敗北の気配
「そう……じゃ、行くから。後ろから攻撃しようなんて考えないほうがいいよ」
「もちろんさ」
レリアはアルファに背を向け、リレイの方に歩き出した。
(表情が優れていませんが……今言及するのは良くないですね)
『さて、勝手に出ていったあなたのあとを追って私は来たわけですが……まあお説教はあとでいいでしょう』
「……これは私がやるべきことだから」
『まーだそんな使命感に駆られているんですか……ともかく、今はいいです。どうやらアルファは時間をくれるようなので、ここに装備があります。じっくり選んでいってください』
リレイは自分の背後に目配せをした。
そこには星流と一緒に持ってきた装備の数々があった。
「……これって興生の装備でしょ? それに、随分高級そうだけど、どうやって持ってきたの?」
『最高権限者の方がくれました。恐らく、あたなも知っている方ですよ』
「使ったら迷惑になる。私の問題に人を巻き込みたくない」
『私達の、ですよ。それに、あなたに関わってしまった時点で巻き込んでいるようなものです。どうあっても使ってもらいますからね』
リレイはじっとレリアを見つめる。
「……はぁ、分かった。これは使う。でも、リレイは逃げてね」
『確かに今はそうした方がよさそうですねー』
「色々ごちゃまぜだけど、銃火器から特殊弾薬、さらに近接武器まであるんだ」
『全部性能も高いらしいですよ。近接武器も私達なら非常に有用です。銃を使うより強い場面なんてザラですからね』
「だね。じゃあもらってくよ」
そう言ってレリアは急所を守る装備類や、使い捨てるのであろうサブマシンガン、今までのものよりも性能が高いブレード、サイドアームのマグナムをホルスターに入れ、準備を終えた。
『さて、これで幾文か強くなったはずです……勝ってくださいね』
「負ける気はない」
『それでは私は一時退散しますねー』
そう言ってリレイはアルファのいる方から離れるようにして去っていった。
「……やるか」
そう呟いて、深呼吸する。
アルファを止めるべく、アルファの方へ歩みを進める。
「さっきよりも良くなったみたいだね」
「……そう」
短く問答をし、言葉はもう必要ないと言わんばかりにレリアは素早くサブマシンガン片手でを連射する。
「っ! さっきよりも避けにくいね」
それをアルファは一部避けきれなかったようで、腕から血を流している。
そして、アルファが顔を上げるとそこにレリアの姿はなかった。
「でもそれだけじゃ足りない」
レリアはアルファの横へ回っており、既にブレードを振り上げている。
アルファはそれに気づき、すんでのところで自身のブレードを挟んで防御し、ガキィンという重厚な金属音が鳴り響く。
アルファはそれを受け流し、そのまま距離を取った。
「やっぱり同じ条件じゃ勝ち目がないね……しょうがないな。本当は本気は出さないつもりだったんだけど、そうしないと駄目みたいだ」
アルファはそう言うが、特に見た目上で変わった点は見受けられない。
「最初からそうすればよかったのに」
「『自分の手札は一枚さえ残っていればそれだけで相手に不安を与えられる』って言ってたのはレリアでしょ?」
「……よく覚えてるね」
レリアは手に持ったブレードを強く握りしめた。
「もちろん――さっ!」
次の瞬間、レリアの視点からはアルファがいきなり眼前に出現したように見えただろう。
アルファはブレードを振り上げており、それはレリアの目の前にあった。
「はやっ――!」
レリアはそれを受け止めることはできたが、力を受け流せずに体勢を崩し、大きくふっ飛ばされてしまった。
受け身を取って体勢を整えるレリアだったが、アルファは視界内にはいなかった。
急いで後ろ振り返ると、ブレードを構えたアルファが眼前に迫っていた。
「流石。早いね」
それを体を捻って最小限の動きで回避し、ブレードによる攻撃を叩き込もうとするが、それは避けられ腕を捕まえられてしまう。
「このっ……!」
すかさず残った左手でピストルを連続で撃ち、それでできた小さな隙に膝蹴りを叩き込み、拘束から逃れる。
「これで力の面でも対等だね」
「……やっぱり過負荷能力の強化……ね」
レリアはブレードを構えたまま静かに言った。
「凄いね、身体能力の強化しか使ってないのに」
「エネルギーの流れが、変わってる」
「流石、俺でもそこまでは見れないよ」
にこやかな表情でレリアを称えるアルファ。
「それで――」
「おっと、探りを入れるのはおしまいだよ」
アルファはレリアの言葉を遮って、そう言った。
「……バレてたか」
「それと、休憩もね」
アルファはそう言って先程と瞬間移動したかのように見えたときと同じ動きでレリアの眼前へと迫った。
が、それは難なくブレードにて防御されてしまう。
「二回目は効かないよ」
「それはどうかな?」
アルファはそのまま力でブレードを押し切り、レリアの体勢を崩す。
「くっ……!」
そのままレリアに向かって二撃目を振るうアルファ。
レリアはそれを避けられずに、左腕に大きく傷を負ってしまう。
「このっ!」
残った右手でブレードを振るうレリアだったが、それをアルファは身を捻って避け、レリアを組み伏せる。
「さぁ、これでレリアも元通りだね」
「何言ってるの!」
「大丈夫、博士にもしたことさ」
「博士って……あんな人形みたいにして、何がいいわけ!」
まるで幽鬼のようだった博士の様子を思い出し、レリアはアルファを睨みつける。
「そんな、人形だなんて酷い……家族さ」
アルファは微笑んでそう言った。
「それが家族なわけ……!」
体に力を入れるレリアだが、組み伏せられた状態では全く動けない。
過負荷能力を使用して電流も流すが、効いている様子はない。
「それは同じ過負荷能力で相殺できるって知ってるよね?」
数秒後、がくりと項垂れるように体から力を抜いて、レリアは――諦めた。
「これでまた一緒だね」
そう言ってレリアの頭の上にアルファは手をかざす。
「また、何もできなかった……」
「ここがよくないかも」「ここが面白いかも」などのご感想等あれば頂けると幸いです。




