どうせ
俺は、すべてを見透かされてしまうような気がして、思わず目をそらし、うつむいた。
「はあ……」
アルもため息をつく。
「じゃあ、行動で示すしかないね」
そう言うと、アルは俺の腕をつかんだ。
次の瞬間、俺とアルの身体が、まるで無重力になったかのようにふわりと浮かび上がる。
「えっ……?」
アルはこちらを見て、にやりと笑った。
「それじゃ、行くよ!」
「え?」
その瞬間――
俺たちの身体は、パチンコ玉のようにものすごい勢いで空へと打ち出された。
「う、うわああああっ! アル! 手ぇ放さないで!!」
「大丈夫、大丈夫!」
後ろから追いかけるように、精霊たちも次々と空へ飛び込んでくる。
アルは先頭を飛びながら、振り返って叫んだ。
「みんな! 僕らの森を離れるよ!」
「いいね!!」
「おー!」
「おー!」
精霊たちも声を上げる。
アルが空へ向かって手をかざすと――
ぐにゃり。
空間そのものが歪み始めた。
そして、何もない空に、大きな真っ黒な穴が口を開く。
「ま、まさか……入るのか!?」
俺が叫ぶより早く、アルは迷うことなく、その黒い穴へ飛び込んでいった。
「ちょ、ちょっと待てえええ!」
俺も引っ張られるように穴の中へ飛び込む。
そこには上下も左右もない、不思議な空間が広がっていた。
「なんだ……この空間……」
アルがもう一度手をかざす。
すると、遠くに小さな穴が開き、その隙間から無数の星空が見えた。
「ほら、もうすぐだよ」
二人と精霊たちが、その穴へ向かって一斉に突入する。
最後の精霊が通り抜けると、黒い穴は何事もなかったかのように、静かに閉じた。
「……え?」
穴に入る前は、確かに昼だった。
なのに――
今は、夜だった。
頭上には満天の星。
「まさか……ワープ?」
太陽が見えない場所まで、一瞬で転移したってことなのか?
「こいつら……一体……」
俺の頭は半分フリーズしたまま、しばらく空を飛び続けた。
やがて、眼下に大きな湖が現れた。
月明かりを受けた湖は静かに輝き、その中央には小さな島が浮かんでいる。
島全体が月の光に照らされて、まるで宝石みたいにきらきらと輝いていた。
「……綺麗だな」
思わず見とれていると――
スンッ。
突然、パチンコのような高速移動が止まった。
「ここにしよう」
アルが言う。
「ねっ、リク。ここにしよう! ずっと見てたでしょう?」
「……なにが?」
俺が聞き返すと、アルは楽しそうに笑った。
俺たちはそのまま島へと降り立つ。
リクは「うん、うん」と何度もうなずきながら、なにかに満足したような顔をしている。
精霊たちも次々と降り立ち、
「ここがいいんじゃない?」
「うん、いいと思う」
なんて言いながら、互いにうなずき合っていた。
するとアルが、
「リク、こっち来て」
そう言って、島にそびえ立つ大きな木のそばへ俺を呼び寄せた。
そして――
「よいしょ」
アルが木に向かって、ストンと手を振り下ろす。
「え?」
メキメキメキ……!
ズドォォーン!!
「えっ……」
大木が、あっさりと切り倒された。
「…………」
俺は言葉を失った。
「リク、ここに座って待ってて?」
アルは何事もなかったかのように俺の腕を引き、切り株へ座らせる。
そして振り返ると、
「みんな! いくよ!」
「おー!」
アルと精霊たちは、何も言わずに一斉に空へ飛び立っていった。
「……」
遠ざかっていく姿を、俺はただ見つめる。
待つつもりなんてなくても、こんな島じゃどこにも行けない。
どうせお前らだって、帰ってこないんだろ。
「……どうせ俺は、いつだって……」
誰にも聞こえない声で、ぽつりと呟く。
「ひとりだから」




