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第二章デート編(アクアリウム〜美術館)② 横山大観展

水の世界から、今度は“静止した時間”の中へ。

最初の一枚の前で、宗平が足を止める。

しばらく見て――

ぽつりと言った。

「……これ、諸葛孔明ですかね」

「違います」

みさとは即答する。

宗平は気にせず続ける。

「なんか、劇画に派手な色つけたみたいですね」

「ちょっと」

みさとが小声で止める。

「人に聞こえます」

宗平は肩をすくめる。

「正直な感想ですよ」

(……この人ほんとに)

呆れながらも、なぜか嫌ではない。

次の部屋。

大きな絵。

洞窟の奥に、潜むような龍。

宗平が、ぴたりと止まる。

「……」

「どうしました?」

みさとが横から顔を向ける。

宗平は、ゆっくりと言った。

「龍が、出てくる」

「え?」

「ほら、ここ」

指を差す。

「今にも飛び出してくるみたいに」

みさとは同じ場所を見る。

だが――ただの絵にしか見えない。

「……見えません」

「そうですか」

宗平は少しだけ残念そうに笑う。

「トリックアートみたいなんですけどね」

さらに進む。

向かい合う枝、その間に差す光。

宗平が、ふっと目を細める。

「眩しい」

「え?」

「ここ、二匹の龍が玉を取り合ってるみたいに見えません?」

みさとは黙る。

……わからない、でも、

わからないことが、不思議と気にならない。

むしろ。

(この人は、何を見てるんだろう)

そして、最後の一枚。

少し離れた通路の正面に、巨大な絵ーー夜桜。

暗闇の中、ぼんぼりの光に照らされ、

ぼうっと浮かび上がる桜。  

宗平が、ぽつりと呟く。「綺麗ですね」

それは、これまでの中で一番素直な声だった。

みさとも、同じように見つめる。

静かな時間。

宗平が、近づく。

そして――

「これ、桜なのに」

ぽつりと。

「花びら、四枚しかないですね」

みさとは思わず顔をしかめる。

「また適当なことを」

だが、念のため近づく。

見る。

……確かに。

四枚。

「……え」

もう一度見る。

やっぱり、四枚。

(なんで?)

頭が追いつかない。

宗平は静かに笑う。

「面白いですよね」

みさとは、何も言えなかった。


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