↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
6/32

正体

「つ……作ったの?」


「え?」


アルは、ぱっと顔を輝かせた。

「作ったの!」


満面の笑みで、褒めてもらえるのを待っている。


俺はそんなアルを見ながら、ふと天井を見上げた。


そこには、水面が揺れるたびに光が反射するような、淡い煌めきが広がっていた。


「……ちょっ、お前、まさか……ここ、湖の下なんじゃ……」


俺の反応を見た瞬間、アルの顔が少し曇った。


「アル……ちゃんと説明してくれよ」


「……うん」


「お前、一人でこれを作ったのか?」


「そうだよ……」


「別に責めてるわけじゃねえから。ちゃんと教えてくれよ」


アルは少し迷ったあと、ゆっくり口を開いた。


「ほんとはね……リクが、もっと文明が遅れてる時代の人だと思ってたんだ」


「……俺が?」


「うん。だから言えなかったんだ。釘とかガラスとか、どうやって調達してるのかって聞かれたら困るから……」


アルは苦笑した。


「でも、あれは僕たちの魔法で作ったんだ。そもそも……街なんてないんだよ」


「……街が、ない?」


「うん。精霊の世界は、次元が少しずれてるんだ。僕たちの世界は人間の世界から見える。でも、現実世界とは直接交わらない」


「じゃあ、この世界は……」


「人間たちのアイデアや理論を応用して、精霊たちが発展させてきたものなんだ。それが精霊魔術になって……今の精霊界がある」


アルは胸に手を当てた。


「そして、その精霊魔術の秘密をずっと守ってきたのが、パイオニアでもある光の精霊……僕と、僕の仲間たちなんだ」


「……じゃあ、なんで木の家を建てたり、木の上で寝たりしてんだよ」


俺が尋ねると、アルは少し恥ずかしそうに笑った。


「君が、高度なものを見たら怖がると思ったんだ。だから、できるだけエネルギーを使ってないような世界に暮らしてるって思ってもらおうって……」


「……なるほどな」


「でも、リクの世界が思っていたより発展してるって分かったから、もう見せても大丈夫かなって。頑張って精霊魔術で作ったんだけど……」


アルは申し訳なさそうに俺を見る。


「びっくりさせちゃったよね」


「はあ……」


俺は大きく息を吐いた。


「アルって……すげえ精霊だったんだな」


「……え?」


「ほんと、すげえよ」


「……ううん」


アルは静かに首を振った。


「リクのおかげなんだよ」


「俺の?」


「僕はね……受肉した精霊と組んでいる、現実世界の魔術師たちによって、一族の転覆を図ったとして封印されてたんだ」


「……」


「あと一年もしたら、僕は消える運命だった」


アルの声が、少しだけ震えた。


「でも、ひかりの魂……ソウルメイトの魂に惹かれ合って、リクがこの世界に来ることができた」


「俺が……?」


「うん。それはソウルメイトと、光の一族の守護があったからなんだ。そして、リクが僕の封印を解いてくれた」


アルは俺をまっすぐ見つめた。


「僕たちが惹かれ合うことは、ずっと分かってた。受肉してでも……僕たちの一族は、君と繋がりたかったんだ」


「……アル」


「君を助けたいんだよ」


アルは優しく微笑んだ。


「でも、リクの中には絶望と憎しみがある。それが僕の精霊魔術を拒んでるんだ」


「……」


「光の大元からエネルギーを送れば、君は失った以上の寿命を手に入れられる」


アルは少しだけ近づいた。


「僕は……キミと一緒の時間を過ごしたいんだよ」


「ごめん、アル……」


俺は俯いた。


「でも……俺は、まだ憎しみが消えないんだ。怖いんだよ」


「うん」


アルは否定しなかった。


「時間はまだあるよ」


そして、静かに笑った。


「一緒に見つけていこう。リクが怖くなくなる場所を」


その言葉を聞いた瞬間、胸の奥が崩れた。


俺は泣いた。


ずっと、自分は一人なんだと思っていた。


どこにも居場所なんてなくて、誰にも理解されないと思っていた。


でも違った。


すぐ近くにいた。


魂で繋がった仲間が。


俺は声を押し殺しながら、ただ泣き続けた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。