忘れられない音、知らない世界
「射撃訓練場……こんな場所もあるんだ」
射撃訓練場と書かれた扉の奥からは、時折小さく銃声が鳴っている。
この興生で人気の職業は『防衛隊』と言って、外からの資源回収や都市の防衛を主とした職業だ。
その職業が人気であるため、このような場所も設けられているのだろう。
(一層は行く予定だけど、時間あるし――)
「……ちょっとだけ見てみてもいいかな」
扉を開けると、銃声は一層大きくなった。防音仕様の部屋のようだ。
「君は……ここの新入りか? まあいい、銃を使うのか?」
職員に声をかけられ、質問をされた。
「いや、とりあえず見るだけ」
「そうか……あんまり変なことをするなよ? 相応の処罰が待ってるからな」
職員はぶっきらぼうにそう言った。
「……うん」
(流石に合ってすぐそれは酷くない?)
レリアは職員の態度に不満げだ。
中では三人ほど射撃の訓練をしている人がいるようだ。
そこには一人、少しこの場に似つかわしくない少女がいた。十代後半程度だろうか。
髪色は黄色で、それをボブカットにしている。
ライフルを使っているようだが狙いは粗く、ほとんどが当たっていないようだ。
それどころか、反動を制御するのがやっとという様子だ。
「あなた、銃の練習してるの?」
レリアはその少女に近づくと、声をかけた。
「え……えっと、はい」
振り返った少女の目は、綺麗な青色をしていた。
肌も白く、健人たちとは人種が少し異なっているようだ。
「じゃあもっとちゃんと構えなきゃ、ライフルならストックをしっかり肩にあてて……いや、まずはピストル使ってみたら?」
「え? わ、分かりました……」
少女は見ず知らずのレリアにそう言われて困惑しているようだが、特に疑っている様子ではない。
少女はライフルのマガジンを抜いて、元の場所に戻した後、ピストルを持ってきて、構えた。
「利き手はどっち?」
「えっと、右手です」
「じゃあそっちの手でしっかり持って……ああ、もうちょっと下の方を持って、それでグリップ部分にピッタリ手がつくようにして……そう」
レリアの指示通りに構えていく少女。
「あとは左手でしっかり支えて……うん、いいね。丸い的に向けて撃ってみて」
少女は言われたとおり初弾を打つが、的からは少しずれたところに着弾してしまう。
「大丈夫、そのまま撃って」
そのまま二発打つと、どちらも的の中心からはそれているが、しっかりと当たっている。
「やった……!」
今まで二発連続で当てるような経験はなかったのか、喜んでいる様子だ。
「やったね……それじゃ、これからも頑張って」
レリアは少女の肩を軽く叩いて、そこから去ろうとした。
「……あの! な、名前は何て言うんですか?」
少女はそれを引き留め、名前を聞いた。
「私は……レリア。ここの新入りってところかな。そうだ、あなたの名前は?」
「私はニイラ・テイラーって言います。ミレイ、で大丈夫です。あの……レリアさん、ありがとうございます」
「うん、分かった……ニイラ。それじゃあね」
◇
「自動販売機……こ、コーラまであるのか」
施設の外、そこにある自動販売機の前でそう呟いている星流。
(前々から思ってたけど――)
「俺は前世も今世も、時間が違うだけで同じ世界で生きてたのか?」
今までのことを思い出しながら確信を持って星流は言った。
「じゃあ、前世には戻れないってことなのか? ……こればかりは記憶がなくて助かった」
(もし前世で幸せに生きていたら、戻れなくて絶望していただろう)
「レリアさんとかに聞いてみなくちゃだな」
「ここがよくないかも」「ここが面白いかも」などのご感想等あれば頂けると幸いです。




