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早かった気もする。遅かった気もする。
どかどかと制服を着た男たちが、灯りと剣を持って、塔の中に入ってきた。
私はその間、階段に座り込んで、震えていた。
「エルネシア王女殿下、お体は大丈夫ですか」
「はい」
声が震えてしまった。
恐怖は後からやってくる。
無我夢中で動いているときは感じなかったものが、今になって一気に押し寄せてきた。
「賊は?」
「部屋に閉じ込めました」
そう言って、鉄格子のカギと男が持っていた刃物や笛を渡す。
「これは?」
「賊から奪いました」
話していた兵士は、確か……だめ、今はエルネシアの記憶が見れない。
「近くに仲間がいるかもしれませんね」
兵士は刃物を見て目を見開き、笛を見て考え込んだ。
同行した兵士に周辺探索の指示を与えてから、こちらに向き直る。
「殿下はひとまずこちらの部屋でお休みください」
兵士に言われるままに、タバコくさい部屋に入り、椅子に座る。
まだ体が震える。
兵士が何かを言って部屋を出ると、すぐに扉の前に別の若い兵士が立つ。
やがて、毛布と温かい飲み物が運ばれてきたので、毛布をかぶり、飲み物を口にする。
――現実なんだ。
私は十七歳の女の子だ。空手がそこそこ使えるからって、実際の荒事など経験はない。
侵入したあの男は、私に危害を加えるつもりなどなかったかもしれない。
刃物は持っていたが、倒れていた警備兵も刺されたわけではなかった。
でも、夜中だよ。昼間だって怖いけどさ。たまたま目が覚めていただけで、本当なら寝ているところを連れ去ろうとしていたんじゃない。そんな男を信用できる?
ただ、蹴りが決まった時はスカッとした。
あれは百パーセント、相手が油断していたからだ。
それを思い出したら、ちょっとだけ、口元がほころんだ。
でも、考えなければいけないのは、それだけじゃない。
あの男を拘束しようと、色々男に触れていた時、『強欲』が発動したみたい。
その時は気づかなかったけど、間違いなく、今はこの体の中に『暗殺者』の権能がある。
黒ずくめの男の権能を、私が奪ったのだ。
あの時、私が考えていたのは――。
「エルネシア王女殿下、大丈夫ですか」
兵士に声をかけられ、顔を上げる。
階段に座り込んでいた時に声をかけてきた兵士だ。
「はい、もう大丈夫です」
「賊はすでに連行しました。今夜は、殿下を王女宮にお連れいたします」
私はまっすぐに兵士を見つめ、断言する。
「それは結構です。私はこのままあの部屋に戻ります」
立ち上がり、毛布を背に羽織ったまま部屋を出て、階段を上り始める。
あっ、私、裸足だ。
慌てた兵士が追いかけてくる。
「あそこは、その、犯行現場ですし、危険も完全に排除されたか確認ができておりません」
私は足を止めずに兵士に告げる。
「心配なら、あなたが扉の前で護衛しなさい。私はあの部屋で休みます」
私はエルネシア本人ではない。『相良愛子』の居場所は、この世界ではあの牢獄だけだ。
読んでくれて、ありがとう。
次は、明日の18時に投稿を予定しています。




