続 27
王妃様の侍女に案内されて後宮に入ってから、途中で誰とも会わずに王妃様の居室に通された。
広っ! つい見回しちゃった。塔のあの部屋より広いよ、絶対。
執務机か、書類の積まれた大きな机もあるし、棚には本というより書類の束みたいなものが置かれてる。応接セットみたいなソファもある。
居室と言うより、執務室なんじゃない。
王妃様って、やっぱり忙しいんだよね。
そして部屋の隅に場違いなベッドが一つ。
あれは王妃様用ではなくて、私のためかな。
たぶん、扉の向こうが王妃様の寝室じゃないだろうか。
部屋の中にはすでに関係者がそろっていた。
王妃様、王妃様付きの侍女は案内してくれた人も含めて四人。あとはミリネリンヌさんと女性薬師。以前、ミリネリンヌさんと一緒に来たことのあるマロイッチさん。それと、初めて会う中年の男女。後は、私の後ろに控えるエイリンさんとロクセーさん。
「紹介するわね。こちらが王宮主治医のロイスカー先生と、助手のエレッチェ。ミリネリンヌとマロイッチは知っているわよね」
私は軽く頭を下げる。って、つい日本人に仕草がでちゃう。
「これからのことはミリネリンヌを中心に状況を見守ることになるけれど、貴女が眠っている間、この中の誰かが必ず貴女の傍にいるようにするわ。何かあれば、すぐにミリネリンヌとロイスカー先生が駆けつけてくれます」
王妃様を除く人たちが頭を下げたので、私も条件反射で頭を下げてしまった。うん、日本人だから。
「どうしますか。少しお茶でも飲んでくつろぎましょうか」
「いえ、王妃陛下。皆様をお待たせするのも申し訳ありませんから、すぐにはじめましょう」
「そう。では寝間着に変えましょうか」
そうか、ドレスのままじゃないのか。いや、まあいいけど。
王妃様の侍女に連れられて、隣の部屋に移動する。
部屋の中はやっぱり寝室だった。ベッドもデカっ。
王妃様の侍女たちにドレスをさくさく脱がされ、ちゃっちゃと着替えさせられた。
寝間着はいい肌触り。もともとエルネシアが使っていたものかな。なんとなく体に馴染んんでる気がする。
あれっ、エイリンさんも着替えてる?
疑問に思いながら、寝室を出て、ベッドの近くに連れていかれる。
「どうぞベッドにおかけください」
キングサイズのベッドの端に腰かけると、エイリンさんが一度私に頭を下げてから、私の横に腰を下ろす。
あれれっ?
私の頭の中は?がぐるぐるしはじめた。
「ああ、彼女にも同じ投薬を施します。彼女には被験者として、詳細の報告をお願いしております」
ミリネリンヌさんが、にこやかに説明する。
聞いてないよ!
私のパニクった様子を見ながら、エイリンさんは笑いながら話しかけてきた。
「内緒にしていて申し訳ありませんでした。でも、この話をいただいた時、みんなが名乗り出て、決めるのに苦労したんですよ」
おかしそうに微笑むけれど、こっちはそれどころじゃないよ。
「本当は私がやりたかったのに、止められてしまったの」
王妃様も困ったような顔をしているが、むしろ困ったのは周りの人たちだろう。
私は頭を抱えそうになった。
「まあ、決まったことは仕方ないですよ。私の命に代えて、安全は保障いたします」
ミリネリンヌさんが真面目な顔で声を掛けてくる。知らなかったのは私一人らしい。
がっくりと肩が落ちる。
もうなるようになれ。
「エイリンさん、ごめんなさい。でも、ありがとう」
「お役に立てるのなら幸いでございます」
「眠るときは、手をつないでくださいね」
「畏まりました」
エイリンさんは目を細くした。
この作品を見つけてくれて、ありがとうございます。
もし、お時間があれば、拙作
「王子様の婚約者候補でしたが、とある理由で白紙になります。」
もお読みいただければ幸いです。




