異世界初日(14)
緑の光の粒とともに、地面に魔方陣が浮かび上がる。
黒で統一されているこの空間では、この光の粒は本当に綺麗だ。
白い部屋では綺麗は綺麗なのだが、
この黒の部屋では、その粒の1つ1つが輝いて見える。
精霊の光。
自分達の世界では一切みる事ができない神秘の光。
魔方陣から浮かび上がる緑色の光りの粒。
魔方陣は覚えれば使えるらしいから、絶対に覚えよう。
緑の光の粒に見とれていたら、
浮き上がるような感覚に身体が支配される。
転送中の真っ白な白の世界。
正直、転送中の風景は、国民的アニメのタイムマシーンのような世界を想像していた。
しかし、ここは全く異なり、光の世界にいるような感覚だ。
もしかしたら、光の世界に行き、光の速度で移動しているのかもしれない。
「はずれよぉ
ここは物質と精神の狭間の世界」
「あっ、ひっ、
・・・
ちょっといきなり心の中読んで話かけてくるのは、マジでビビるからやめて
で、狭間の世界ってなに?」
「私達が住む物質世界とぉ。
精霊が住む精神世界との間。
もし、君が光りの世界に行ってもぉ
すぐにはじきだされちゃうわぁ」
「光の世界ってそんなのなの?」
「光は闇を嫌うのぉ
何かが存在すればそこに陰が生まれるわぁ。
光は自分を遮る存在を許さないわぁ。
光はぁ、とっっっても傲慢だからねぇ」
白い世界が崩壊していく。崩壊の先に見えるのは空?
空中に賢者と2人でたっている。
ただ、空を散歩していた時はあきらかに違う。
足の裏に、自分の体重を感じる。
少し先に人が3人いるのがわかる。
1人は一番最初の白い部屋にいた係員で、
1人は白い部屋で待たせてしまった人。
もう1人は多分あった事がない女の子だ。
「私の予想ではぁ。
あの装置で君を測るのはちょっと無理かなぁ」
賢者は3人を見ながら笑みをこぼす。
「どうゆう事?」
「あの装置はぁ。
普通の人向けの安物なのぉ。
だからぁ、精度が悪いのよぉ」
「そういう事ね。でも今日部屋でタンスに魔力がないって言われたぜ」
「そうよぉ。
だからあの装置で測ると間違いなく0(ゼロ)ってなるわぁ。
今もっと良い測定器を呼んだわよぉ」
賢者のこの笑みは、自分にとっては悪い意味の笑みだ。
「そんなに俺の魔力って少ないの?」
賢者に質問すると、賢者は自分の右手を取っていう。
「君の世界でぇ。
君の身体に魔力を供給したのをおぼえてるかなぁ。
あの時、計ろうとしたのぉ。
でも全然計れなかったわぁ。
そういう場合はぁ
もの凄く少ないか空っぽのどちらかなのぉ」
「それで、今俺の右手を握ってくれてるのは、
魔力を供給いてくれてるの?」
「今も調べてみたけどぉ
全然反応なしだったぁ」
少しは花を持たせる為に、
魔力を供給してくれるかと思ったが、
やっぱりこの賢者にはそういうのを求めてはいけないらしい。
そういった優しさは、この賢者は持ってはいない。
「終わったみたいねぇ」
係員がこちらに急ぎ足でむかってくる。
「賢者様、お待たせいたしました。」
「良いよぉ」
賢者がめずらしく笑顔で対応している。
もう怪しくて見てられない。
賢者は係員と小声で話をしている。
何を企んでいるのやら。
測定を終えた2人がこちらに向かって歩いてくる。
「待たせちゃってすいません」
眼鏡をかけた女の子が駆け寄ってきて頭を下げて声をかけてくれる。
こういう時の受け答えが、コミュニケーション不足の自分には厳しい。
特に相手が異性の場合、緊張感も半端ない。
「あっ いや、ぜんぜん待ってないですよ」
思わず、最初に『あっ』と付けてしまった。
「もしかして、賢者様の弟子になられた方ですか?」
やっぱり賢者は有名なのだろう。
この質問はある程度予想できていた。
これからこういう質問を何度もされるんだろう。
有名人のお弟子さんとかもやっぱり大変なのだろうと勝手に想像してしまう。
「・・・はい。なんというかなりゆきで」
「賢者の弟子という事は、あなたも異世界から来られたんですよね?」
「えっ。あなたもって?」
「はい、私も。。。もしかして、今日が初めてですか?」
「えっ・・・はい。」
「私も今日はじめてこの世界に来たんです。
魔法って本当にすごいですよね」
「はい。」
なんだろう。さっきから悪寒が走る。
ちらっと、賢者の方に目を向けると、
不機嫌そうな表情を浮かべる賢者がそこには立っている。
ーーただの挨拶ですよ。
心の中で賢者に弁解をする。
「すぐにいくからぁ
まっててねっ」
頭の中で賢者の声が聞こえる。
あぁ、この先の未来が想像できる。
「こんにちわぁ
私がぁ エルフの賢者でぇ。
この男の子はぁ 『エルフの賢者の物』です!」
ーーおいおい、語尾強い。いつものしゃべり方じゃないよ。
ーーその話し方、完全に威嚇はいってる。
「初めまして、今日からこの世界でお世話になります。
略称は、ミエです。
エルフの賢者様、これからよろしくお願いします」
「よろしくねぇ」
エルフの賢者は女の子に右手を差し出し、女の子と握手する。
「それでは、失礼します」
女の子は、一緒にいた人を追って駆けていく。
初対面の異性との挨拶。
やっとその緊張する空間が終わってほっとする。
手の平にはもの凄い汗をかいている。
賢者の顔を横目でチラッと見ると、賢者も横目でこちらを見ていた。
目があって、ドキッとしてしまう。
「ありがとうございます。賢者・・・様」
「君が困った時はぁ
私が助けるって言ったでしょぉ」
賢者の声を聞いて、鼻で笑ってしまう。
ほんとうに、自分はダメダメな人間ですな。




