世界を救った魔術師、再会する
まさか、幼児化してワイバーンを倒せるとは思いもしなかった。
これは俺の経験と、ポアラの優秀な魔術の賜物ってやつかな。
「お!? ワイバーンが倒されてんじゃねーか!?」
暑苦しい声が聞こえて来たかと思うと、やたらと身体の大きい男が、身の丈ほどの剣を持ち、俺たちの前へのやって来る。
「おいおい、まじか。リッタんとこの学生さんがやったんか!?」
ポアラの制服姿を見てわかったのだろう。
身体の大きい男がポアラへ質問を投げると、「は、はい」と答える。
「助かったぜ! ワイバーンを見つけたと思ったら、一目散に逃げっから、追いかけてたところだったんだ。さっすがリッタんとこの魔法の学園の生徒さんだ」
「おい木偶の坊。魔法じゃなくて魔術だって、何回言わせんだ」
「んぁ?」
俺の言葉に、ライアンはまじまじとこちらを見つめてくる。
「リッタ……」
流石は幼馴染のライアン。今の俺を見て、すぐにわかってくれたみたいだ。
「あいつ、こんないたいけな少女と子供を作ってたのか……あのロリコン……魔法学園を作るとかほざいて、ハーレム作りやがって、許さん」
「ばっろっ!! 誰が可愛い生徒に手を出すかっ!! てか、魔術学院だ!! 色々間違えてんだよっ!!」
「格好もガキの頃と同じかと思ったら、口調も同じかよ。遺伝やべー」
「待て待て! ガキの頃にこんな格好してねぇわ! してたのはおめぇだろうがっ。ニーナが少女向けの物語が好きで、ニーナの気を引こうとしたヒョロヒョロのお前が、それのコスプレをしたら、二度と口きいてくれなかったんだろうがっ」
「その話はリッタだけしか知らないはず……リッタの口はなによりも固い……クロードにも言っていない……へ? ガチリッタ?」
「話が早くて助かる」
すまないなライアン。お前の幼少の頃の話は墓まで持って行くつもりだったが……俺もこんな格好してんだ。お互い様ってことで。
♢
「──リッタが手も足も出んとはな」
状況を説明すると、ライアンはなんの疑いもなく頷いてくれる。
「所詮、俺個人としてはまだまだ未熟ってこったな」
勇者パーティの魔術師ということで、無意識に強いと慢心していたんだろうな。
「で、だ。クロードに会いに行きたいけど、この姿じゃ無理だったんだよ」
「いくらリッタんところの学生さんでも、いきなりは無理だったってわけか。ちゃんと仕事してんじゃんか、門兵」
「感心してる場合かよ」
「まぁまぁ。んで、俺を頼りに来たら、ダンジョンにいるって聞いて、ここまで来た、ってか」
「そのことなんですが、ライアン卿。今回の依頼はどなたからのものなのでしょうか?」
「んぁ? 俺の依頼?」
ポアラの質問に、なんでいきなり自分の依頼主を聞いてくるのか心底疑問と言わんばかりの声を上げる。
「もしかしたら、ライアンも依頼と称して俺みたいなことになってんじゃないかと心配でな」
俺が補足を付け加えると、「えー、ね」と納得の声を上げるライアン。
「そういうことかなら安心して良い。俺の依頼は城から……というか、クロードからだ」
そう言うとライアンは、近くで伸びているワイバーンを指差した。
「さっきお前らが倒してくれたワイバーン。その討伐依頼だ」
「そうだったか。なら、ライアンとも会えたし、依頼も達成で一石二鳥だな。さっさとクロードのところへ報告に行こうぜ」
「おう」
♢
ライアンと三人でダンジョンを出る。ライアンがいるからか、ゴブリン共みたいな弱い魔物が出てこなくなった。
「あの、先生。質問なんですけど」
楽ちんな帰り道、ポアラが律儀に手を挙げて質問をしてくる。
「どうした?」
「なんで、王都の近くのダンジョンに、ワイバーンなんて外国の魔物がいたのでしょう?」
「そうだな……ワイバーンも臆病な魔物だから、なわばりに強い魔物がやって来ると逃げる……けど、それにしては、ここまで逃げて来るなんて、逃げ過ぎな気もすんな」
「反乱だ」
俺とポアラが首を捻っているところに、ライアンが一言、答えを教えてくれる。
「反乱、ですか……?」
ポアラの純粋な質問に、ライアンは少しだけ険しい顔つきをしてしまう。
「ああ。ワイバーンが逃げて来たっつーサバリア地方で反乱があったらしい。ま、詳しいことは俺も又聞き程度だがな」
なんて、苦笑いを浮かべながら頭をかくライアン。
「とにかく、その混乱でなわばりを追われた魔物が、逃げ場を求めてあちこち彷徨ってる、って話は聞いたことがあるな」
「なるほど……」
「そんなわけで、ワイバーンがこのダンジョンにやって来たってわけだ」
「弱い物を優先して狙うワイバーンだから、この弱い魔物が多い攻略済みのダンジョンを根城にしたってわけか」
「そゆこと。こんな平和な王都でワイバーンなんてあぶねぇから、さっさと討伐しろって国王様に言われたってこった。人使いの荒い国王様だよ」
「その国王様の身に危険が及んでいるかもだから、急いで向かうとしよう」




