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彼ら四人の関係、過去

 リレイが扉の外へ出ると、星流が待っていた。


『おや、盗み聞きですか? 趣味が悪いですね』


「そ、そんなことないぞ! 聞こえてないから……叫んでた声だけちょっと聞こえたけど……」


 最後は頬を掻きながら小さく言う星流。


『やっぱり盗み聞きするつもりだったんですね』


「……そこは否定しないでおこう。と、ともかく! どうだった? 大丈夫そうなのか?」


 星流は少し大きな声を上げ、話題を転換した。


『どうでしょうね。少し一人で考えたいみたいです。あとはレリア次第でしょうか』


 考えたいと言っていた。

 リレイの言う通り、レリア次第だろう。


「そうか……あ、というか呼び捨てになってないか?」


『ええ、記憶が戻りましたので。アルファしかり、家族にさん付けはあまりしないでしょう』


「確かに……って、記憶戻ったのかよ!」


 星流はリレイの記憶が戻ったことを知らないようだった。


『先駆けで戻らせていただきました』


「いやまあそこはいいんだが……全部戻ったのか?」


『朦朧としている部分はありますが、ほとんど戻りましたね』


「そうか……良かったな」


 星流は素直にリレイを祝福する言葉を述べた。


「って待て、あと家族って言わなかったか? それにアルファもって……」


『ええ、言いましたね』


「……めっちゃ気になるからそこも説明してくれないか?」


『うーん、少し長くなりますね。話してもよろしいですか?』


「他にやれることもなさそうだし……頼む」


『分かりました……がとりあえず場所を変えましょう、ここではレリアに聞こえてしまうかもしれません』


「あ、そういえばそうだな。分かった」


 暫く通路を進んだ辺りで、リレイは立ち止まった。


『さて、この辺でいいでしょうでは、最初からになりますね。私の最初の記憶は確か――』


 ◇


 私は培養カプセルの中で目を覚ましました。

 どうやら培養カプセルのおかげで最低限の知識は詰め込まれているようでしたが、私には何も経験がなく、この頃は子供同然でしたね。


「やるではないか、狩原(かりはら) 太郎(たろう)博士。彼が目を開けたぞ」


 そう言ったのは、ジェイル・ウィリアムという男でした。壮年の金髪の男性です。


 そして狩原太郎博士――つまり、私達の製作者であり、親のような存在だった博士のことです。


 彼らの目の前には大きな培養カプセルがあり、私はその中に入っていました。

 私の元の体、つまりこの培養カプセルの中の体は、確か星流さんと同じ青髪でしたね。


「はは、まあな。それで、プロトタイプ二人の管理は俺に全任してくれる、という話は忘れていないよな?」


 博士は、白衣を着ていて、黒い髪をでした。

 確かこの頃の博士は成人して数年経った程度の年齢だったはずです。若き天才ですね。


「勿論だ。無論、こちらから多少の研究や関与などはさせてもらうつもりだが、それも基本的には君の自由意志が尊重されるよ」


「……俺は、未だにお前のそういうところが理解できないな」


 少し嫌悪感の混じった表情を見せながら、博士は言いました。


 ジェイルは、バリアス連邦のリーダーでした。博士は彼の思想の一部を嫌っていました。

 ではなぜバリアス連邦に居たのかと言うと、フェニックスの開発のために仕方なく参入した形だったからですね。


「それは君にも言えることだ。私も、君のその自らの所有物に情をかける心情が理解できない。だが、君のその行動、意思は尊重しよう。それではまた会おう」


 ただ、そこまで仲が悪いわけではなかったように見えます。


 そう言って、ジェイルは去っていきました。


「分かった」


 博士は、そこに経ったままじっと私を見つめていました。


「……アルファには名前をつけられないままだったな」


 後悔するように下を向いて、博士はそう言いました。


「アルファにはかわいそうかもしれないが、やっぱりお前には名前をつけてやりたい」


 私の方を向いて、博士は言いました。


「そうだな、リレイ、にしよう」


 私はそれがいい名前なのかなどはよく分かりませんでしたが、響きがなんとなく気に入った記憶があります。


「気に入ってくれたか? なら嬉しいな」


 博士は微笑んで言いました。


「名前の意味は、中継地点、という意味だ。お前はフェニックスを量産機に繋ぐ存在になる……そして、我々人間と君たちフェニックスのことも繋いでくれるような人になってほしい。そして、これが一番大事だ――」


 博士は一拍置いて、言いました。


「お前自身が、それに縛られないような人になってくれ」


 ◇


「さぁ、今日が開封だったか。楽しみだな」


 翌日、二人はまた私の前にやってきました。


「そうだな。まあ俺とお前の楽しみの意味は違うだろうが」


 培養カプセルの中にいたからか、一日しか経っていないのに私の体は少し成長していた覚えがあります。


「そんなことは些細な問題だ。始めるぞ」


 博士は小さく返事をしながら、隣のパネルをパチパチと操作しました。

 すると、次第に中の液体は徐々になくなっていき、私はカプセルの中の床に倒れ込みました。

 

 意識はありましたが、うまく体に力が入りませんでしたね。


「確かこの後は医療室に運ぶんだったか」


「なんだ、ちゃんと覚えていたのか……こっちに来てくれ、リレイを頼む」


「了解しました……名前はリレイでよろしかったでしょうか?」


 数人の研究員らしき人物たちが、担架に私を乗せました。


「そうそう。頼んだぞ……あと、必要な用事が済んだらこれを着せてやってくれ」


 そう言って博士がその研究員のうちの一人に服を渡しました


「服……ですか。了解しました」


「随分用意がいいな」


「当然だろ? 自分の息子になるんだからな」


「そうか。頑張り給え」


 ジェイルは博士の肩をポンポンと叩き、部屋から出ていきました。

「ここがよくないかも」「ここが面白いかも」などのご感想等あれば頂けると幸いです。

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