続 22
ファティセイロさんの話を聞いて、五日がたちました。
えーとね、『嫉妬』とか『暴食』とか『強欲』って名前の術がないか質問したけど、聞いたことがないって言われちゃった。
それは予想していたんだけど、やっぱり『癒し』って、かなり謎なんだって。
『癒し』には術がない――というか、やっぱり『癒し』自体が権能ではなく術じゃないかという説が研究者の中では大勢を占めているみたい。
じゃあ、元になる権能って何?
それがどの国にも伝わってない。
いや、正しくないな。神の子・御使い・天使と呼ばれる何かが勇者一行に随伴し、それが人間に憑依して『癒し』を与えていた、なんていう伝承もあったらしい。
で、大戦後に、その謎の憑依が神のもとに帰ったら、憑依されていた人間に『癒し』の権能が残った……なんでもありだよね。
正確にはわかっていません。
憑依されている時の人間は、『癒し』だけじゃなく他の術も使えたけど、それは戦いの中で消失したんだって唱える研究者もいるそうです。
どうして、とか、どこに、とかの疑問は解明できないから、とりあえず放置しているのが現在の認識だって。
そんな話を聞いて、改めてエルネシアの記憶を覗いちゃったんだ。
『強欲』なんて、エルネシアの記憶にはなかった。
気づいていなかっただけかと思ってたけど、でも、そうじゃないんだろうな。
『強欲』は私が持っていた、というか持ってきた。もしくは……。
なんてことをうだうだ考えちゃったんだよ、この五日間は。
もちろん筋トレして、外でランニングして、魔法の練習もして、お風呂にも入っていたけど、その合間合間に頭の中でぐるぐるぐるぐる考えがまとまらない状態。
そして、決心しました、私は。
覚悟を決めた感じかな。
陛下にお手紙を出しました。
『癒し』の権能を持つ、ティセラ・ヴァルネさんと会って話がしたいって。
今の私の状況はホント特殊だから、陛下もすぐには了承してくれなかった。
で、色々調整してもらったんだけど、この塔と後宮の間に、王族用のそれもあまり知られていないガゼボがあって、そこでお茶会形式をする案に落ち着いた。
ヴァルネさんと同行するのは、宮廷魔術師のファティセイロさん。ヴァルネさんなど権能所持者は月に一度は必ず宮廷魔術師との面談があって、必ず王宮に足を運んでいるそう。
ヴァルネさんを担当しているのは他の人だけど、その日だけは私の事情を知っているファティセイロさんが同行することが陛下の一言で決まりました。
二人きりだとヴァルネさんが緊張しちゃうしね。まあ、ファティセイロさんがいても緊張はほぐれないかもしれないけどさ。
でも、王妃様が来られるより、いいんじゃない。本当は王妃様が参加したがっていたのを陛下が止めたらしいよ。
形だけのお茶会だけれど、その準備は王妃様の侍女が担当してくれる。
王妃様が指示をしてくれているようなので、お任せしてます。
だって、お茶会の準備なんてわからないもん。
お菓子とかお茶の種類も、知らないもんね。
エルネシアの記憶を見ても、味まではわかんないよ。
ふだん塔に通っている人の中から当日来てくれるのは二人だけ、王妃様の元侍女だったエイリンさんとロクセーさん。
ちなみに塔で私の世話をしてくれているのは全部で八人いて、交代で来てくれているんだって。私に正体を明かしても、いまだに下働きの服で通ってきてるよ。
理由を聞いたら、その方が都合がいいんだって。ふーん。本人が納得ならいいや。
でも、流石にお茶会のときには侍女服を身につけるらしい。
警備はいつもの兵士たちと、近衛の人たち。
視界に入らないように隠れて護衛するはずだけど、たぶん私には“視える”。
答え合わせするのがちょっと楽しみです。
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