レリアの過去
健人、君が彼女を見つけたときと同じように、私も外の世界で彼女を見つけた。
「誰?」
「ま、待ってくれ! 私はただ散歩をしていただけで……と、とにかくその銃を下げてくれないか!?」
あの頃はよく散歩など、特に意味のないことで外に出ていた。
そうやっていつもどおり散歩をしていたころに、私は鉢合わせた。
いきなり銃を向けられたときは、怖かったな。
その頃の私は戦闘に出たことなど一度もなかったからな。
その癖迂闊に外に出すぎていたが。
「……はぁ、そうしないとまともに話もできなさそうだね」
彼女はため息を吐いて、銃を下ろしてくれた。
「あ、ありがとう」
「で、誰?」
「言い忘れていたな、私はケイル・ウィリアム。興生の管理委員をやっているものだ」
「……興生?」
「知らないのか? 興生というのは、この世界で人間が生きるために、偉大な創設者様が作った都市だ! あそこは凄いぞ!」
自慢げに私は言った。
「ふーん……そうなんだ」
が、彼女にとってはどうでもよいことのようだった。
「ま、待て! 興味がないのか? なぜだ?」
「なぜって、まあ今の生活に満足してるからかな?」
「いやいや、興生なら――」
「分かった分かった、もういい? 私帰るよ?」
呆れた様子で彼女は言って、荷物を持ち上げた。
「……よし、分かった。実は折り入って頼みがあるんだ」
「……何?」
「私達を、助けてほしいんだ。引き受けてはくれないだろうか」
私は、頭を下げてそう言った。
「初めからそう言えば良かったのに」
◇
「じゃあその周辺の機械獣の駆除と、援護要請があったら来てほしいってことね」
私は、興生へ招き入れ、施設内で彼女の腕を見た後、その実力は信頼に値すると考え、依頼した。
もちろん、興生ないでの融通が効くようにこちらでも報酬を用意した。
まあ、あまりそれを有効活用していた様子はなかったがな。
彼女の言ったとおり、外で生きることに満足していたようだ。
「そうなるな。報酬もさっき言ったとおりだが、どうだ? 引き受けてくれるか?」
「まあやってもいいかな」
彼女は曖昧な言葉ながらも、受け入れてくれた。
「そうか! ありがとう!」
「どういたしまして」
彼女は無表情でそう言った。
当時は、彼女の容貌の良さも相まって、随分魅力的に見えたものだ。
「っ! ……はい」
彼女にとってそれはただの足枷だったようだが。
◇
彼女は防衛隊の別働隊として動くことになった。
一部の人間は実力があるのか、と懐疑的で、その実力を見せつけることになった。
その方法は、直立射撃、膝立ち射撃、伏せ射撃の三つの姿勢から、三十発ずつ放ち、その命中精度で実力を測る、といったものだ
射撃訓練場の中、彼女の銃が火を吹く。
結果は、伏せ射撃は少々スコアが低いものの、全体的にかなり高水準、どころか現存の防衛隊の誰よりもスコアが高かった。
「おお! お前見かけによらずやんじゃねぇか! これなら安心して任せられるな!」
グレーの迷彩服を来た一人の男がレリアに近寄って称賛した。
「そうだな。これは凄い」
他の隊員も、ほとんどが称賛をしていた。
「どうだ、これで分かっただろう?」
彼らが意見を変えていくのを見て、少し気分が高揚したものだ。私は彼女の実力を事前に見ていたからな。
「ああ、これなら大丈夫だ」
「じゃあ、私は別の仕事があるから失礼するぞ」
そんな中、彼女が受けていたのは称賛だけではなかった。
「いきなり来て、全部かっさらってくなんて、嫌なヤツだな」
「ああ、なんであんなやつに……」
彼らは小声でそう言っていた。
その時、私はそれが聞こえていたが、多少は仕方がないだろうと無視した。
だが今思えば少しでも突っかかるべきだっただろう。
◇
彼女の別働隊、もとい彼女自身の功績は、凄まじいものだった。
機械獣の襲撃が減り、それで浮いた物資や資金を研究に回すことができた。そのおかげで、今の興生の隠蔽性能がある。地味な活躍だが、彼女の存在は大きかっただろう。
だが、そんなある日、彼女と連絡が通じなくなってしまった。
「連絡がつかない……?」
「はい。先日、襲撃があったために援護要請を送りましたが、通信機器が繋がりませんでした。本日も連絡をしましたが繋がらず、先程も連絡をしましたが同様に繋がりませんでした」
俺の部下が、そう報告しに来た。
そのときの俺の身分は少将だったか、それなりに高い地位だった。
「幸い、襲撃の撃退は可能でしたが、このタイミングでレリア氏がいなくなれば多少の影響は出るかと」
「……そうだな。ないとは思うが、彼女自身の身に危険が迫っている可能性もある。捜索しよう」
「了解しました」
「それと、私も協力しよう」
「ご自分でも行かれるのですか?」
「私は有益な情報をそこそこ持っているからな。行って損はないだろう。それに今は暇だしな」
私は笑ってそう言った。
「ここがよくないかも」「ここが面白いかも」などのご感想等あれば頂けると幸いです。




