Episode 2|適性診断・仲間との出会い
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王都ハストゥラの門は、ケイが想像する「城」より二回り大きかった。
石造りの建物。行き交う馬車。鎧の兵士。商人たち。そしてケイをちらちらと見る視線。
服のせいだ。くたびれたパーカーとジーンズは、どう見ても場違いだ。
王宮に入ると雰囲気が変わる。柔らかい絨毯。高い天井。人影が減る。
「まず、適性診断をお願いしたい。魔法の素養を測るものです。転移者の方には全員受けていただいています」
「わかりました」
断る理由もない。
◆
部屋の中央、台の上に透明な球体があった。
直径二十センチほど。内側がわずかに光っている。
「手のひらで触れるだけでいいです」
ケイは球体に触れた。
光が変わる。白から青へ。青から白へ。球体の内側で何かが渦を巻き、激しく明滅した。
係の男の手が止まった。
傍の騎士が一歩、後ずさった。
明滅が収まる。球体の内側に文字が浮かんでいた。ケイには読めなかった。
係の男が別の男を呼ぶ。二人で球体を覗き込む。顔を見合わせる。それからケイを見た。
「……少々お待ちください」
二人とも出ていった。
残されたのは、ケイと静かに光る球体だけだ。
まずい。そういう気がした。
◆
「先輩の転移者たちが来ています。ちょうど皆さんが集まっておられますので」
案内された先は、王宮の一角にある広い部屋だ。
テーブル。椅子。酒と食べ物。そして、四人。
最初に口を開いたのは、ひょろりとした男だ。黒髪が伸びて、やや乱れている。値踏みするような目。
「何やらかしたか知らんが、廊下まで聞こえてたぞ」
「自分でもよくわかってないです」
「ふうん」
なんとなく酒を飲みに来たら騒ぎになっていた、とだけ言って、アキラと名乗った。
壁際に直立した男が、一礼する。短髪。背筋が定規で引いたように真っ直ぐだ。厳つい顔立ちに、細い目が一瞬こちらに向いた。服の上からでも肩から腕の筋肉の密度がわかる。腰に刀を帯びている。ファーマルクからの定期報告でハストゥラへ来ていると言った。名はジン。それきり。
「S級どころじゃないって話、もう回ってきましたよ」
丸い顔の中年男が身を乗り出す。小太りで背はそれほど高くない。黒髪が中途半端に伸びて乱れている。眼鏡の奥の目が輝いている。
「あなたですか? 魔法陣、見せてもらえます? ちょうど資料を借りに来ていたんです。サトルといいます」
「俺が何をしたのか、まだ全然わかってないんですが」
「それでいいです。一緒に調べましょう」
嬉しそうだ。
「受信許可出した。連絡先飛ばせ」
アキラが言った。命令口調で。
「えっと……スマホ、持ってないんですが」
「は?」
「手元に何もなくて」
「体内チップ経由での連絡先交換もしたことないってこと?」とサトルが聞いた。「とんでもない山奥にでも住んでたんですか?」
「いえ、23区内ですが」
「……」
「昭和生まれのジジイじゃないのw」アキラが笑った。
「22歳なんで平成生まれですが」
「は?」
「22歳で、平成生まれ……?」サトルが繰り返した。
アキラとサトルが顔を見合わせた。ジンがこちらを向いた。
そのとき、ケイの隣に人が来た。
いつの間に近づいたのか。気づかなかった。足音もなかった。小さい。子供だ。
丸い目がケイを見上げた。黒髪が長く、肩を超えて伸びている。白いワンピース。無表情だ。
「また転移してきたね」
それだけ言って、少女は自分の席に戻った。
「また」。その一言が頭に引っかかった。だが今は、聞ける状況ではない。




