昔話
「もしかして、レリアと健人さんが負けたのか……?」
目の前の惨状を見て、そう呟く星流。
辺りの建物はほとんどが倒壊し、残っている建物も穴が空いているなど、大きな損害を受けている。
彼らの手には装備品らしきものが抱え込まれているようで、どうやら逃げてと言われたが、装備などを持ってきて戻ろうとしていたようだ。
「そ、そんなことありません! 死んじゃうわけ……」
焦った様子で、ニイラが言った。
「落ち着けって! 負けたとしても、死ぬとは限らないだろ? あのアルファとかいうやつの様子が様子だし……」
『そうですよ。アルファは、殺すことはしないはずです』
「そ、そうですね……行きましょう!」
二人が宥めると、早足にその惨状の中心へと向かっていった。
「ちょ、ちょっと早いって!」
『……少なくともレリアのことは。健人さんは無事でしょうか?』
一人、そう呟くリレイ。
「――おい! なんだお前ら、逃げてなかったのか?」
遠くから健人の声がした。
「おや、大丈夫だったようで、安心しました」
そう言ってリレイも二人を追いかけた。
◇
『色々と世話をしてくだってありがとうございます、健人さん』
天井にケーブルが張り巡らされた通路の脇で、健人とリレイの二人は会話していた。
「おうよ、大したことはねぇぜ。これも俺の仕事の内だ」
健人は笑ってそう言った。
『ところで、ここは一体どういった場所なんでしょう? 私達が元々いた二層であることは分かっているのですが、いかんせん詳しいことを知りません』
「二層が最先端技術が集まる場所だってのは知ってるだろ? だからここは、その技術の研究をする研究員の多くが集まる場所だ。上がケーブルだらけなのはそういうせいでもあるな」
『なるほど。確かに元いた学校? のような場所より機械が多く見られますしね』
リレイは上を見上げてそう言った。
そう言って話し合っていると、通路の奥からコツコツと足音が聞こえてきた。
「おっ、ケイルじゃないか」
健人はその人物に気さくに挨拶をした。
「健人か。彼女……レリアはどうなっている?」
ケイルと呼ばれたその壮年の男は、コートを着込んでいて、くすんだ金髪をしていた。
その男は神妙な表情で健人にそう聞いた。
「……そうだなぁ、随分落ち込んでるってとこか?」
健人は頭を掻きながら、困った表情で返した。
「落ち込んでいる……なるほど。やはり、今回の件は彼女にも関係があるということか」
ケイルは考え込むような動作をした後、そう言った。
「ん? どういうことだ?」
健人は不思議そうな顔をして聞いた。
「アルファと言われた男には合ったことがないが、アルファがどういった存在なのかは知っていた」
ケイルは健人の方を向いて、そう言った。
「そして、彼女には昔に合ったことがある。それもここでな。それがアルファについて私が知っている原因でもある」
「ここって……興生にか?」
「ああ、そうだ」
『なんと、私も知りませんでした』
「君は……リレイと言ったか。すまない、挨拶が遅れたな。私はケイル・ウィリアム。ここの管理委員というものをやっている」
ケイルは小さく頭を下げて挨拶をした。
『これはご丁寧に。私はリレイと申します』
「で、ここにレリアが来たことあるってどういうことだ? 結構気になる話なんだがよ」
「長くなるぞ」
「そいつぁちょっと困るな、今は忙しいもんで……までも、話す時間くらいならあるか。頼んだぜ」
健人はそう言って笑った。
「聞いても、失望しないでくれよ」
「ここの舵を取ってくれてる最高責任者様に失望なんて偉そうなことは言えねぇよ」
そう言って健人は笑った。
「リレイも、話しても大丈夫だろうか。よく知らない人間のよく分からない話だ、聞かなくても問題ない」
リレイの方を向いて、ケイルはそう言った。
『いえ。私にも関係があることですので、是非聞かせてください』
「そうか。では話そう。これは興生ができて間もなく、まだ不安定だったころの話だ――」
「ここがよくないかも」「ここが面白いかも」などのご感想等あれば頂けると幸いです。




