完成
「リクー……はぁぁぁ……やっと、構築終わったよ……」
浄化施設のソファーに、アルは力なくへたり込んだ。
「すごいな。もうほとんどできたのか?」
「うん! 宣伝に出してるイベントは、全部構築できたよ!」
「全部?」
「うん! 猫パーティーも、草原の一夜のデートパーティーも、ベルサイユ宮殿パーティーも、遊園地も田舎体験も!」
アルは疲れ切った顔をしながらも、どこか誇らしげに笑った。
「これで、お客さんが来てもちゃんと開催できるよ……」
「そっか。お疲れさま」
リクが笑う。
するとアルは、ふと思いついたように顔を上げた。
「でね、リク!」
「ん?」
「今度、慰安も兼ねてさ。一族全員でイベントしたいんだけど……一日だけ劇場をお休みにしていい?」
「一日だけ?」
「うん! 三日連続の大イベント!」
アルは身を起こし、疲れも忘れたように話し始める。
「一日目は遊園地、二日目は田舎体験、三日目はお祭りに大花火大会!」
「……それ、慰安っていうより普通に大祭じゃない?」
「いいじゃん! みんな頑張ってくれてるんだから!」
アルは笑った。
「いつもお客さんを楽しませてる精霊たちにも、今度は思いっきり楽しんでもらいたいんだ」
リクはアルの顔を見て、ふっと笑った。
「……うん。いいと思う」
「ほんと!?」
「もちろん。僕からもみんなに伝えておくよ」
「やったー!」
アルはソファーから飛び起きた。
さっきまで動けないと言っていたとは思えないほど元気になっている。
「よーし! 三日間、全部楽しむぞー!」
「アル、まずは休んだほうがいいと思うけど……」
「……それもそうだった」
アルは再びソファーに倒れ込んだ。
「でも三日間なら、一日じゃ足りないじゃん」
リクがそう言うと、アルはニヤッと笑った。
「ふふ……僕って天才なんだあ」
「何を思いついたの?」
「異空間の二十四時間を、現実の一分にできたよ!」
「……え?」
「だから三日間のイベントをやっても、現実では三分しか経たないんだよ!」
アルは得意げに胸を張った。
「帰ってきたときには、まだ三分後! ふふ、すごいでしょ!」
「なっ……お前、そんなこともできるのか?」
リクは目を丸くする。
「規格外すぎるだろ……」
「ふふふ!」
アルはさらに嬉しそうに笑った。
「しかも、もう一つあるんだよ」
「まだあるの?」
「うん!」
アルは指を立てる。
「劇場は二十四時間受付でしょ? だから、どの時間に入ってもいいんだ」
「うん」
「例えば朝に入る人もいれば、昼や夜に入る人もいる。でも、異空間に入ったら全員が同じスタート時間に揃えられるんだ」
「……ん? どういうことだ?」
「えっと……これはベルスの時間差の法則があってね。それに、時の情報を扱うペルールを組み合わせて……」
「アル」
「はい」
「違う。もっと簡単に言って」
「……あっ」
アルは少し考え込んだ。
「簡単に言うと……違う時間にいても、異空間に入れば同じ時を共有できるってこと」
「……なるほど」
リクはようやく理解したように頷いた。
「つまり、現実で朝に入った人と昼に入った人がいても?」
「異空間の中では、みんな同じスタート時間から始められる!」
「そして三日間遊んで……」
「出たときには、それぞれが入ってきた現実の時間に戻れる!」
「……つまり、現実では時間をほとんど進めずに、全員で三日間を過ごせるのか」
「そういうこと!」
アルは満面の笑みを浮かべた。
「だから一族全員で、三日間まるまる遊べるよ!」
◇
そして、劇場の休日。
パーティー会場は、たくさんの精霊たちで賑わっていた。
もちろん今日は、いつものピエロ姿ではない。
みんな本来の、子どもの姿に戻っている。
笑い声や話し声があちこちから聞こえ、いつもの劇場とはまるで違う空気に包まれていた。
俺はその光景を見渡した。
「すごい賑わいだな……。最初に集まって会ったとき以来だけど、こんなにいたんだな」
「うん。あのときは受肉して情報を集めて、そのまま別行動してた精霊もいたからね」
「だからか」
あのときは、目の前にいる精霊たちが一族のすべてだと思っていた。
けれど今、こうして一堂に集まっている姿を見ると、その数の多さに改めて驚かされる。
パーティー会場の中央には、巨大な青い光の玉が浮かんでいた。
淡い青色の光を放ちながら、静かに輝いている。
精霊たちは次々とその光に手を触れていた。
すると――
シュンッ。
触れた瞬間、精霊の姿が一瞬で消えていく。
「僕らも行こうか!」
アルが楽しそうに言った。
「お、おう」
俺もアルと一緒に、青い光へ手を伸ばした。
指先が光に触れた瞬間――
世界が暗転した。
何も見えない。
音もない。
まるで、世界そのものが消えてしまったような感覚だった。
そして、暗闇の中に数字が浮かび上がる。
5
4
3
2
1
最後の数字が消えた瞬間――
目の前が、一気に明るくなった。
眩しさに目を細める。
そして、ゆっくりと目を開いた。
「……え?」
そこに広がっていたのは――




