世界を救った魔術師、魔法少女になる
「わぁ……先生、凄く似合っています♡」
「……」
ポアラに抱っこされ、学院の寮にある彼女の部屋へとやって来た。
年頃の女の子の部屋におっさんが入るとか、なんらかの罪に問われても仕方ないかもしれない。一応、本人の同意は得ているから今回はOKということにしておいて欲しい。
だけど、ね、着替えが……。
「んじゃ、これ!?」
魔法少女の恰好させられてんですけども。これこそなんらかの罪に問われそうなのだが。
「『じゃじゃう魔女レミファン』のコス、です♡」
「『です♡』じゃねーわ! こんなおっさんのコスを見た奴が『DETH』じゃ!」
「今は美少年ですし、そもそも大人のままの先生でも似合っていた可能性がありますよ」
「んなわけあるかっ。おっさんの魔法少女コスとか、本気で死人が出るぞ」
「でも、たまーに王都でおじさんが女子の制服着て歩いていますよ? それで死人が出ていないので大丈夫です」
「……」
世界が平和になって、多様性の時代になったもんだ。
「それに、これくらいしか先生のサイズに合うものがありません」
そりゃ、全寮制の寮だし、自分のサイズにあった服しか持って来ないわな。
「良かったです。私が好きだったお話しのコスを思い出として持って来て」
「……仕方ない。借りるぞ、ポアラ」
「はい。レミファンちゃん」
「あの、その名前で呼ばないで」
♢
「クロード王と先生は幼馴染、なんですよね?」
結局、じゃじゃう魔女レミファンだっけか。魔法少女コスで城へと向かう。道中、昔に話したことを確認するようにポアラが聞いてくる。
「ああ。昔から正義感の強い奴でな。あいつがレイラ姫と結婚して王様になったのは、この国にとって良い事だと思うぞ。ただなぁ……」
「ただ?」
「近衛騎士団に魔術を指導しに行く時にクロードとは会うんだけど、レイラ姫……今は王妃か、レイラにやたら尻に敷かれてる」
「あ、はは」
「まぁ、それはそれで幸せそうだけどな」
「先生は尻に敷かれるのがお好きですか?」
「俺は胸派、だな」
「……その見た目で下ネタはやめてください」
ポアラに怒られながらも、ブレーブ城の正門へと到着。
人が行き交う中、魔術学院の制服を着たポアラと、魔法少女の恰好をした俺(見た目は子供、中身はおっさん)は門番へ、クロードに会いたいことを伝えた。
「──帰った、帰った」
まぁ、門前払いだわな。
城の門番に、野良犬でも払うような仕草をされてしまう。この格好が原因ではないと信じたい。
「クロード王は忙しい身。学生風情があいそれと会えると思わないことだ。まぁ、リッタ卿と一緒ならば簡単に会えるだろうが、あの方も忙しい身だろう」
俺、ここにいるんだけど。なんて言える状況じゃないな、これ。魔法少女の恰好した俺がここにいるって知ったら、この門番はどういう反応をするのだろうか。
「先生ならここにいます!」
おい、ポアラ、やめんか。
「そのやたら魔法少女の恰好が似合う子がぁ? ふっ。最近、同じ恰好をしたおっさんを見たから、幾分もマシ……というか、目の保養になるからむしろありがたい。サンキュな、僕」
なんで俺は感謝されているのだろうか……。
てか、街中を歩いていても誰も注目して来ないのは、俺なんかが霞むくらいのどキツイおっさんを見たからか。
「この方は──」
「あーあー、あんまりしつこいと、リッタ卿の学院の生徒でも、出るとこ出ることになるよ」
もう相手にしきれないって態度。まぁ、門番だし、こんな奴が毎日来るのだろう。
「むむむ」
ポアラは悔しそうな顔をしていた。門番の態度が気に食わないのだろうが、許してやれ。彼も仕事なんだ。
「ポアラ、行くぞ」
「良いんですか? このままじゃ王様が……」
「入れないのであれば仕方ない。先にギルドに行くとしよう」
踵を返しかけたその時、不穏な魔力を感じた気がした。
「……気のせい、か?」
「先生?」
「いや、なんでもない。急ごう」




