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幽閉王女は考える。「うん、これから考えよう」  作者: 池田ん


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29/32

続 29


二人が眠りについて、まもなく丸二日。王妃の居室には、身じろぎする微かな音も聞こえてしまう。けれど、その静けさは安らぎとはほど遠かった。


王妃は内心で何度も「まだなの!」と叫んでいた。だが、王族として身につけた作り笑いを絶やさず、その時を待つ。


王妃付きの侍女たちは、何も口に出さない主に倣うように、ただ沈黙を貫いていた。それでも緊張感が隠しきれていない。


十年ほど前まで王妃付きの侍女だったロクセーは、ベッドの傍の椅子に座り、ただただ眠る二人を見つめていた。


医師と薬師の四人は落ち着いた様子に見えるが、その中で本当に落ち着いていたのはミリネリンヌだけだった。


今回の被験者のうちの一人は王族だ。「もし」「万が一」……そのことが思い浮かばないのは絶対の自信がある者だけ。


「そろそろですね」

窓から太陽の位置を確認していたミリネリンヌが声をかけた。


「王妃陛下、私とロイスカー様は一度退出いたします。処置は女性である二人が確実に行いますので、ご安心ください。私たちは扉の外で待機しておりますので、処置が終わり次第、あらためてお声掛けください」

そう言って頭を下げた後、同僚のマロイッチの肩をポンと叩く。それ以上は何も口に出すことはなく、ロイスカーと二人、部屋を後にした。


残されたマロイッチとエレッチェは、黙々と鞄から用意しておいた注射器を二本取り出した。

王妃に頭を下げてから、ベッドに近寄った。ロクセーは椅子から立ち上がり、二人に場所を譲る。


注射を刺すのはエレッチェ、被験者の身体を支えるのがマロイッチと、役割は決めていた。


その注射器を見れば、誰もが息を飲む。あんな太い針で刺されることを考えると身震いしてくる。注射など一般的ではないこの世界で、それは拷問具と思わせるほど凶悪な印象を与える器具だった。

自分でなくて良かった、二人が寝ていて良かったと共感した瞬間だった。


エルネシアの身体を支えるマロイッチの横で、ロクセーがエルネシアの手を握った。祈るように。常であれば不敬と言われかねない行為だが、事前に王妃の許可を得て、ロクセーは高貴な方の手を両手で包み込む。


処置そのものは、何人もの被験者で練習してきた作業のため、滞りなく進んでいく。この日のために、女性王族への対応として選ばれた二人は、練習通りの動きをすることができた。緊張による発汗は本人たちにしかわからなかった。


注射が終わり、乱れた寝間着を直されてから、扉の外で待つ者に声がかけられた。

すると、男性二人が部屋に入ってきた。一人はいつもと変わらぬ表情で、もう一人はこわばった面持ちでベッドに近づき、横たわったエルネシアとエイリンを観察した。


脈はすでにエレッチェが確認していた。動きがないと。

エレッチェが王女の瞼を上げ、魔道具の灯りを左右に振った。瞳孔に変化はないことを医師も薬師も確認した。


侍女たちは内心「もう亡くなっているのではないか」と思っていたが、それを口にすることはなかった。


「あと一日です。明日にはきっとお目覚めになるでしょう」

ミリネリンヌがはっきりとした声で告げた。

王妃はそれを信じるしかなかった。


「あと一日」

この二日も長かった。息もせず体温も感じない娘の姿は死んでいるようにしか見えない。

それが恐ろしかった。

秘薬の効果は知っていたが、見るのは初めてだ。だが、これほど恐ろしいとは思わなかった。

エルネシアを救うためとはいえ、こんな状態になることを決断した自分の行いがおぞましかった。


だが、娘を信じられなかった自分への罰だと飲み込むしかない。最後まで見届ける義務がある。

そして娘のことだからと自分に任せ、この場にいない夫が、その時だけはとても憎らしかった。


子どもたちはみなかわいい。だが自分は王妃であり、子どもたちはそれぞれ王子であり、王女で、皆王族としての役割がある。普通の家族ではいられない。その覚悟を持って嫁いできたし、矜持もある。


だが、今はそれが恨めしい。

ただ、この子の母親だけでありたいと願ってしまった。


ここまで読んでくれて、あちがとうございます。


次回は、明日更新します。

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