戦いの始まり
「……アルファ」
レリアは怒りと悲しみが入り混じったような表情で、そう言った。
「え? 知り合い?」
星流が困惑気味にそう言った。
『アルファ……? あの容貌……見覚えが……』
リレイは珍しく、狼狽した様子でそう呟いた。
「レリアじゃないか! なんでそんなやつらといるんだい? さあ、早くこっちへ――」
アルファ、そう呼ばれた男がレリアにそう親しげに話しかけるが、それはレリアの叫び声によって遮られた。
「うるさい! その体で私の兄を名乗らないで……」
声を荒らげ、アルファに向かって叫ぶレリア。心なしか、その声は震えているようにも聞こえる。
「酷いなぁレリア。そう言われると傷付くな……」
「分かった、分かった……散々人を傷付けておいて、随分な言い草ね。あなたのことはどうでもいい、目的は?」
レリアは酷く悲しげな表情を見せた後、未だ震える声でそう言った。
「なんでって、ここに父さんを害した人間どもが沢山いるからさ」
「違う、一括にしないで。博士を害したのはカイラだけ、他人を巻き込まないで」
『カイラ、博士……私の作り主? 我々四人は家族で……では目の前のアルファは?』
二人が会話している横で、リレイはなおもぶつぶつと独り言を言っていた。
「ふーん、そうかい? まあどうでもいいさ――」
アルファがそう言った後、彼の左手がブレた。
すると、手には先程までなかったはずのブレードが握られており、そのブレードの光が数回、火花を散らした。弾丸だ。
その弾丸が放たれたであろう方向、施設の通路に開いた大きな穴、その向こうには銃で武装した軍隊らしき集団が十人ほどいた。
「また君たちか……当たると痛いからやめてほしいんだけど――」
「何をやっている! 射撃タイミングを合わせろ! 射撃用意だ! 撃てッ!」
直後、銃弾の雨が降り注ぐ。
「これじゃ当たらない……!」
「撃ち方やめ!」
指揮官らしき人間が、指示をしていた。
刹那、銃弾によりできた粉塵の中を突っ切り、黒色の巨体が出現した。
『俺の出番だなぁっ!』
健人と、スパイレラだ。手にはその巨体に見合うだけの大きさを持った銃がある。
そう叫びながら、粉塵の中に飛び込み、それを晴らす。
「おおっ、大佐が来てくれたぞ!」
防衛隊の誰かが、歓喜の声を上げた。
だが、道の横に逃げていたらしいアルファから、ブレードによる攻撃を受ける。
『ぐっ!』
健人はそれに耐えるが、スパイレラがその力で押される。
スパイレラには目に見える傷がついた。
「あれ? 意外と硬いね。それじゃあ――」
『今度はこっちの番だよっ!』
銃を構え、発砲する。重厚な音とともに、アルファの先の壁に複数の弾痕が残る。散弾銃だ。
当のアルファにはかすりもしなかったようで、もう既にスパイレラの後ろに回っている。
「じゃあ次は俺だね」
ブレードを振るが、空振る。
『っぶねぇ! 流石に二度も不意打ちは食らわねぇよ!』
「へぇ、意外と――」
アルファがそう言おうとするが、遮られる。
手に持ったブレードが弾き飛ばされ、他の者の手に渡る。
「あんまり私の友達に手出ししないで欲しいな」
レリアだ。
ブレードをアルファに向けて構えるが、その手は小さく震えている。
「おぉっ、流石レリア。今のは気が付かなかったよ。いっつも訓練のとき――」
なおも親しげに言うアルファ。だがその言葉は、レリアの攻撃によって中断させられた。
「……うるさい。黙って」
ブレードを振るが、アルファが手につけた籠手によっていなされてしまい、距離を取られる。
「おっと、危ないね。どうしてそんなに酷いことするんだい?」
飄々とした態度で、質問するアルファ。
「なんで……」
下を向いて小さく言うレリア。
「うん?」
「なんで分からないのっ! 同じ体、同じ声、全部あの時と同じなのに! 全部違う! なんで……」
感情を露わにして叫ぶレリア。怒り、悲壮感、郷愁、様々な感情の混じった声。
「なんで……か、分からないけど。レリアが悲しんでるのを見ると俺も悲しいな」
初めて、本当に悲しげな表情で呟くアルファ。
その言葉を聞いて、ハッとする。
「……分かった。もう、全部、私が終わらせるしかないんだね」
覚悟を決めた表情で、その瞳でアルファを見つめて、そう言い放った。
『……色々あったんだろうが、正直言うとよく分かんねぇ。だが、今は共闘して、コイツを無力化するのが最優先だ、だろ?』
健人はレリアにそう言った。
機体の向こうの彼は、不敵な笑みを浮かべていることだろう。
「うん、そうだね。やろう」
アルファに向けて、ブレードを構えた。
(今のアルファは完全武装状態……対等な条件なら勝てるけど、今の自分の状態と向こうの状態じゃ差がありすぎる。じゃあ――)
「星流、ニイラ、リレイ! 三人は逃げて!」
未だどうしたらいいか分からずうろうろしていた二人に向かって、レリアは叫んだ。
「え!? で、でもいいのか!?」
思わず聞き返す星流。
「アルファは強い、近くにいたら巻き込まれるかもしれないから、逃げて!」
「で、でも!」
不安そうにニイラもそう言った。
「早く!」
「分かった! ニイラも行くぞ、どうやら足手まといみたいだ……」
「……分かりました」
渋々了承するニイラ。その表情には悔しさも混じっているように見える。
「絶対死なないでくださいね!」
「死ぬつもりなんてないよ!」
そう言って笑うアルファ。
「邪魔なやつが消えて助かるよ」
そう言って濁った瞳をレリアに向けるアルファ。
「まだ邪魔者はいるけど、戦える……いつもの訓練みたいにね」
アルファはそう言って笑った。
「訓練じゃないよ。あなたを止めるために私は……あなたを殺す」
「ここがよくないかも」「ここが面白いかも」などのご感想等あれば頂けると幸いです。




