異世界2日目の朝(2)『金髪と銀髪の少女』
壁も空もない真っ白の世界。
白い床には沢山の額が並んでいる。
額の大きさはまちまちで、大きな物もあればかなり小さな物がある。
額にはパズルのピースのような物がはまっている。
そのピースは不思議な事に、真っ白な物もあれば、人の顔、動物、物、などいろいろな物がプリントされたピースもある。
「あいかわず、ひどい性格ね」
「ちょっとだけ、見てみたかったんだよ。
エルが選んだこの子がどんな行動をするのかをね」
「それにしたって、誰もいない世界を作って、
この子だけをその世界に入れるなんて酷いにもほどがあるわよ」
「そうかなぁ
もしこの子が成長したら、
この子はそういった世界で暮らしていくことになるかもしれないんだよ。
誰にも真実を言う事はできない。
すべての人に嘘をつき続ける虚構の世界でね」
男の子は寂しそうな笑みを浮かべて少女を見る。
少女は目をつむりうなずく。
「この子の額はもう少し大きくした方がいいのかな?」
「そうねぇ。エルがこの子の運命を変えちゃったからね」
額は、光り放ち大きくなる。元の大きさの3倍くらいの大きさとなる。
「これぐらいでいいかな?」
大きくなった額には沢山の真っ白なピースが浮かび上がってくる。
その真っ白なピースが2つ輝き始め、だれかの顔がプリントされる。
「今度はこの2人みたい」
「この子の驚く顔がもう思い浮かぶよ」
「賢者の物さん、もうそろそろ起きてくれませんかね?」
「賢者様の物が本当にこんなぐうたらな男でいいのかしらぁ
チェア、もう叩き起こしてあげなさい」
どこかで聞いたことがある声が耳に入ってくる。
とてつもなく嫌な夢を見たような気がするが、何度思い出そうとしても夢の内容を思い出せない。あと少し寝ていたい。あと少しでいいから。
「ふぎっ」
何かが自分の身体にのしかかったきた重みで、思わず声がでる。
パッと目を開いて、自分の身体にのしかかってきた物がなんなのか確認すると、光を綺麗に反射する銀髪のかわいい少女がこちらをじっとみている。
「・・・どっ、どちらさまでしょうか?」
可愛い女の子が、自分の顔から50cmも離れてない所にあるのだ。
起き上がることもできずに、その少女に尋ねると少女はにこっと微笑んで顔を近づけてくる。
「ちょっ、ちょっと近い、だれきみ?きみはいったい誰なの?」
少女に質問をしながら、身体を少し起こして後ろに後ずさりする。
もちろんすぐに壁にあたって、ほんの少ししか距離をあけられないが、状態が少しあがったことで、少女が来ている服がメイド服である事と、銀髪の髪の毛はセミロングぐらいなのがわかった。
そして、少女の少し後ろには同じように光を綺麗に反射する金髪でセミロングのメイド服を着た少女が立っている。
銀髪の少女と金髪の少女は瓜二つで、髪の毛の色が違う事ぐらいしか見た目ではわからない。
「あの、本当にどちら様ですか?」
銀髪の少女と金髪の少女の2人を交互に見て尋ねると、金髪の少女が意地悪っぽい笑みをこぼす。
「僕たちの事、わかりませんかね?」
「えっ?」
銀髪の少女が、少し聞き慣れた声で聞いてくる。
まさか、そんなわけはないよなぁ・・・
「僕はチェアですよ。後ろに立ってるのはデスクです」
「・・・チェアとデスクゥゥゥ!!!」
2人の変わりように驚きのあまり、指差して叫び声をあげてしまった。
・・・いや、おかしい。おかしすぎるだろ。
昨日はだって、ごく普通?普通ではないんだけど、椅子と机だったじゃん。
それがなんで1日たったら、こんな可愛い女の子になってんだよ。
しかもメイド服とか。。。
「おかしな事は何もないわ。
この身体は賢者様が用意してくれた機械人形。
私たちはあなたに合わせるように言われて、
この機械人形に入ってるだけだわ」
「・・・これおかしくない事なの?いや、誰がどう考えたっておかしいよ」
「本当にあなたは見た目にこだわりなのよ。
机からあなたと同じ人間の姿に変わっただけじゃない。
ただそれだけの話なのに、何大げさに言ってるの?」
「いやいや、机から人間ってもんのすごい違いがあると思うよ俺は。
そんな「当たり前のことでしょぉ」みたいな感じで言われても、
とてもじゃないけど、受け入れるには時間かかるって」
「僕のこの姿が嫌でしょうか?」
自分の上に跨った状態で、銀髪の少女が悲しげな表情で話す。
自分はその表情を見て思わずつばを飲み、両手で「いやいやそんなことはないですよ」とジェスチャーをした。というか、むしろ嬉しい。。。
「いや、あのね。そのぉなんだ、女の子にこんなふうに自分の上で跨がれると・・・」
最後まで言う前に、後ろに立っていた金髪少女の周りが白く輝き、その輝きの中から氷の刃が自分の顔面すれすれを横切り壁に突き刺さった。
「私のチェアに対して、そういう不謹慎な妄想はやめてちょーだい」
金髪の少女の目にははっきりと怒りのが見える。
これは本当にやばい奴だ。これ以上は決して口にしてはいけないし、考えてもいけない。
「と、とりあえず降りて説明してくれるかな?
俺、この世界に来て2日目で、本当に何もわからないだよ」
金髪の少女の表情をチラチラ確認しながら、自分に跨っている銀髪の少女に話す。
銀髪の少女はわかったとうなずき、後ずさりしてベッドから降りて金髪の少女のとなりに立った。後ずさりをしている時に、少女の胸元がチラチラと視界に入り、金髪の少女の暑い視線も同時に入っていた。
「君が昨日まで椅子に入っていた精霊で、
君が昨日まで机に入っていた精霊で、
あってる?」
自分もベッドから起き上がり、一人ずつ指差して確認すると、銀髪の少女も金髪の少女もその都度「はい」うなづいてくれた。
「で、なんで今日はそんな格好でいるわけ?」
「賢者の物様は、物覚えが悪いみたいですね。
昨日も私はもちろんチェアも利用がなかったですし、
もう一度申し上げますが、これは賢者様のご意向で私たちの意思ではありませんわ」
まるで汚物を見るような目で自分を睨みつけ、金髪の少女は嫌味たっぷりに答えてくれる。
今にもつばを顔面に吐きかけてきそうなぐらいだ。
銀髪の少女は、そんな金髪の少女の話を聞きながらオロオロしている。
「わかった。
その姿の理由は賢者様の命令ってことね。
でも、そんな姿をコロコロ変えたりとか精霊は簡単にできるの?」
昨日まで机や椅子だった精霊が、次の日の朝に可愛い少女に変わるなんてのは、自分の知っている異世界物の物語の中でもそうそうない。いや、そんな話聞いた事がない。かぼちゃが馬車にかわったり、ネズミが馬にかわる事があっても、椅子と机が少女なんてのは。
「この体は機械人形だから、
僕たち以外の精霊でも簡単に利用できるんですよ。
今日は僕らが利用してますけど、明日はカップやポットが利用しているかもです」
「ああ、あのエルフの街で見た機械人形・・・」
でも、可愛すぎじゃない?なんかこの世界のデザインにしては、メイド服といい顔のデザインといい、自分たちの世界の物が含まれているような・・・
「ふんっ、そんな事いちいち気にするなんて、
あなたはよっぽど、目に入る情報が大切みたいね。
もしかして、見た目でしか人を判断できないタイプなのかしら」
「いや、さっきも言ったけど見た目変わりすぎだって。
だいたい、俺たちの世界は精霊がいないから、机も椅子も話さないし。
人間以外とか会話?、コミュニケーション?できないから」
「ちっさい男ね」
・・・ちっさい男って言われても、この変化は誰だって気にするだろ。。。
「とにかく、賢者様を待たせてる状態なんだから、
早く支度してくれないかしら」
「・・・わかった。着替えるから、一度外に出ていってもらえるかなぁ」
頭を片手でかきむしりながら、金髪の少女と銀髪の少女を見て話すと、金髪の少女は目を細めて呆れたといった表情になった。
「精霊に性別なんて物はないのよ。
性別はあくまでも物質的な物でしかないの。
それにその身体はもともとあなたの物じゃないし、
その身体の裸なら何度もみてるわ」
物質的な物でしかないって言われても、見た目が女の子なんだから恥ずかしいに決まってるだろっと心の中で呟く。
銀髪の少女がタンスから服を取り出し、着替えを手伝ってくれる。
「でも、昨日は精霊の力で服簡単に変えられたのに、
今日はなんで着替えるんだ?」
「日常的な行動で、その身体に慣れてもらう為ですよ」
銀髪の少女が、自分のズボンの裾を調整しながら話してくれる。
「この身体になれる為って、そっかぁそういえばこの身体もおまえらと同じ機械人形みたいなもんだしなぁ」
銀髪の少女の表情が一瞬曇ったかのように思えた。
もしかして、これは口にしてはいけない事だったのだろうか?
精霊が機械人形に入っているように、自分もこの世界では借り物の身体に入っている。この身体は機械人形ではないのだろうか?
ふと、2人をみてこの身体の正体に対して疑問を持ってしまった。
ズボンの裾を直し、上着を着せてくれる。
銀髪の少女は背が低く、自分に上着を着せてくれる時、必死に背伸びをしている姿が非常に可愛らしい。
もし、自分たちの世界にこんな少女がいたら絶対にもてるだろうなぁ。
鏡を見て、自分の姿を確認すると結構いい感じの男に見える。
鏡の中の自分と銀髪の少女。結構いい感じなのでは?
とかついつい思ってしまった。
着替えを銀髪の少女が手伝ってくれている間、金髪の少女は椅子に腰掛けカップにコーヒーを入れ、ゆっくりとくつろいでいた。




