不穏な気配
「ついに私にも妹ですか……」
ベッドの上に横たわるレリアを見て、私は呟きました。
あ、このときには既に服は着せられてましたからね? 変に勘ぐってはいけませんよ?
――まだなんも言ってないんだが……
ははっ、確かにそうですね。
「……これで年下がいることの大変さを知ってくれると嬉しい」
アルファが小さく言いました。
どうやら私で結構苦労していたようですね。世話をしてくれたことに感謝しなければですね。
「……そうだな。まあ血が繋がっているわけではないが」
レリアの方をじっと見ながら、博士はどこか悲しそうに言いました。
「そうだとしても、私達は家族です。そうですよね?」
我々に負い目を感じていたのでしょう。
「! ……そうだな。きっとそうだ」
当時はよく分からないままああ言いましたが、博士の心に響く言葉になってくれたようでした。
博士は驚いたように目を見開いて、そう言いました。
「戦闘面の話は……いますべきじゃないな」
そう言って博士は笑いました。
「俺は用事がある。すまんが先に失礼するぞ」
博士はそう言って去っていきました。
「分かりました」
◇
「リレイー! この言葉はなんて意味?」
「アルファ! これってどうやって使うの?」
「リレイー! あの部屋は何してるの?」
レリアは事あるごとに私やアルファに色々聞いていました。
今と比べてかなり元気な様子でした。
昔の私と同じですね。私に関してはは対象が主に博士でしたが。
「ああうん、あそこの部屋は博士が研究してるんですよ……と、ところで質問が多くないですかね?」
「えー、別にいいじゃん」
「ま、まあそうですけど……」
「リレイ、大変そうだな」
アルファがにやけながらそう言ってきました。
「……なんですか、その顔は」
「いや、昔のリレイとそっくりだなぁと」
「それを言われると何も言い返せませんねぇ……」
「ま、結局どっちでも可愛いもんだな」
「そうですね」
そう言って私達は笑い合いました。
どうやらフェニックス、特にプロトタイプである私達は成長が早いようで、生まれて十年経ったか、という頃でしたが、その頃には私達の人格はほとんど完成していました。
レリアがまだ精神的に幼かった時期は、兄妹というより親子のような気持ちだった気がします。
それも一年もしたら肩を並べるほどになりましたがね。
――とまあ、ここまでが我々が家族たる所以の話です。
ここからは、あのアルファについての話になります。
◇
あの時から数年後――忘れもしません。あれがアルファが今のようになってしまった事件です。
銃声が鳴り響く戦場の中、私はレリアと無線越しに通信していました。
『私はアルファの方の援護に行ってくる。リレイはそこで防衛していて。そこが取られたらまずい』
レリアは数年経ち、かなりたくましくなりました。
それと同時に無口になり、感情をあまり表に出さなくなってしまいましたが。
やはり、あの頃もプレッシャーが辛かったのでしょう。
私もその時は未熟で、気づいてあげられませんでした。
「分かりました。敵を蹴散らしちゃってください」
『もちろん』
そして、それが起こったのは、私がその自分のいた地点を制圧し終えた後でした。
「第二前線拠点制圧完了。次の指示をお願いします」
『分かった。では次は――』
通信相手はジェイル。彼は戦闘の際の司令を行っていました。
今考えればバリアス連邦のリーダーである彼がそれをするのは少し不思議ですね。
アルファの方角から爆音と共に大きな炎が立ち上りました。
『今の音は?』
「いえ、分かりません。ここにはそこまでの敵はいないはずですが――」
周辺にそのようなことができる機械獣はいないはずで、できるとすればアルファとレリアくらいなものでした。
『方角は――アルファとガンマのいる方角か。今私達から通信をかけているが、応答がない。お前からも通信をかけてみろ、それでも出なかったら援護に向かえ』
当時の私達は、多くの研究員から人間としての扱いを受けておらず制作順に合わせた番号で呼ばれていました。
なぜかジェイルは呼び方以外はまともでしたがね。
「了解しました――」
通信をかけましたが、案の定出ませんでした。
「ウィリアム司令、出ませんでした。今から援護に向かいます」
『そうか。では頼んだぞ』
「了解しました」
「ここがよくないかも」「ここが面白いかも」などのご感想等あれば頂けると幸いです。




