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幽閉王女は考える。「うん、これから考えよう」  作者: 池田ん


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続 14


なんかモヤモヤする。

こんな時は、思い切り体を動かすに限る。

私はサササッと運動着に着替える。もちろん下働き用の服だ。下はズボンね。


螺旋の階段を降り、看守に微笑みかけてから、塔の外に出る。

看守の一人がどこかに走っていったけど、いつものことだ。


私は気にせず、準備運動をしてから、塔の周りを走り始める。

イチ、ニッ、イチ、ニッ、イチ、ニッ、イチ、ニッ。

軽いランニング。それでも汗は流れてくる。

十周まで休憩なしで走れるようになったけど、飽きてくるので、たいてい五、六周でやめてしまう。

そして、ストレッチ。

その頃には、兵士のアドレーヌ・リンシェルがこちらにやってくる。

すっかりエルネシア番になったみたいだ。

地面に座り、開脚して体を動かしているのも、さすがに見慣れてくれた。

スカートじゃないから見えないよ!


「王女殿下、今日もお元気そうですね」

「ええ。少し体を動かしたかったので、また付き合ってくださる」

「もちろん、喜んでお付き合いします」


はじめは型稽古。こちら世界の武術も基本は静と動。

アドレーヌも色々考えてくれているみたい。

私の立場で考えれば、剣術は論外。生半可な技術はかえって危険だという意見に私も同意する。

王族が襲われるとき、相手は必ず殺意を持っている。だから、避ける、逃げる、足止めをすることを覚えたほうがいい。

護衛の騎士が来るまで、数秒、数分を稼ぐこと。護衛の騎士がいなければ、逃げる一択。


侵入者を撃退できたのは、本当に奇跡に近いものだと何度も言われたよ。

私だって、わかってる。だから鍛えようとしているんじゃん。

まあ、体を動かすことも嫌いじゃないんだけどさ。


一通り型稽古が終わったら、今度は魔術の練習。

と言っても、走りながらなんだよ。

逃げるときに、追いかけてくる相手の邪魔をすることが主眼。

大きな魔術は必要ない。目くらましに顔に水をかけたり、全身ずぶ濡れにして、走りにくくする水魔術。

足元をへこませたり、出っ張らせたりの土魔術。

そして足元を泥沼にする混合魔術。

それを走りながら、後ろに向かって行使する練習は、見た目よりとってもハード。


魔術を考えながらだと走るスピードが遅くなるし、スピードを維持すると、魔術が不発だったり、とんちんかんな方に発動したりで、なかなか難しい。

これをやりながら塔を一周すると、普通に十周する以上に疲れるんだ。


もちろんこんな練習する必要ない生活で、実戦することがないのが一番だけど、エルネシアに戻った時、あの子がどんな選択するかわからないでしょ。もしかすると、王城から逃げ出したいと思うかもしれないし、意に沿わない婚姻先から逃亡する未来が来るかもしれない。

そんな万が一のために、選択肢として身につけて損はないと思ってる。

だって、鍛えた肉体は嘘をつかないもん。

『相良愛子』の魂が消えても、体は同じように動かせるんだから。

私が最初、エルネシアの軟弱な肉体に苦労したのと反対だよ。


私のしていることは的外れかもしれない。でも、私が残せるものは残しておきたい。


それと、あの男から奪ったスキル『夜目』と『隠密』もなんとか鍛える、というか使えるようにしておきたい。


『夜目』ってさあ、確かに夜、暗い所でもぼんやりと見えやすくなるんだけど、昼間でも遠くが見やすくなる気がするんだ。塔の窓から外を眺めている時には気づかなかったけど、外に出て、森を見ると、幹と幹の間とか見やすい。

森や林の中とか、けっこう便利かもしれない。

うん、使うのはやっぱ逃げる時だな。


それと『隠密』だけど、日本人だと忍者を連想するでしょ。でも、忍者になれるわけじゃないよ。

自分では実感ができないけど、どうも存在感が薄くなるみたい。見えないのではなく、意識されにくいっていうのかな。

だけど、アドレーヌには全く効かない。どうしてって、彼は常に私――エルネシア王女を意識しているから。訓練している時だって、彼にとって私は警護対象だろうしね。


でもでも、『夜目』と『隠密』の複合技なのか、隠れている人を見つけるのは難しくない。これも検証数が少ないから断言できないけど、かくれんぼの鬼になったら無敵かもしれない。


いやー、なんにしても日常生活では使わないスキルだ。これをあの男が自分の国に報告しなかった気持ちもわかる。だって、報告したら、密偵とか間諜に一直線じゃん。選択肢なくなるし、死亡率も高そうで怖いよ。


うん、私も報告はしない。



ここまで読んでくれて、ありがとうございます。


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これからもお付き合いいただければ、嬉しいです。

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