続 28
直前にこんなサプライズいらなーい。
サプライズって、する方は楽しいかもしれないけど、される方はそれほど嬉しくはない。……と思ったよ。
ベッドに腰かけた私の手を女性のエレッチェさんが、エイリンさんの手をロイスカー先生が取り、脈を測る。そのあと、首筋を触ったり、べろっと出した舌を見たりと健康状態を確認。聴診器がないだけで、お医者さんだよね。あっ、王宮主治医だった。
二人とも問題はないと言われて、ベッドに足を上げる。
キングサイズとはいえ、ベッドに二人で寝るのか。掛け布団は一つなのかな? 寝相ってどうなんだろう。なんか変なことが気になり始めちゃったよ。
「それではこの薬を飲んでください。少し苦くて飲みづらいと思いますが、全部飲み切ってください」
ミリネリンヌさんの言葉に合わせて、女性薬師のマロイッチさんが、コップを渡してきた。
エイリンさんと一緒に受け取ったけど、こんなにまずそうな緑色だったかな。
ちょっとドロッとした感じ。青汁だと思えば大丈夫かな。
エイリンさんが先に口にしたので、私も慌ててコップに口をつける。
んー、んー、っ? ちょっと苦いくらいで、案外飲みやすかった。
あー、でも少しだけ、舌がピリピリきてる。
コップをマロイッチさんに返すと、ミリネリンヌさんから声がかかる。
「さあ、横になってください。じきに眠たくなるはずです」
「エイリンさん、手をつないでいい」
「はい」
エイリンさんは素直に私の伸ばした左手を軽く握ってくれた。
これは事前にエイリンさんとロクセーさんに頼んでいたことでもある。眠りにつくときと解毒薬を使うときの二回、二人のどちらでもいいから手を繋いでほしいとお願いしていた。
まあ、エイリンさんとこんな形で手をつなぐとは思っていなかったけど、まあ良しとしよう。
エイリンさんもこの世界ではもうおばあちゃんだ。私がこうやって誰かと手をつなぐのは、初めてかな。
あっ、ヴァルネさんと握手したんだっけ。まあ、初めてでも、二回目でもいいや。
んー、でも、馬車から降りるとき手を取ってもらった?
はあ、こんなことを気にするなんて……。
それより、もう一つお願いしていたことが……。
「あれは?」
小声でエイリンさんに問いかけると、頷きながら、目線をベッドの脇に立っているロクセーさんに向ける。
ロクセーさんが私に頷いたので、私もロクセーさんに頷き返した。
でも、もう、瞼が閉じそうだよ。
唇が痺れてきて、足が冷たくなってきた。
ふと、今さら、疑問が沸き上がる。
「あの、解毒薬、どう、飲ませる……」
眠くなってきたけど、頑張って、ミリネリンヌさんの方に顔を向ける。
仮死ならさ、飲み込むこと、できない?
「ああ、それは注射で体に打ちます」
ミリネリンヌさんはにこやかに答えたけれど、なんとなく悪い顔に思えた。
注射……前世のような、細い、針、作、れな、い、の、では……。
意識が沈んでいく。
瞼も開けていられない。
唇はもう動かせない。
ああ、この感覚をエルネシアも経験したんだな。
辛くて悲しかっただろう。
でも、もう大丈夫だよ。
あなたの心配することは、もうないよ。
待っている人が、たくさんいるよ。
だから、もう起きようよ。
きっと、幸せに、なれる……。
ここまで読んでくれて、ありがとうございます。
もし気に入っていただければ、下の☆☆☆☆☆に評価をいただければ励みになります。
もう少しで完結します。
最後までお付き合いいただければ、嬉しいです。




