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幽閉王女は考える。「うん、これから考えよう」  作者: 池田ん


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3/11

3

初予約投稿。

上手くいくことを祈ります。

最初のうちはなんというか、夢を見てるような感じだった。

古ーい映画館で、音響機器も悪くて、音が割れている感じだし、映像も画像が粗いっていうのかな。唯一ちゃんと聞こえるのが、エルネシアの心の声。小さいけれど、聞き取れた。


エルネシアの視点では、始まりはみんな馬鹿げた話で、自分を貶めるものでしかなかった。

私も同意するよ。


エルネシアの記憶を私なりに整理すると、事件はこういうことになる。


父親である国王陛下も、母親である王妃陛下も、兄である第一王子も、虐めだとか、厳しすぎるだとか、こんな馬鹿げたことを信じるはずがないと疑っていなかった。


だが、侍女の一人が、エルネシアの悪行を告発する遺書を残し、自ら命を散らしたと聞く。


公爵家の長子であり、婚約者であるカルディオン・レイスベルクに執着するあまり、婚約者が庇護する『癒し』の権能を授かったティセラ・ヴァルネ子爵令嬢や、婚約者が内心惹かれている妹殿下、ミレシア・アルフェリド第二王女を毒殺しようと計画をした、と告発する内容だった。


そして、亡くなった侍女の部屋にあったものと同じ毒薬が、自室からも発見された。


知らない、そんな毒なんて知らない!


エルネシアは本当に知らないのだ。

激しい嫉妬に心を揺さぶられてはいたが、そんな悪辣な事を考えるような人品ではなかった。


貴族女性の規範となるよう育てられたエルネシア。

そして、実際にエルネシアは、本来かなり出来た王女だった。

頭もいい。努力家。後輩への面倒見もいい。厳しいことを言う時でも、理由をきちんと説明する。

教師からの評価も高かった。

そんなエルネシアの、たぶん唯一最大の弱点。

それは、婚約者カルディオンを運命の人のように恋い慕ってしまったことだ。


曾祖父王の弟が興したレイスベルク公爵家だが、国内法では公爵家は三代までとし、それ以降は侯爵へ降爵となる。ただし、王族との婚姻があれば、公爵位は維持できるとあり、カルディオンにとっては、エルネシア王女との婚姻は渡りに船だった。


とはいえ、カルディオンにとって、完璧すぎる一歳年上のエルネシアより、二歳年下で明るく闊達なミレシアの方が好みだったらしい。周囲から見ても、それは分かりやすかったようだ。


また、百年ぶりに国内に誕生した『癒し』の権能を授かった子爵家を派閥としてレイスベルク公爵家が取り込んだ。エルネシアの知識によれば、政治的には別におかしな話じゃないらしい。

問題は、そのティセラ・ヴァルネ子爵令嬢がカルディオンに恋しちゃったことだ。


嫉妬心に揺さぶられたエルネシアは公の前では平然としていたも、王女宮では声を荒げることが、何度もあった。

口に出しただけだった。だが、それを聞いていた複数の侍女は、その事実を審問時に述べざるを得なかった。けしてエルネシアを嫌っていたわけではなく、心から仕えていた者たちであっても、国王陛下の前では真実を述べることしかできなかった。


そして婚約者から「君を尊敬はしていたが、愛してはいなかった」と告げられた時、エルネシアは抗う気持ちを失った。


幽閉された当初は、泣き崩れるばかりで、食事も喉を通らなかった。

そのうち、放心するようになり、ときどき『相良愛子』との対話が、独り言のように漏れるくらいだった。


この塔に幽閉された王族は、死ぬまで外に出ることはない。

だが、老衰まで生き延びるような者はいなかった。

気が狂い、我を失う者。喪失感と孤独と無力さに苛まれる者。

誰もが自ら死を選ぶ。


この部屋には「毒杯」が置かれている。

強制ではない。

自ら命を絶つときに、刃物も縄もないような部屋で、唯一の道具。


エルネシアは毒杯をあおり、眠った。

目が覚めた魂は、『相良愛子』一人だけだった。


お読みいただき、ありがとうございました。

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