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この世界にはかつて魔王がいたらしいんだよね。
これはエルネシアの記憶もだけど、与えられた宗教関連の本の中にも書かれていた。
まあ、この世界の子どもに聞かせるおとぎ話や神話みたいなものかなとも思うけどさ、完全な創作、というわけではなさそう。
かつて魔人と人類がこの世界の覇権を争っていた。
……魔人って何?
よくわからないけど、魔人が優勢になっていたが、大神から人類に権能が授けられらしい。
それが『勇者』『剣聖』『弓聖』『狩人』『暗殺者』『魔術師』『癒し』。
ねえ、『癒し』っておかしくない? 『聖女』とかさ『僧侶』とかが普通じゃない?
それに『暗殺者』って何?
たぶん、この世界の言葉を私の記憶が勝手に日本語へ翻訳しているんだと思う。
「暗殺者」も本当はもう少し違う意味なのかもしれない。
まあ、分からないことは保留。
それで、無事に権能を授かった勇者パーティー七人が魔王を討伐して、人類が勝ったんだけど、その権能は強すぎる。
そうだよね、魔王を倒しちゃうんだもん。これさぁ、人類も討伐と言うか、世界制覇できるくらいの力なんじゃない。
とはいえ、魔王が再誕する可能性もあったりするらしく、でも、特定の個人の力が強すぎるのは災いがあるっていうんで、七つの権能をそれぞれ十から二十くらいに分割して(どうやって? とか聞かないでね、私も知らん)、その後の人類にも引き継がれることになったらしい。
これは遺伝ではなく、乱数。
国も身分も関係ないらしく、そのためどの国でも権能を持って生まれた子どもを、きちんと保護しているらしい。
ただし、自己申告ね。
教会で調べるなんてできるものではないらしい。
なので、権能を持っていても、自覚せず生涯を終える人もいるだろうな。
そして怖いのは、権能を使いこなせず負傷する人が多かったそうだ。
その最たるものは『勇者』。
『勇者』の力は絶大でも、力に肉体が耐えきれず、全身を損傷して死亡する事故が何度も繰り返されたらしい。
そりゃあ『勇者』だもん、浮かれちゃうよね。
私だって、自分に『勇者』の権能があるなんてわかれば、とりあえず何ができるか使っちゃうと思う。
だから国が率先して、管理・教育する仕組みを作ったとか。
そして権能所持者は、人間の国同士の戦争に加担させないことを世界中で取り決めたようだ。
でもね、防衛戦なら、いいんだってさ。
はあ、人間ってやっぱり、自分の都合のいいように物事を変えてしまうんだよね。
権能者を保護したことを他国に公表するのも、自国を侵略させないためなんだろうな。
わかるよ、気持ちは。
でもさ、だからこそ、戦争の道具にされたくないので、自己申告しない権能者もいるんじゃないかな。
行動に制限もされるだろうし。
それで『強欲』は権能そのものではないらしいけど、だから何? なんだよね。
「日本人のサブカル脳が唸るぜ」
なんて馬鹿なことを言うつもりはないけど、とりあえず地道に考察していくしかないかな。
はあ、道は遠そうだ。
とりあえず、筋トレしよう。




