↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幽閉王女は考える。「うん、これから考えよう」  作者: 池田ん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
10/11

10

早かった気もする。遅かった気もする。

どかどかと制服を着た男たちが、灯りと剣を持って、塔の中に入ってきた。

私はその間、階段に座り込んで、震えていた。


「エルネシア王女殿下、お体は大丈夫ですか」

「はい」

声が震えてしまった。


恐怖は後からやってくる。

無我夢中で動いているときは感じなかったものが、今になって一気に押し寄せてきた。


「賊は?」

「部屋に閉じ込めました」

そう言って、鉄格子のカギと男が持っていた刃物や笛を渡す。


「これは?」

「賊から奪いました」

話していた兵士は、確か……だめ、今はエルネシアの記憶が見れない。


「近くに仲間がいるかもしれませんね」

兵士は刃物を見て目を見開き、笛を見て考え込んだ。

同行した兵士に周辺探索の指示を与えてから、こちらに向き直る。


「殿下はひとまずこちらの部屋でお休みください」


兵士に言われるままに、タバコくさい部屋に入り、椅子に座る。

まだ体が震える。


兵士が何かを言って部屋を出ると、すぐに扉の前に別の若い兵士が立つ。


やがて、毛布と温かい飲み物が運ばれてきたので、毛布をかぶり、飲み物を口にする。


――現実なんだ。


私は十七歳の女の子だ。空手がそこそこ使えるからって、実際の荒事など経験はない。


侵入したあの男は、私に危害を加えるつもりなどなかったかもしれない。

刃物は持っていたが、倒れていた警備兵も刺されたわけではなかった。


でも、夜中だよ。昼間だって怖いけどさ。たまたま目が覚めていただけで、本当なら寝ているところを連れ去ろうとしていたんじゃない。そんな男を信用できる?


ただ、蹴りが決まった時はスカッとした。

あれは百パーセント、相手が油断していたからだ。


それを思い出したら、ちょっとだけ、口元がほころんだ。


でも、考えなければいけないのは、それだけじゃない。


あの男を拘束しようと、色々男に触れていた時、『強欲』が発動したみたい。

その時は気づかなかったけど、間違いなく、今はこの体の中に『暗殺者』の権能がある。

黒ずくめの男の権能を、私が奪ったのだ。

あの時、私が考えていたのは――。


「エルネシア王女殿下、大丈夫ですか」

兵士に声をかけられ、顔を上げる。

階段に座り込んでいた時に声をかけてきた兵士だ。


「はい、もう大丈夫です」

「賊はすでに連行しました。今夜は、殿下を王女宮にお連れいたします」


私はまっすぐに兵士を見つめ、断言する。

「それは結構です。私はこのままあの部屋に戻ります」

立ち上がり、毛布を背に羽織ったまま部屋を出て、階段を上り始める。

あっ、私、裸足だ。


慌てた兵士が追いかけてくる。

「あそこは、その、犯行現場ですし、危険も完全に排除されたか確認ができておりません」


私は足を止めずに兵士に告げる。

「心配なら、あなたが扉の前で護衛しなさい。私はあの部屋で休みます」


私はエルネシア本人ではない。『相良愛子』の居場所は、この世界ではあの牢獄だけだ。



読んでくれて、ありがとう。

次は、明日の18時に投稿を予定しています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。