11 最終話
短編用の作品だったため、ここで完結とします。
短編を意識したラストですが、気に入っていただければ、幸いです。
私は今日もいつもの部屋で目を覚ます。
あれから変わったことと言えば、牢獄のカギが増えたこと。
外側から開けるカギは開いたまま。新しくつけたのは内側から閉められるカギで、私はそのカギをいつも閉めるようにしている。
侵入者は、隣国の外交官で、表沙汰にはされていないが庶子王族らしかった。外交でこの国を訪問した際、エルネシアに一目惚れしたのが全ての始まりだった。
まあ、要するにあの男が全てを計画したらしい。エルネシアに冤罪をしかけ、それを助けた正義のヒーロー気取りでエルネシアの心をつかもうとしたという下らない計画。
でも、それはほとんど成功していたのが怖いところだ。
あの男が味方だったわけじゃなくて、心からホッとしたよ。
王族の庶子という立場で、色々歪んだものがあったのかもしれない。おまけに『暗殺者』の権能持ちなのだから、謀略にはうってつけだ。
あの男が自白したのは、『暗殺者』の権能がなくなったことに絶望したかららしい。
どうやらあの男も国には隠していて、自分に都合のいいようにだけ使用していたみたいだ。
それで『強欲』なんだけど、私の予測が正しかったみたいで、もともとは『暗殺者』のスキルの一つみたい。機能としては“相手から奪う”スキルらしいのだが、何をトリガーとしているのかまではわからない。
あの男が持っていた他のスキルは、『隠密』『夜目』の二つ。うん、暗殺者っぽいね。
攻撃系のスキルがなかったのは、本当に運が良かったよ。
『強欲』も他の二つも検証したいけど、とりあえず誰にも告げずに内緒にしています。
今はね、城内は大騒ぎ……みたい。
城から離れた塔にそんな喧騒は届かないけど、なんか報告にくる兵士の話を聞くと、そういうことらしい。
隣国との関係や権能持ちの犯行など、国は対応に苦慮しているかもしれないけど、私のせいではない。
大切なのは、冤罪だったことが明らかになり、エルネシアの無罪が認められた。
無罪となったが、私はまだこの「嘆きの塔」に居座っている。
そう、居座っているのだ。
鉄格子や扉のカギが閉められることはないので、外に出ることができる。
天気の良い日は、外に出て、塔の周りをぐるぐるランニングしている。
そして、ときどき、あの兵士――アドレーヌ・リンシェルと組手をしている。
空手ではなく、この世界の格闘技というか、兵士が学ぶ格闘術を教わっているというのが正しいかな。空手は型の練習だけでいいや。
そして、アドレーヌに相手をしてもらうのは、もう一つ。土魔術の指導だ。
彼も土魔術が使えると聞いたので、教えを乞うことにした。
案の定、こちらの「土」は大雑把なものだったが、それでも、地面が盛り上がったり、へこんだりするのは楽しい。
でも、楽しくないこともある。
妹殿下や、元婚約者が、何度も手紙が届くのだ。
私に会って話がしたいそうだ。
謝罪の言葉も書かれているが、私の心は動かなかった。
そんなに会いたきゃお前から会いに来い、って思うんだけど、この塔がある場所ってさ、罪人を閉じ込める場所じゃん。それも王家の。
だから、王の許可がなければ、立ち入り禁止なんだよね。
正直ね、どうすればいいか、私もわからない。
国王陛下や王妃陛下からはお手紙をいただいている。
でも私は、まだ会うつもりがない。
私にも、そりゃあ、少しは思うところはあるよ。
もちろん、冤罪を晴らすことができたのは、私にとって上々と言えることだ。
でも、彼らの謝罪を受けていいのは私じゃない。
エルネシアだ。私は偽物なんだから。
私には、謝罪を受け入れて、それを許す事なんてできない。
それはエルネシアじゃなきゃダメだと思ってる。
だから、いまだに中途半端な状態が続いている。
筋トレと魔法の練習をしながらだけど。
あー、どうしよう。早くエルネシアに戻ってほしい。
私が消えるのは……正直、ちょっと怖い。
でも、それでもいい。
だって、これはエルネシアの人生なんだから。
すべてが解決したかはわからないけれど、寝坊助のエルネシア。
あなたの目覚めを待っている人が、ここにたくさんいるからね。
最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。
短編用に書いたものを、流れ的に連載の方がいいかと書き直しました。
もしよければ、下の評価☆☆☆☆☆を入れていただけると、励みになります。
まだまだ読者の少ない状態ですが、これからもなんとか書き続けたいと思っています。




