れてもっとスムーズに進めるのではないかと思ってしまう。


「もうそろそろ、下ろしてあげてもいいんじゃない?」


今日はエルフの屋敷からずっと賢者におんぶされた状態でここまで来ている。

大精霊に狙われているという事もあり、承諾したけど超はずかしい。

小人の賢者から思ってもみなかった助け船に、心の中でほんの少し感謝した。


「できれば、初めてくる街だし、自分の足で歩きたいかな」


・・・



おんぶされていると、賢者の顔が見えない。

顔が見えない相手とのやりとりは、マジでドキドキものだ。

小人の賢者をチラッとみると、小人の賢者は笑顔を浮かべている。


「仕方がないなぁ」


おっ!賢者が折れた???

太ももにあった、賢者の腕の感触が緩み、ゆっくりと地面に足が下ろされる。

久しぶりに足の裏が体重を受け止めている。

地面の感触だ。


「ただしぃ。あのちびっ子が騒ぎを起こしたらぁ」


「わかってます。わかってます」


何をいうかはもうわかっているので、最後まで言わせない。

言わした後の表情が怖い。


「それじゃ一緒にいこっか?」


小人の賢者が自分の右手を掴んで歩き始める。


えっ!おまえ馬鹿じゃない?!?!


気づいた時にはもう遅い。

背後からただならぬ気配を感じる。


が、怒られない。


振り返ると、エルフの賢者の姿がない。


「どっちみてるのぉ?」


あっ こっち。自分のすぐ左側にエルフの賢者は立っていた。

左手をエルフの賢者に掴まれて、右手を小人の賢者に掴まれている。


昨日、服の袖を掴まれていた状態と同じだ。

心臓の高鳴りは容赦がない。


建物の中、金髪の少女が先頭を歩き、後ろには銀髪の少女が歩いている。

自分とエルフの賢者と小人の賢者の3人は横に並んで街の入り口に歩いて行く。

見た目には、この3人なら兄弟に見えるのか。

いや、それはない。2人と自分とでは容姿が違いすぎる。


横目でチラッと回りを確認すると、

エルフの男性陣と女性陣の両方から視線を受けている。

あきらめのため息をつき、前を向く。


扉の前で金髪の少女がたち、2人の足も止まる。それに合わせて、自分も足をとめた。エルフの賢者が扉のすぐ横にあるボタンを押している。


ん?もしかして、


「もしかして、そのボタンで行き先とか決定できちゃったりしちゃうの?」


「そうだよぉ」


「まさかとは、思うけど、いきなりお城到着・・・とか?」


賢者は驚いた表情を浮かべる。


「それでいいのぉ?


 わたしぃ、街を歩いていくつもりだったけどぉ」


「はい。街をものすっごくみたいです」


読み間違えた。そんな自分を見て、小人の賢者は肩で笑っている。

手をつないでいなかったら、物理攻撃してただろう。


扉が開き、小人の賢者にひっぱられるように建物の外にでる。

もうここはエルフの街。


見渡すと、ここはエルフの商店街のような所のようだ。

建物はヨーロッパのようなデザインで色が暖色系で統一されている。

地面は、レンガのように見えるが、弾力があり強く踏むとゆっくり沈む。

衝撃吸収材のようにゆっくりと元の形に戻る。

なんか凄い。

このレンガのような物って何でできてるんだろう。

自分たちの世界でも、こんな道路にしてほしい。

これだったら、転んでも痛くないだろうし、怪我もしなくてすみそうだ。


「君、なんで街に入っていきなり座り込んでるんだい?」


「いやだって、この地面すごいじゃん」


ドワーフ族の小人の賢者は背が低い。

自分がしゃがみこむと、ちょうど真横に顔がくるぐらいだ。


指で、地面をへこませては、戻るのを確認する。

つまめないかと、頑張ってみたが、摘まむのは無理だった。


「君ってぇ

 こういうのにも興味があるのぉ?」


「おお、やっぱり自分の知らない物って興味わくじゃん」


「ふぅん」


子供のように地面で遊ぶ男を、エルフの賢者は笑顔で見ている。


街の入り口で、一番身長が大きな男が地面で遊び、2人の賢者が笑みを浮かべる。


「そんなところで油を売っていてよろしいのですか?」


金髪の少女が、エルフの賢者に尋ねたがエルフの賢者はすぐに手で静止の合図を送り、金髪の少女は一歩下がる。


金髪の少女はあきらかに不満な表情を浮かべて周りを見渡し警戒している。


そう、これはいわば必然である。

誰もがこの先を予想できるだろう。


命の狙われる賢者の弟子。

だが、それ以上に危険な人物がここにいる。


こんな場所で、小人の賢者をしばらく立たせておけば、

エルフの女性陣が集まらない訳がない。


最初に気づいたのは、小人の賢者。

小人の賢者は、賢者の弟子の顔を見て困った表情を浮かべる。

その愛くるしい困った顔を見て、

何を勘違いしたのか賢者の弟子はつないでいた手を離し、

小人の賢者の頭をなでてあげる。


どこかで何かが倒れる音がして、

男を見ていた美人の女性がその音の方向を向く。


時すでに遅し。


3人を取り囲む、エルフの女性陣。

その女性陣の多さで、金髪の少女も銀髪の少女も3人から離れた場所に追いやられてしまう。

2人はエルフの街の住人には一切手が出せない。

その契約がここでの防衛の障害になっていた。

もちろん2人の賢者と賢者の弟子も、ここから逃げ出すのはかなり困難である。


エルフの賢者は、小人の賢者に目で合図を送る。


一瞬にして上空に舞い上げられた賢者の弟子。

賢者の弟子が上空に舞い上げられた事で、エルフの女性陣の視線は上空に。

その隙を、小人の賢者は見逃さない。

小さな身体を生かして、女性の足の間をすり抜ける。

エルフの賢者は、空に飛び、上空に舞い上がっている賢者の弟子をキャッチ。

そのまま女性陣の壁を越えていく。

着地点には、小人の賢者が待機しており、片手でそれを受け止める。


ほんの僅かな、時間にして2秒程度の出来事だろう。


女性陣の壁を越え、駆け抜ける小人の賢者。

小人の賢者の片手には、エルフの賢者が賢者の弟子をお姫様だっこで抱えている。

金髪の少女が道を作り、その道を小人の賢者が走る。


金髪の少女だけでなく、誰もがわかっていた事だった。

わかっていたのに・・・


どうやら俺もこいつらと同類だったみたいだ。



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