一人の父親、二人の兄妹
「博士! これはどうすれば……」
「博士! これってなんですか?」
「博士! アルファが……」
恥ずかしながら、この頃の私は精神的に幼かったので、博士へのある種の依存のようなものがありました。 私は事あるごとに博士に色々聞いていましたね。
子供といえば子供なので、当然とも言えますがね。
「も、もう分かった。一旦しばらくアルファと遊んでいてくれ。今は忙しくてな。すまん……」
狩原は重ねられた書類を前に、かなり疲労した様子で私にそう言いました。
「あ、ごめんなさい……分かりました」
リレイは少しだけ悲しそうにそう言って、去っていった。
「随分苦労しているようだな」
小さく笑いながら、ジェイルは言った。
「そうだな……アルファの数倍手がかかる。見た目と比べて数歳ほど精神年齢が低いのはアルファと同じだが、アルファはそれでももっとおとなしかったからな」
狩原は頭を抱えながらそう言った。
「設計ミスか?」
「確かにそういう見方もできるが、これが人間らしくあるということだと俺は思ってる」
「ふっ、相変わらずだな」
「お前もな」
そう言って博士は小さく笑いました。
「アルファ兄さん! これってなんですか?」
「ん? それはな、通信機だ。ここをこうやって操作すると……ほら、これで通信できる」
あの時いたアルファと、同じアルファです。
後で話しますが、昔はこんな感じで優しい人だったんですよ。
少し正義感が強すぎた節はありますがね。
「なるほど……そうなんですね!」
◇
「量産機の開発が成功しました! こちらがレポートになります」
一人の研究員がレポートを渡しながら、博士に報告しました。
「分かった……概ね予想通りだな。やっぱりリレイをベースに作るのは間違ってなかったか」
「……私を、ベース?」
当時の私は自分が何のために作られたのかを聞かされてはいましたが、根本的に理解していたわけではありませんでした。
「ですね。これで機械獣共を駆逐できます!」
「そう早とちるな。フェニックスは兵器である以前に、俺たちと同じ思考を有する人間だ。あまり道具として扱わないように」
「……りょ、了解しました」
「博士、私をベースってなんですか?」
私は気になって聞きました。
「それはな。お前のデータを元に、お前の親族のようなものを作ったって感じだな。お前たちフェニックスは人類の救世主になれる。お前はそれの足がかりになってくれたんだ。ありがとな」
「そうなんですね……ありがとうございます!」
言っていることの意味は半分程度しか分かりませんでしたが、褒められた気がして嬉しかった覚えがあります。
「……そうだ」
当の本人はそうでもなかったようですがね。
恐らく、私達を兵器として使うのにまだためらいがあったのでしょうね。
◇
私がカプセルから出されてから、一年が経過していました。
もちろん、機械獣との戦闘にも参加していました――
「リレイ。今日は戦線を上げた影響でかなり大変なになりそうだ。ちゃんと覚悟しておくんだぞ」
「勿論です。分かっていますよ、アルファ」
私は銃のメンテナンスをしながら返事をしました。
「命大事に、だぞ。それじゃまたな」
「はい、また」
――そういえば、アルファはタメ口だったみたいだけど、なんでリレイだけ敬語なんだ?
それは、私はそうなるように作られ、教育されたからですね。これも量産型に繋げるためだったようです。
――なるほど。
その日の戦闘は激しく、こちらの部隊にも損害が出ました。
私とアルファは目立った傷はありませんでしたがね。
「アルファの小隊の負傷兵は二十五名、うち重症者は十名……総員三十五名に対して結構な損害ですね」
前線に出る部隊だったので、私の隊の二倍ほどの損害がありました。
「……そうだな」
アルファは瞑目してそう言いました。
「そう気落ちしないでください。私達が守れる人数には限界があります。今日を精一杯生きましょう」
私はなるべく励ますように笑って言いましたが、アルファには響かなかったようです。
「……そうだといいが」
「リレイ、アルファ……レリアが完成したぞ」
その時、博士が静かに扉を開け、言いました
「前に行っていた計画は達成できたんですね」
前に言っていた、というのは、博士が昔急遽、予定になかった私達と同じフェニックスのプロトタイプを作る、と言っていたことですね。
「そうだ、見に行くか? 忙しいならいいが」
確か、アルファは博士と話すときは敬語でしたね。
博士の見立てでは周りの人間が敬語だったので、それを真似した可能性が高いそうです。
「いや、行かせてください」
「私も是非」
「ここがよくないかも」「ここが面白いかも」などのご感想等あれば頂けると幸いです。




