一時の幸せと異常事態
翌日――
「さーて、今日からこの四人でやっていくからな。じゃあ席につけー」
そう言って手をパンパンと叩く智也。
(人が増えるけど紹介とかはないんだな……)
増えた周りの席にいる二人を見てみると、片方は先日レリアが合ったニイラ・テイラーのようだ。
「あっ、レリアさん……」
レリアとニイラは隣同士の席になったようだ。
「同じクラスだったんだね……まあ人数少ないし予想はしてたけど」
「頑張りましょう!」
「うん、そうだね」
レリアとミレイは元々知り合いだったことがあり、すぐ馴染んでいるようだ。
「そ、それと、他のみなさんもよろしくお願いします」
「え? よ、よろしくお願いします」
星流は急に話しかけられたことに若干戸惑いつつ、挨拶をした。
『よろしくお願いしますね〜』
リレイはいつもの堅苦しさを和らげて挨拶した。
「前までマンツーマンだったのに、いきなり三人も増えるなんてね」
「えっ、今まで生徒一人だったんですか?」
「そうだよ。最近はめっきり減ってね。昔はクラスがいっぱいになるくらいいたんだけどねぇ」
「そうなんですね……」
「まあそれは俺の仕事が減るってことではあるけどね。さ、授業始めるぞー」
◇
同日、昼の十二時。
「あれ? もう終わりか? すまん、もうちょっとだけやるぞ」
(あっ、なんか懐かしいなこれ……いっつも先生が……あれ? 先生は誰だったっけ?)
星流は前世に思いを馳せていると、急に思い出せなくなったようだ。
「んで、二〇九〇年が大体『人類の敗北』なんて言われてるな、でこの二年後に興生の設立者が台頭してきたわけだ」
(生活様式は分かるのに、人なんかが全く思い出せないな……)
「それで、この頃の興生はかなり安定していなくて、今、二一〇〇年には興生がかなり安定したんだ、まあ残りの細かい話はまた今度だな。さて、今日は終わりだ、昼飯食ってこい」
「はい、分かりました先生」
ニイラ・テイラーは丁寧に返事をした。
「……はあ、歴史の授業は疲れるなぁ」
『おや、どうしたんですか?』
「俺の前世とか、色々勘ぐれちゃってさ」
『それはまた……大変ですね』
「じゃあ俺はまた学食行ってくるかな……リレイはどうする? 食べられないけど……」
『どうせ暇なのでついていきますかね。レリアさんもどうですか?』
「学食? 行ってもいいよ」
『じゃあ行きますかー』
◇
「やっぱり美味しくて助かるな」
星流の手元にあるのは、前と同じハンバーグ定食のようだ。
『……私にも分けてくれませんか?』
「……それは結構きついな」
『残念です』
「あそうだレリアさん、聞きたいことがあるんです」
「何? ……っていうか別に敬語いらないよ?」
「え? えぇっと……まあじゃあ頑張ってなくします」
「……なくなってないね」
「ま、まあともかく! 聞きたいことというのは、ざっくりこの世界についてで、単刀直入に言うと、ここって日本?」
「うん、そうだよ?」
レリアはなんとなしにそう言ってのけた。
「……マジ?」
「マジ」
レリアは無表情でオウム返しのように同じ言葉を繰り返した。
「じゃあつまり、俺は過去からの転生者ってことになるのか?」
「……考えたことなかったな。確かにそうなるかも。そもそもが別世界からの転生って、具体的に多言宇宙論をもとに、別の宇宙ということになるのか、別の惑星という意味なのかも分からないし、過去からの転生の方が説得力があるね」
顎に手を当て、考えたことを口にするレリア。
「か、科学的なことは置いといて……って、最初考えたことなかったって言った?」
考えたことがない、つまり自分に興味がなかったということになる。
「……耳ざといね。まあそりゃ知らない人だし……」
そう言って目をそらすレリア。
「ひ、酷いけど正論……」
酷いとは思うが言い返せないので、なんとも言えない表情をしている星流。
「と、ともかくこの話はやめといて、なんで俺は転生したんだろうな?」
一旦話を逸し、なぜ自分に転生などという現象が起きたのかを考える方向に向けたようだ。
「そこは分からないね。この辺りに来たのはつい最近だし、何が起こったのかとかも私は知らないし」
『私は、私がこの体になってしまった原因と、星流さんが転生してしまった原因は同じである。と踏んでいます。場所や、そもそもどちらも元の体からかけ離れたものに転生していますからね……ですが、逆に言えばその程度ですね』
そう言って球体の体を左右にふるリレイ。
「……流石にそれだけじゃ情報が少ないかな」
レリアは考え込んだ後に、そう言った。
「記憶……戻った方がいいのか、分からんな」
もし元々幸せだった、などの記憶があれば、元の時代に戻りたくなってしまう。だが過去からの転生となると戻るのも別世界厳しいだろう。記憶が戻った際にどんなことを思い出すか分からないのだ。
『確かに、一概に戻った方がいい、とも言えないかもしれません』
「まあ、考えてても仕方ないか」
『ですね。今を楽しく生きるのが一番です……まあ誰かと大事な約束をしたまま記憶を失っていたりしたら笑えませんが』
「……さ、流石に記憶戻す努力くらいはしようかな?」
冷や汗を垂らしながらそう言う星流。
「……私は、さっきからこっちのことチラチラ見てる人が居るみたいだから、そっち見てくる」
レリアは小さくため息をついてから、そう言って席を立った。
「え? こっちをチラチラ……あ」
星流はレリアが向かった方向を向くと、その正体に気づいた。
金髪の少女――ニイラだ。
レリアはそちらの方へ向かうと、ニイラがすぐレリアに気づいた。
その後、何やら話をし始めたようだ。少しした後、レリアはニイラを連れてこちらに戻ってきた。
「え、えーっと、ニイラ・テイラーです。よろしくお願いします」
ニイラはぺこりと頭を下げ、挨拶をした。
『これはご丁寧に。リレイと申します。どうぞよろしくお願いします』
「星流です。よろしくお願いします」
「昨日私が射撃訓練場で合った子で……まあなんか輪に入りたがってたみたいだから、よろしく」
『もちろんです』
「ず、随分凄い場所で知り合ったんだな……」
あまり銃に馴染みのない星流は、少し戸惑っている様子だ。
「座ってもいいですか?」
「うん、いいよ……いいよね?」
ニイラに許可を取ったあと、二人にも聞くレリア。
『いいですよ』
「うん、俺も全然」
二人は勿論快く許可した。
「ありがとうございます……ところで皆さんはどういった方なんですか? ……主にそこのリレイさん」
ニイラは座ると、リレイの方をじっと見つめながら、そう言った。
(確かに普通は気になるよな……)
『そうですね、どう説明したらいいか……まあ、元々生物兵器をやっていたんですが、気がついたら何故か一部の記憶が吹っ飛び、この体になっていた、といった感じです』
「え? せ、せいぶつ……気がついたら……」
酷く困惑した様子で、ニイラはそう呟いた。
「すっごい分かる、分かるけどそうとしか説明のしようがないんですよ……」
「ち、ちなみに星流さんはどういった方なんですか? あ、あと敬語は大丈夫ですよ。私は癖みたいなものですから」
「そ、そう? じゃあ普通にし……する」
『……タメ口、苦手なんですか?』
リレイは疑問に思って、そう質問した。
「初対面だと敬語が癖でな……昔からなかなか抜けないんだよ」
『ふむ、それでは私は?』
「リレイは……いきなり『わーお、知らない人が私の治療室に! どういった方なんですか?』とか球体に言われたら、敬語も外れるわ」
星流は声真似をして、そう言った。
それを見てレリアとニイラに微妙な顔していた。
「と、ともかく俺の出自だけど、記憶喪失で、気がついたらそこのリレイと一緒の場所で目が覚めたんだ。で
、俺の体は生物兵器らしいんだけど……実感はないね」
誤魔化すように少し大きな声を出した星流。
「……なるほど、いちいち驚いていられないみたいですね」
ニイラは真面目な顔で、そう言い放った。
『なるほど、初期会話テンプレートに新しく『人を動揺させない自己紹介』を追加する必要がありそうですね』
「お、驚きませんよ!」
ニイラはそう叫んだ。
「お前、元は人間みたいなもんだろうがっ! ……こ、コイツは気にしないで大丈夫だぞ」
星流がリレイの頭のパーツを掴んで、ニイラにそう言った。
『ああっ、やめてくださいっ!』
リレイはそれを掴まれ、そう言って抵抗した。
「ふふっ」
レリアはそれを見て、小さく笑った。
『おっと、二度目のレリアさんの笑顔ですね』
リレイはそれに目ざとく反応した。
「そうなんですか?」
「確かに言われてみれば……」
「え? そ、そう?」
レリアは少し顔を赤らめながら、戸惑い気味にそう言った。
『ええ、あまり笑ってくださらないものですから。楽しんでいただけたようで幸いです』
「……まあね。と、とりあえず、みんな食べ終わったし教室に――」
レリアがそう言って立ち上がると、突如けたたましいサイレン音と、警告の音声が鳴った。
『警告、侵入者が発見されました。繰り返します、侵入者が発見されました。一般人はただちに他階層への避難をしてください。防衛隊の皆様は指示を待ってください。繰り返します――』
「……どういうこと?」
少し長めになります。
「ここがよくないかも」「ここが面白いかも」などのご感想等あれば頂けると幸いです。




