表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
6/17

第二章 デートの積み重ねと母の疑念

そんなデートが、何度か続く。

距離は近づく。

だが――決定的には踏み込まない。

手も、ほとんど触れない。

それを見ていた喜美子は、眉をひそめる。

(……おかしいね)

あの息子が。

あれだけ女に慣れている男が。

「手を出してない?」

あり得ない。ならばーー出せない理由がある?

疑念が芽を出す。

そして。

■母の提案(婚前旅行)

「ちょっといいかい」

ある日、喜美子が切り出す。

場所は自宅。

逃げ場はない。

「馴染みの旅館があってね」

さらりと言う。

「山奥の、古いとこだよ」

宗平が、嫌な予感を覚える。

「四泊五日。二人で行ってきな」

みさとの表情が固まる。

「……それは」

喜美子はにやりと笑う。

「向こうの融資の話、進めてやってもいい」

完全に条件。

逃げ場がない。

みさとの指が、膝の上で強く握られる。

(……詰んだ)

その時。

宗平が、何でもない顔で言う。

「いいですよ」

みさとがはっと見る。

宗平は続ける。

「行きましょう」

喜美子は満足そうに頷く。

「決まりだね」

その帰り道。

二人きり。

みさとが低く言う。

「……どうするつもりですか」

宗平は、軽く笑った。

「簡単ですよ」

「簡単じゃありません」

「いや、簡単です」

そして、少しだけ声を落とす。

「内緒で、一人呼べばいい」

みさとが止まる。

「……え?」

「友人でも、妹でも」

さらりと言う。

「二人きりじゃなければ、問題ないでしょう」

みさとは、しばらく黙る。

そして――

「……本気で言ってます?」

宗平は肩をすくめる。

「本気ですよ」

少しだけ、意地悪く笑う。

「それとも、二人きりの方がいいですか?」

みさとは一瞬だけ言葉を失い――

「……最低です」

とだけ言った。

だがその頬は、わずかに熱を帯びていた。

宗平は、それを見逃さなかった。

(……やっぱり、面白いな)

山奥の温泉。

閉じた空間。

逃げ場のない時間。

その中で、何が起きるか。

まだ、誰も知らない。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ