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第6話 青魔導士と猫耳姫、生命連結される

「前から危険だった」


「ええ」


ネフェレットはあっさり認めた。


「ただ、面白い危険さではなかっただけ」


ネフェレットは俺を見た。その顔から、珍しく愉快そうな色が薄れ、もっと古いものが覗いた。それで良くなるわけではなかった。


彼女はまた俺の前に立った。裸足は神殿の床の上で音ひとつ立てない。


緋色の瞳が俺を捉えている。まるで、どこに刺すか考えている刃物を見つめる時のような、辛抱強い目だった。


「よく聞きなさい、ラフェル。わたしは、あなたに世界を救えと言っているのではないわ。男はそういう言葉を聞くと、すぐ頭に上らせるもの。わたしが言っているのは、動けということ。封じておくべきものをこじ開けなさい。干渉しなさい。ロットは嵐の前に漂う臭いにすぎない。埋められたものが身じろぎしている。檻に入れられたものが、柵の強さを試している」


ネフェレットは身を寄せた。お気に入りの罪人に噂話でもするような笑みだった。


「しばらくのあいだ、あなたは自分の判断より、わたしの判断を信じることになるわ」


俺は口を開いた。その唇に、彼女が指を一本当てる。


「ええ、わかっているわ。悲劇ね」


笑みが深くなる。


「何が来るのか理解したら、その時は自分で決めなさい。それをどうするのかを」


彼女は身を引いた。


「それまでは、いい子にしていなさい。面倒に見合うだけのものは、わたしが保証してあげる」


ネフェレットは、干し草小屋でランタンを蹴り倒しておきながら、火が回るのを楽しみにしている甘やかされた子供みたいな顔で笑っていた。


当然、その瞬間を選んで、アリステルがようやく声を取り戻した。


「女神様」


慎重な声だった。


「私の家は、どうなるのでしょうか」


ネフェレットは彼女へ顔を向けた。


冷たくはない。

優しくもない。


片側にもう罅の入った壊れやすい家宝を眺めるような目だった。


「あなたの家は、きれいに跪いて幸運が膝の上に落ちてくるのを待つだけでは救われないわ。けれど、まだ滅びると決まったわけでもない」


アリステルが喉を鳴らした。


「前へ進みなさい。早く学びなさい。あなたの祖先より、ましな選択をしなさい」


少女はすぐに頭を下げた。


その答えは何ひとつ満たしていなかった。ただ、答えがあったと信じたい彼女の一部だけは、どうにか満たしたらしい。


俺はもう十分だった。身をかがめて外套を拾い、肩に羽織る。


この一日は、泥と死体と異端と神の横槍と、山歩き一回にしては多すぎる偶然の接触でできていた。


欲しいものは、風呂と酒と、予言をかき消せるくらい騒がしい街だった。


つまり当然、この日いちばん賢明な判断は、小さな女神が俺の人生をさらに改善する方法を見つける前に立ち去ることだった。


ネフェレットは、俺が外套を肩に落ち着けるのを眺めていた。


「もう行くの? 初めての口づけの後なのに? 男って本当に残酷ね」


「思い出を大事にしているんだ。できるだけ遠ざかることでな」


アリステルは、少し遅れて立ち上がった。視線はまずネフェレットへ。それから、俺がまだ面倒な態度を続けているか確かめるように、ほんの一瞬だけこちらへ向いた。


「女神様」


静かな声だった。


「私は、どうすればよろしいのでしょうか」


「君は」

俺は顎で彼女を示した。


「あの小さい厄介者と一緒に、自分の街へ帰れ」


それから親指で自分の胸を指す。


「俺は別の場所へ行く」


アリステルの耳がぴくりと動いた。だが、俺に向けてではなかった。彼女はネフェレットを見た。


「それは、許されることなのですか?」


「女神様に聞け。ただし、その返事を基準に俺の人生を組み立てるのはやめろ」


ネフェレットは芝居がかったため息をついた。


「出たわね。天啓を受け取った直後に、拗ねたラバみたいに振る舞う男の本能」


俺は無視して、神殿の扉へ歩き出した。


アリステルが一歩、俺を追う。


「ラフェル――」


「帰れ、姫さん」


俺は振り返らなかった。


それが間違いだった。


五歩ほど進んだところで、胸の中の何かが掴まれた。


痛みではない。

もっと悪い。

暴力的で、ねじ切られるような引力。


肋骨のあいだから拳が差し込まれ、まだ俺のものと呼べる何かを握り潰したみたいだった。


俺は大きくよろめき、片手を扉の枠に叩きつける。


背後で、アリステルが息を呑んだ。


振り返ると、彼女が腰から折れるように身をかがめていた。片手を床板につき、もう片方の手で胸元を強く押さえている。最悪な一秒のあいだ、俺たちはただ互いを見つめた。


それから、ネフェレットが笑った。


彼女の指先から、二本の細い光がこぼれる。一本は青白く、もう一本は淡い金色。


それらは生きた絹糸のように宙を這い、一本は俺の胸を、もう一本はアリステルの胸を貫いた。そして、俺たちのあいだで暁色の光を脈打たせながら結び合わさる。


糸は消えた。


感覚は、消えなかった。


俺はゆっくりと身体を起こした。片手はまだ肋骨の上に押し当てたままだ。


「今」


言葉を慎重に選ぶ。


「何をした」


ネフェレットは両手を背中で組み、かかとの上で一度だけ揺れた。


満足げすぎる顔だった。


「投資を守ったの」


アリステルが顔を上げた。


息が速い。


「め、女神様……」


ネフェレットは軽く手を振った。


「そんなに大げさにしなくていいわ、子猫。ただの生命連結よ」


ただの。


俺は彼女を見た。


「何だ、それは」


「一時的な繋ぎよ。あなたたち二人の生命力を分配したの。共有された不運、と考えなさい。片方が傷つけば、両方が代償を払う。片方が死ねば、もう片方もあまり楽しい経験はできないでしょうね」


アリステルの顔が、また青ざめていた。


怒りより冷たいものが、俺の背骨に沈んでいく。


「あんたは俺を、知り合って一日のネコジン貴族と繋いだのか」


「ええ。無駄にしないようにね」


アリステルが弾かれたように背筋を伸ばした。


「女神様……恐れながら、私は彼抜きでお仕えしたく存じます」


ネフェレットは、その言葉を無視した。


「あなたは弱すぎるのよ、ラフェル。封印が解けたばかりで、退くには頑固すぎて、動き始めたものから生き延びるには力が足りなさすぎる」


笑みが薄くなる。


「せっかく包みを開けたばかりの新しい玩具が、その日のうちに勝手に死ぬところなんて、見たくないもの」


「俺はあんたの玩具じゃない」


「いいえ。あなたは、わたしの問題よ」


俺は意地だけで、もう一歩扉へ向かって踏み出した。


今度は、引き戻される感覚がもっと速かった。


視界が揺れる。


背後でアリステルが鋭い声を漏らし、片手を壁に叩きつけるようにして身体を支えた。


ネフェレットは、馬鹿か子供を相手にする忍耐強い人間みたいにため息をついた。


「どうしてもと言うなら、二人そろって血を吐くまで何度でも距離を試してかまわないわ。それとも、今のところは一緒にいた方が健康的だと認めることね」


アリステルが唾を飲んだ。


「では……いつまで?」


ネフェレットの視線が彼女へ移る。


「必要なくなるまで」


その言葉で、俺たちは二人とも動きを止めた。


俺は目を細めた。


「どういう意味だ」


ネフェレットは、答えなど明白なのに俺たちが揃って期待外れだと言いたげに見比べた。


「これは添え木よ、ラフェル。粗雑なものだけれどね。繋ぎはあなたに力を与えない。あなたが、手間をかける価値のあるものになるまで生かしておくだけ」


それが妙に理屈として通っているのが、気に食わなかった。


「いつ必要なくなる」


ネフェレットの笑みが小さくなる。より意図的に。


「方法は二つ」


アリステルの耳が、本人の意思に反してぴくりと動いた。


「一つ目は時間。あなたが生き延び、強くなり、わたしが解いたものをこの小細工なしで抱えられるようになること。その時は、わたしが繋ぎをきれいに断ってあげてもいいわ」


俺は彼女を見据えた。


「二つ目は」


ネフェレットの目が、ほんの一瞬だけアリステルへ流れる。


「正しい方法よ」


それは、なぜかさらに悪く聞こえた。


先に声を出したのはアリステルだった。


必死に抑えているのに、声が細くなっている。


「女神様……」


ネフェレットの唇が弧を描いた。


「本当の絆ができれば、繋ぎは不要になる。その時は、何の問題もなく切れるわ。おそらく、勝手にほどけるでしょうけれど」


俺は彼女を見た。

それからアリステルを見た。

もう一度、ネフェレットを見た。


「絶対にない」


ネフェレットの顔がぱっと明るくなった。


「胸を打つ演説ね」


俺は腕を組んだ。


「切れ」


「嫌よ」


ネフェレットは、もうその話に飽きたとでも言うように俺から顔をそらし、代わりに動きを止めていたアリステルを見た。


「あなたたちは覚えていた。人間たちは忘れた。でも、ネコジンは他の者が神殿を壊した後も、祠を守った。教会が新しい嘘を教えた後も、祈りの中に古い名を残した。醜くならずに跪く方法を、まだ知っている」


アリステルの息が止まりかけた。


ネフェレットの笑みが、ほんの少しだけ柔らかくなる。


「それに、あなたは正しくわたしのもとへ来たわ、子猫。願い、待った」


アリステルはすぐに頭を下げた。脅された時よりも、その承認に揺さぶられているようだった。


「なら」


ネフェレットは軽く言った。


「わたしが訪ねないのは、礼を欠くでしょう?」


アリステルが顔を上げた。


「女神様……」


ネフェレットは首を傾げる。


「フリルグレイヴは、まだ残っているのでしょう?」


アリステルの目が大きく開いた。


「それは……故郷へ、ということですか」


「ええ。あなたの家がわたしに忠誠を捧げるというのなら、残っているものを見ておいてもいいでしょう」


そこで俺は、この会話を完全に楽しめなくなった。


「断る」


ネフェレットが俺を見る。


「短くて便利な言葉ね」


「ほかの神殿にでも取り憑け。俺は、あんたが良い子に褒美をやる気になったからって、ネコジンの街まで引きずられるつもりはない」


「褒美?」


ネフェレットが繰り返した。


「子供みたいなことを言わないで。わたしは礼を尽くしているの」


緋色の瞳が、愉快そうに細くなる。


「そして、実利的でもある」


その言葉は、即座に信用できなかった。


ネフェレットは両手を背中で組んだまま、すっと一歩近づいた。


「フリルグレイヴは、古い言葉がまだ重みを持つ数少ない場所の一つよ。誓い。守護。神との契約。繋ぎはどこにいても働くけれど、そういうものをただ苦しんで耐えるのではなく、理解できる場所がある」


アリステルの指が、身体の横できつく握られた。


「つまり、あちらなら、この繋ぎを管理できると」


静かな声だった。


「つまり、新しい青魔導士を馬鹿みたいに死なせないために。そして、あなたが彼にとって役に立つまま、繋ぎによって共有させられる一呼吸ごとに互いを恨まずに済むようにするために。あなたの街が、いちばん不便の少ない選択肢だということよ」


俺たちは二人とも黙った。主な理由は、彼女の言う「役に立つ」の響きが、どちらにとっても気に入らなかったからだ。


当然のように、ネフェレットは楽しそうだった。


俺は彼女を睨んだ。


「行かない」


彼女は首を傾げた。


「では、逆方向へ歩いてみなさい」


もう一度試してやる義理はなかった。

肋骨はすでに正式な苦情を出していた。


代わりに、俺は睨みつけた。彼女は腹立たしいほど満足げだった。


「素晴らしい」


ネフェレットは嬉しそうに手を打った。


「ああ、楽しくなりそうね」


楽しくはなかった。

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