異世界初日(13)
・・・おかえりなさい。
真っ黒の部屋に入った瞬間、ふと耳にした言葉。
賢者の顔をチラッとみたけど、表情の変化もないし、
賢者には聞こえてないのだろうか。
「ここで、ある素質を測定するからぁ。
水の精霊はいったん私の所に返してもらうねぇ」
賢者がそう言うと、身体の中から、
青い光の粒が少しずつ出て、
ゆっくりと賢者の手の中に帰って行く。
「水の精霊さん、ありがとなぁ。」
水の精霊の姿とか、そこにいるかはわからないけど、
感謝の言葉を声にする。
ぶっちゃけ、水の精霊に対してできる事と言ったら、感謝を口にする事ぐらいしかできない。
真っ黒のこの空間の中央なのだろうか、ひときわ目立つ白く輝く球体が見える。
多分、さっきと同じような測定方法なのだろう。
その白く輝く球体を見ていると、まるでこっちにおいでと言っているように感じる。
一歩足を踏み出し、白く輝く球体に近づいていく。
振り返ると賢者も自分の少し後ろを歩いてくる。
自分が前を歩き、賢者が後ろを歩くというは、ちょっと自分としても不思議だった。
今までにはない違和感を感じつつ、白く輝く球体の前に立つ。
「これって、どうすればいいの?係の人もいないみたいだけど」
眉間にしわを寄せていた賢者の顔が笑みに変わる。
・・・ここで、賢者が笑み変わるって事は、自分が人より劣っている事が証明された訳ね。
「黙ってないで、教えてくれよ。
この調子だと、街までたどりつけないだろ」
「さっきから、ずっっとそこに精霊が立ってるわよぉ」
右を向いても、左を向いても誰もいないし、
精霊の光の粒も一切見えない。
もしかして、バカにされてる?
ついさっき、水の精霊の青の光の粒ははっきり見えたんだし、
精霊がいるのなら、光の粒が見えない訳がない。
どういう事だろう。
「ここにいる精霊は闇の精霊よぉ。
闇の系統の素質がある人はぁ
その精霊の光の粒を見ることができるのぉ
君が光の粒が見えないって事は、
闇の精霊の素質は一切ないっていう証明なのよぉ」
なるほど、見える人と見えない人って事で素質を確認してるんだ。
しかし、見えないというのも残念だ。
闇の精霊の光の粒って一体どんな風なんだろう?
そもそも闇が光っていいのか?
闇の精霊の光、興味が湧いたが見えない物は仕方がない。
ちょっと口惜しいけど、素質がないのなあきらめるしかない。
「もうそっちに戻っていいの?」
「ええ。闇の精霊は何でも食べちゃうからぁ
早く戻ってこないと、危ないかもぉ」
ん?それってかなり危ないんじゃない?
賢者がものすごく危なそうな事を笑顔で言っている。
うん。こいつはこういう奴だった。
走って賢者がいた場所まで移動すると、
「おつかれさまぁ」
と笑顔で声をかけてくる。
「おまえはやる前に説明するって事を知らないのか?」
「やらないと、身にならないでしょぉ」
賢者は人差し指を立てて、自信の口元に当てる。
その行動がなんなのかわからない。
深呼吸をして息を整える。
すべてが黒にそめられた、闇の素質の試験の場。
白く輝くあの球体の近くに、闇の精霊がいるらしいのが、
自分は素質がなくて、見る事ができない。
もし見えたとしたら、どんな姿なのだろう。
一度でいいから見てみたい。
「それじゃぁ、次に行きましょうかぁ?」
賢者の声と同時に、自分の頭の中に「またねっ」という声が聞こえた気がした。




