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「嘆きの塔」に幽閉されて、二か月くらい過ぎた、と思う。
この世界もひと月は三十日らしいんだけど、月の名前が数字じゃないからよくわかんない。
エルネシアの魂が眠ってしまったのは、この塔に幽閉されて十日くらいだったのかな。だから、私がエルネシアになって、およそ五十日。
スクワットは百回できるようになった。
やっぱりお馬さんに乗ったり、ダンスしたりで足腰はそこそこ鍛えられてたんだね。
腕は……うん、聞かないで。
相手がいないので組手ができないから、型の練習を繰り返してるんだけど、これが、なかなかね。
思うように、動かなーい!
流派によって違うかもだけど、腕がびしっと止まらなーい。
あー、初心者はこんな感じなのね。
とりあえずお掃除にきてくれる人に頼んで、下働きの人用の服を何着か持ってきてもらえたんだけど、これ正解。
素材は、まあ、比べちゃいけない。縫製もちょっと肩が上がりにくい。
でも、ドレスなんかより、ちょーラク!
会話はしてくれないけど、いちおうこっちの話は聞いてくれるので、ちょっと安心。
なんかね、幽閉? 監禁? されているけど、監獄とか刑務所って感じじゃないんだよね。
もちろん、そんなことはこの部屋を見ればわかるんだけど、でも、なんて言うんだろう……リゾートホテルの牢屋版?
自分でも、意味がわかりません。
まあ、とりあえず体力はそこそこ。それなりに健康。
エルネシアには耐えられないほど辛い場所だった。でも私は前世の感覚が残っているせいか、今のところ大丈夫。
それで、肝心の魔法なんだけどさー。
『強欲』については、全くもって進展なし。
まあ予想はしてたから、諦めずこつこつ試していくつもり。
で、水魔法は使えるようになったんだ。
初めての時、感動したよ、マジで。指先に、水が出てきたんだもん。
ただね、この世界の魔法の使い方と同じかどうかわからない。
誰かに教えてもらったわけじゃないからね。
でも、私なりに色々考察して試しまくったんだよ。お風呂場で。
呪文なんてわからないから、ただただ「水よ出ろー」って念じただけ。
だってさ、呪文って、おかしくない? それってひとつの言語でしょ。言葉が変わったら使えないじゃん。
どの国でも共通に使うために、古代文明とかのチョー昔の言葉を色々覚えないといけないなんてことだったらさ、馬鹿にするつもりはないけど、それってどうよ、と思うんだ。
だって、平民だって使えるんだよ。どうなってんの。
だから、ラノベとかでもよくあるらしいけど、無詠唱だっけ、念じて実現するやつ。
それをひたすらやってみたんだ。
ただ、これは前世の知識のおかげでもあると思う。
水って、要するにH2Oでしょ。空気中にも水蒸気はある。
だったら、魔力が水に変わるんじゃなくて、空気中の水分を集めて液体にしてるんじゃない? 魔力はそれをサポートする媒体みたいなもの、多分。
ふっ、ふーん。私は文系だけど、これくらいは考えるよ。
で、上手くいったのさ。
どうして上手くいったかは謎だけど、コツみたいなものはつかんだ気がする。
魔法ってすげー。
やったぜ、私も魔法使いだ!
この世界に来て、一番嬉しかったかもしれない。
読んでくれて、ありがとう。




