兄が消え
嫌な予感がして、私は全力で走っていました。
倒壊した建物の数々を通り抜け、アルファとレリアがいた方向へ向かいました。
周りの惨状とは打って変わって、辺りは異常なまでに静かでした。
火柱はもう消えていましたが、アルファの方へ近づけば近づくほどどんどん暑くなっていきました。
辺り一帯には機械獣は一匹として見当たらず、静かな空間が広がっていました。
そこにあったのは地面に倒れ込んだ一人の研究員と、瓦礫を背に地面にへたり込んだレリアの姿でした。
「レリアっ! 一体何が――」
「リレイ……? わかんない……アルファ、アルファが……」
私が声をかけると、酷く動揺した様子でそう呟きました。
「アルファ? アルファが何を――」
「どこかに行って、それで私に攻撃して――そこのカイラとかいう研究員が……」
「アルファがレリアを攻撃? カイラ研究員が……分かりました、ともかく一時撤退しましょう」
そういった後、私は微動だにしない研究員の生死確認をしましたが、案の定死んでいました。
「流石にあの戦いの中で生き延びてはいないですか――」
錯乱しているようで、話と話に繋がりがなく、レリアの言っていることが理解できませんでした。
私はひとまず撤退すべきだと判断し、私はジェイルに通信をしました。
「ウィリアム司令。アルファのいた場所の辺りは周りの建物が崩壊していました。そこを捜索してレリアを見つけましたが、錯乱しているようで何が起きたかがほとんど分かりません。アルファが何かをしたようですが、それ以外のことは何も分からず――一時的な退却が必要だと判断します」
『……ふむ、分かった。他の部隊によると、そこで起きた戦いの余波で辺りの機械獣はほとんど居なくなったようだ。あとは他の人員でも対処できる。戻ってこい』
「了解しました。それと、どうやら研究員が一人、ここにいたようです。既に死んでいるようですが、レリアの言動から今回の件に関係があるようにも思えます。レリアはカイラと言っていましたが……持ち帰るべきでしょうか?」
『カイラ? なるほど。そいつはそこに置いておけ。装備は何か変なものがあれば持ち帰ってこい』
「置いておけ……はい、分かりました。では失礼します」
そう言って私は通信を切りました。
少し冷酷だと思いましたが、バリアス連邦とはそういう組織だと割り切りました。
「――レリア、帰りますよ」
「でも、でも――」
「大丈夫です。安心してください。大丈夫ですから――」
私はそう言ってレリアを抱きしめました。
「……うん、分かった」
すると、先程よりも落ち着いた様子でそう言いました。
「さて、戻ることになりますが――歩けますか?」
「うん」
「それじゃあ帰りますよ」
道中、レリアは終始落ち着かない様子ではありましたが、なんとか元いた研究施設まで戻ることができました。
その後、レリアはは落ち着かない様子でしたので、博士と相談した結果今は質問はやめておこうということになりました。他の研究員の説得が大変でしたね。
◇
そして翌日、そのときに起こったことをレリアに聞いてみると、レリアとアルファがカイラという研究員に襲われ、その後カイラがアルファを改造し、アルファは暴走してカイラを殺害した後にどこかへ言ってしまった。というものでした。
その時のアルファの言動は普段のものとは異なっていて、会話があまりままならなかったそうです。
そしてカイラは我々プロトタイプのために作った特殊な装備を用いて、レリアとアルファを襲ったようで、そのせいで改造される隙を与えてしまったようです。
元々アルファは様々な要素が改変しやすく作られていました。ですが、それを聞いた私の衝撃は強く、なかなか信じられませんでした。
「アルファがそんなことになるわけありません……探しに行かないと」
「……理論上は可能だろう。それに、レリアがその目で見たことだぞ? 真実だろう」
博士は腕を組んだまま静かに言いました。
「ですが! ……信じられません。任務には支障がない程度に捜査をしようと思います」
「……そうだな。確かに俺も気になる、頼んだぞ」
そう言って博士は私の肩をポンと叩いて部屋を出ていきました。
「……もちろんです」
「ここがよくないかも」「ここが面白いかも」などのご感想等あれば頂けると幸いです。




