一人減り、もう一人は……
「訓練じゃないよ。あなたを止めるために私は……あなたを殺す」
そう言った後、レリアはアルファへ向かって素早く突進をし、ブレードを振る。
「!」
「これを避けられないのは鈍ってるんじゃないの!」
アルファはそれを避けきれず、腕に小さく傷を受けた。赤色の液体がちらりと覗く。
『俺も忘れんなよっ!』
健人が右手に持ったスパイレラ大のブレードで、アルファに斬りかかる。
が、避けられてしまう。
『でもまだあるぜ!』
と思いきや、今度は左手に持っていたショットガンを構え、発砲する。普段より大きい反動にのけぞりながら、それを制御する。
照準を合わせた瞬間にはアルファはそこに居なかったが、着弾と同時にアルファがそこに移動した。
「ぐっ!」
籠手で急所を防ぐが、当然散弾のためそれ以外は体に当たってしまう。が、そこまで深い傷とはなっていないようだ。
一度距離を取るアルファ。
「健人、意外とやるね」
『これでも防衛隊の大佐ポジションやらせてもらってるからな! さぁて、このまま押し切るか!』
「……それは難しいと思うよ」
険しい表情でアルファの方を見つめるレリア。
「思ったよりも健人とやらも人間のくせに強いね、虫けらから動物程度に評価を上げてあげよう」
偉そうにそう言うアルファの傷は、既に跡形もなくなっていた。
『! そいつぁご苦労なこったな……』
健人は動作が止まった。
『おい、どうなってんだよあれ』
健人は小声でそうレリアに聞いた。
「言ったでしょ、難しいって。あれは私は同じ生物兵器フェニックス。文字通り高い生命力が売りだから、あの程度の傷じゃ一瞬で完治されて終わり」
『……生命力が売りの割には他の部分も随分強そうだけどな』
「私達は試作機だったから量産型とは違う部分が……いや、この話はいらないね。とりあえず、重い一撃を入れないと進展しないってこと」
『単純明快だな。どうやら弾も特注のにしなきゃいけねぇみたいだな』
そう言って健人はショットガンをリロードした。
弾薬を変えたようだ。
「さしずめ第二ラウンドってとこだね。次は俺からやらせてもらおうかな」
アルファは手の平を地面に向けてなぞるように動かすと、それに合わせて巨大な炎が展開された。
「……やっぱり使ってくるか」
『おいおい、身体能力だけじゃねぇってのかよ!?』
レリアと健人は分断されてしまった。
『クッソ、火の中でも動ける機体じゃねぇってのに……』
健人が悪態を吐いていると、アルファが炎の中を突っ切って飛び込んできた。
「まず数を減らすのは戦闘の常識だよね」
ブレードを失ったため、拳で殴りにかかるアルファ。
『はっ! 流石のあんたでも拳じゃあ俺の機体には――』
腕を交差させて構え、てその攻撃を受け止めようとする健人だったが、その言葉は強い衝撃によって遮られた。
『かはっ!』
ただの拳による機体越しの攻撃にも関わらず、少なくないダメージを受ける健人。
「よかった、身体強化を乗せれば効くみたいだね」
健人のスパイレラの腕は大きな窪みができており、そこから時折火花が散っている。
『……んだよ身体強化ってよ、まるで物語の中の魔法見てぇだな。MPでも使ってんのか?』
「そんな原理の分からないものじゃないよ、身体のエネルギーを少し無理して使ってるのさ。過負荷能力って言うんだけどね。さっきの炎も同じだよ」
『こっちからしたらよく分かんねぇな。んなもん魔法と似たりよったりだ――なっ!』
言い終わると同時に、弾を変えたショットガンを放つ健人。
「危ないな」
それをひらりと躱すアルファ。
その直後、背後の炎が強く揺らぎ――
「読めてるよ、じゃあ返してもらうね」
レリアが斬りかかるが、籠手で受け流し、腕を手刀で叩いた。
「っ!」
その痛みでレリアはブレードを一瞬だけ離してしまい、そのままブレードはアルファの手に渡る。
レリアはすかさず蹴りを入れるが、受け止められてしまう。
アルファはその隙を逃さずに殴りを入れる。その拳には青白い閃光が迸っていた。
「斬りたくはないからね」
それが当たると、轟音とともにレリアが吹っ飛ぶ。
『……随分やるじゃねぇか』
その健人の声色には、動揺が見て取れる。
「強がっても無駄だよ? それと、今度は本気だからね」
直後、アルファが消失した。
『っ! 後ろか――』
「残念、横だよ」
アルファは健人の横に出現し、そのスパイレラの右腕を切り落とした。
『ちっくしょう……!』
幸い、ショットガンを持った左腕は残っていたため、二連続で発射する健人。
だが、そんな苦し紛れの攻撃が当たるわけもなかった。
「当たらないよ」
そう言って、アルファはスパイレラの左腕を切り落とし、手に握られたショットガンを奪ってから、腕をスパイレラの方へ蹴り飛ばした。
『ってぇ!』
その衝撃はスパイレラの
「終わりだよ」
アルファはスパイレラの首を切り落とした。
コックピットがむき出しになり、生身の健人が現れる。
「なんだ、急所は首じゃなかったのか」
そのまま近づいていくアルファ。
「ははっ、あっけねぇな……大佐が聞いて呆れるぜ」
自嘲気味に笑う健人。
コツコツと鳴る足音は、健人にとって死神の足音だっただろう。
「……なあ、なんか知んねぇけどよ、兄妹なんだろ? あいつと。あいつは、殺さねぇよな?」
身体的外傷は少ないが、彼はそこから動くことはしなかった。
自分の身体能力では、逃げ切れないことが分かりきっているからだ
「君に言われるまでもなく、そんなことしないよ」
「そうかい。そりゃよかった」
小さく笑う健人。
「じゃあ――」
直後、レリアが吹き飛ばされた方向から大きな砂埃が舞い、何かが飛翔してくる。それはアルファに突進していった。




